マインドフルネスと呼吸についての考察
「朝のマインドフルネス」の会に参加するようになって、1年と数ヶ月になる。実を言うと、初めのころは、「腹式呼吸」ができなかった。胸郭の下のほうを動かすことを意識してみたり、腹筋の動きを意識してみたり、いろいろやっているうちに、次第に腹式呼吸ができるようになった。
「朝のマインドフルネス」で瞑想のリードをしてくれる荻野さんの声を聴く。その日によって、テーマが違う。ボディスキャンをする日や、意図について考える日、コンパッションの練習をする日。
ある朝、「あるがままの呼吸を意識してください」と言われた。呼吸は意識した瞬間に、自然な呼吸ではなくなってしまうものなのに。
気になって、呼吸に関するテキストを読み直してみた。
現時点の考え方として、呼吸運動の調節は、少し以前までは自律性調節と随意性調節の2系統のみが示されていたが、近年、以前の自律性調節は代謝性呼吸とよばれ、ここに新たに情動呼吸が加わった形となり、現在では随意性呼吸調節と併せて呼吸は3系統の多重調節を受けるとされる。(尾崎孝平編著「呼吸を診るためのテキスト 第5版」26p)
「深呼吸をしよう」と意識して行うのは「随意性呼吸」と呼ばれるもの。一方、「自然な呼吸」すなわち意識をしていない時の呼吸(以前の「自律性呼吸調節」)には2通りあり、「代謝性呼吸」と「情動呼吸」があるということだ。情動呼吸は、不安や恐怖、大きなストレスといった情動変化によって変化する呼吸。代謝性呼吸は、眠っている間も止まらない、からだの恒常性を維持するために血液の状態に応じて変化する呼吸である。
上記テキストによると、安静自発呼吸は「自発呼吸を意識せず、問題のない状態での呼吸」とされている。意識した瞬間にその呼吸は「意図的な呼吸」になってしまう、ということだ。
マインドフルネスの会は、まず深呼吸から始まる。数回の深呼吸で、意識は自分の内側に向かっていく。深呼吸のあとに、今度は「無意識の呼吸を意識する」という矛盾するようなことをしていく。これはある種のトレーニングのなのかもしれない。そういえば、マインドフルネスは「心の筋トレ」とよばれることもある。呼吸を整えることによって、「情動」が整えられていく、あるいは安定した状態にいつでも戻れるように鍛えられている、ということなのだろうか。