音初心者の音初心者による音初心者のための編集後記 - 最終回
こんにちは、laと申します。
今回は主に
「前回と変えてみたところ」
「グッバイ宣言リスペクトのコツ」
「こだわったポイント解説」
の3つに分けて、音MADを作っていない人にも分かりやすく解説していきます。
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変えてみたところ#1 構想
制作を始めたのは8月中旬ごろ。ここすき合作の単品を作り終わり、一息ついた時期です。
次の音MADのテーマを決める際、普段私は「日常生活中にふと思いついた音MADのアイデアをデスクトップのフォルダとして保存し、それを眺めながら次の構成を考えていく」という方法を取っています。
しかし今回思いついたテーマは前々から温めていたそれではなく、草箱さんのnoteを見たのがきっかけでした。
温めていたテーマを一つずつ実現していくのも大事ですが、こと個人作に関しては「パッション」も大事です。個人作は(当たり前だが)合作と違い提出期限がないので、アイデアが思いついた瞬間に何かしら形に残すことが大切です。
変えてみたところ#2 手描き依頼
作業を進める中でまず躓いたのが「手描き」問題です。
グッバイ宣言にはサビのイラストが不可欠。しかし私は前回の個人作で手書きに数十時間を費やし心が折れているので、自分で描くのは難しい。
そうなると絵を依頼するしかありません。
・約一か月半の納期で描き上げられて、
・音MADに造詣がありつつ、
・なおかつ頼れる人物…
そんな人いるわけ…
いた。
改めて、イラストはチョコ味バームクーヘンさんに依頼させていただきました。お忙しい中ありがとうございます
絵の依頼をするときのコツですが、先ずDMを始めるときには
などを軽く説明してから、「ご検討お願いします」で締めるとよいでしょう。
もし描いてくださることになったら、送るべきは以下の内容です。
特に重要なのは「④自分で描いた下描き」だと思います。棒人間を描くだけでもポーズの指定に役立つし、MMDモデルがあれば参考資料にもなります。
もしMMDや下描きが準備できなかったら、描いてもらうキャラの作画資料を集めて送りつけましょう。
絵を描いてもらったらそれで終わり、という訳ではありません。
送られてきた絵の進捗へのレスポンスはもちろん、自分の動画がどれくらい進んでいるか伝えることも、共同作業の一環として重要です。
動画投稿後、依頼について言及してくださったのは非常に嬉しかったです。その昔、チョコバさんの自発フォローをブロ解してしまうという最悪の邂逅を果たしたにも関わらず…
依頼文を書くときは、ョムヘンさんのnoteも参考にしてみて下さい。
変えてみたところ#3 ドラム作り
音声のうち最初に取り掛かったのがドラム作りです。
今までサンプルを使ったりして真面目に取り組んだことがなかったので、今回は真摯に向き合ってみました。
向き合った結果分かったのが、「ドラムは音選びが9割」ということです。Mixは二の次で、VSTより音選びにこだわるのが大前提です。
Kick
①任意の音をサンプリング(今回落下攻撃)
②ピッチ操作モード「élastique 3.3.3 Pro」にしてピッチを下げる(今回-11)
③音量を極端にフェードアウト
これで基本の音は出来るので、EQとコンプレッサーで調節します。
EQは「決まった高さにアンカーを打ち、上下させて調整する」と狙った音を作りやすいです。偉そうに語ったものの、「決まった高さ」なんて分かるわけがないのでYouTubeの動画をパクって使っています。
EQはReaEQ、コンプはOTTで何ら問題ないですが、EQに関しては決まったHzの音だけ聞けるソロモードのあるVSTが作業しやすいと思います(Ozone 11 Equalizerなど)。
ちなみにこのバスドラム風Kickだけではなく、フリーナPV中のEDMっぽいKickもサンプリングして裏に忍ばせています。これに関しては打撃音などから錬成できるものではなく、Vitalなどで作るのがよいかと思います。
Snare
Snareの音作りもKickと根幹は変わりません。なぜなら本動画のKickとSnareの原音は同じだからです。
変えるのはピッチ操作モードを「Sound Touch」にすることと(今回+2)、「EQのアンカー位置を変えること」くらい。
アンカー位置はまたまた動画を参照。
VST構成は若干変えて、PHA-979でほんの少しSideに寄せました。
Cymbal
Cymbalは「フリーナの重撃音」、「ツの子音を伸ばしたもの」の二音を使っています。
歯擦音をシンバルにするとき、そのまま引き伸ばすとシャーンとした音から離れてしまいますが、ピッチ操作モードをRubber band Libraryにすると解決します(twitterで教えてくれた方、ありがとうございます)。
あとはDelayやReverb、Imagerで誤魔化せ馴染ませればOK。
出来上がったドラムがこちらです。サビの盛り上げが足りなかったこと以外は、かなり満足しています。
変えてみたところ#4 セリフ合わせ
セリフ合わせオタクとして、リズム感もイチから見直しました。
たとえば、サビ前のセリフ合わせ
について。
このセリフ合わせの核、すなわち"キメ"は「うったえ」「ぼっくの」という詰まるリズムに他なりません。そのため、前の部分でこのリズムを使いすぎないように調整します。
詰まるリズム(=波線部)がくどくなってしまうので、「ものがたりわ」の部分(=二重傍線部)に三連符を適用しています。
変えてみたところ#5 kerovee人力
今まで音合わせからVocalShifterでやっていた人力を、全てkeroveeでやってみました。やり方はこちらを参照。
調声でボカシフを通してもよかったんですが、音圧が減ってしまったのでベタ打ちのまま使っています。
人力はまだまだ伸びしろがあるかなという印象です。
Mixは
・センドトラックと分けてVSTを掛けたこと
・Notch(切り目)型のEQで耳に痛い部分を削ること を意識しました。
EQのソロモードで、キーンとする音域を探してみましょう。
変えてみたところ#6 イージング
主に拡大・移動におけるイージングを見直しました。
例えば、このシーンにおいて。
「神の」は、
の2つの拡大率変化を同時に掛けて動いています。
この動きがもし
こんな感じの拡大率変化で構成されたら、
こんな感じで動きが止まる場所が出来てしまうのが分かりますか?
最初から最後までフィルタ効果で覆ってやることで、
速度が止まらない (f'(x)=0となる実数xが存在しない)、滑らかな動きになります。今までは極端なベジェで誤魔化していることがあったので、今回は特に注意を払いました。
↑わかりやすい例
グッバイ宣言リスペクトのコツ
グッバイ宣言において最大の見せ場は、やはりサビの映像でしょう。
テキストのフォントは主に源ノ明朝heavy。グレーの色味は#424242と覚えておくと作業しやすいです。ひらがなは制御文字で小さくしましょう。
テキスト(に限らずほぼ全てのオブジェクト)にX4,Y4くらいのシャドーを入れると、質感が出ておすすめです。
波はラスターで一段一段作り、mp4で途中出力しておきます。
サビ8小節目。
斜めクリッピング(中心X移動)で文字をタイミングよく表示させたら、波の映像に上からクリッピングをかけて追従させ、最後に上から合成量-100の縁取りTを掛けたら完成。
作ったSceneはアルファチャンネルで読み込んで、OpticsCompensation_sで歪ませました。ディスプレイスメントマップでもいいかも。
塗潰しで透過スクリプトをフレームバッファにかけて、アンカー①の色を透過にチェック。RGB許容は全て255だと全範囲透過されてしまうので、どこかは254にしておく必要があります。
また、楕円形は単純図形σが使いやすかったです。
あとはデラゴシックをドデかく使うこと、シーンチェンジのライトリーク、イージングの覆いかぶせ(前述)を意識して進めていきましょう。
単色背景で情報量が少ないので、テクスチャ合成素材で情報量を増やすのがおすすめです。
こだわったポイント解説
ふんだんに盛り込んだリスペクト・小ネタを一つずつ解説します。
①ここの立ち絵
探すのに丸一日かかりました。webイベントのイラストを自分で切り抜くとどうしてもジャギーが生まれたので、海外の切り抜き師の投稿を使わせていただきました。
②Aメロ
ヒーロー宣言のぷにぷに感を意識。
フリーナの動きは弾むで作って、AutoBlur_Kを掛けています。
③サビ歌詞
「諭示裁定絶対ジャスティス」
諭示機の判決が絶対であるフォンテーヌの規律を表現。
実は「諭示裁定カーディナル」の「示」の字を間違えています。
「僕の私だけの正義の国で」
フォンテーヌの二つ名は「正義の国」。
一人称が「僕」「私」の二通りなのも、フリーナの二面性を表現できた気がします。
また、「正義の〇〇で」はヒーロー宣言リスペクト。
「轢き殺して・刺し殺してヌヴィレット」
「ヌヴィレットよ、僕を轢き殺しておくれ」というニュアンスです。
ヌを轢き殺すというニュアンスが生まれていたのですが、これ以外の歌詞が思いつかなかったので…
「神の天理の目をキミが欺くまで」
「神の天理の座にキミが座るだけ」
「天理の目を欺く」のは水神フォカロルスの責務であり、「神の座に座る」のはヌヴィレットに課せられた役目です。「キミ」が指す対象が変化しているのがポイント。
「フィルムは絶対サスペンス」
フリーナが「二銃士」というサスペンス映画が好きであることから。
4.3イベント「薔薇と銃士」で明かされました。
④サビ全体
画面縁のモヤと泡はフリーナ爆発エフェクトの再現です。
⑤アウトロ
命ノ星座(凸)名を引用。
ちなみに、フリーナの凸名はオペラから引用されているという小ネタがあります。
いかがでしたか?
ちょっと語ります
最近常に考えているのが、無数の創作方法が溢れている昨今において「あえて音MADをやる意義」です。
音MADを長く続けている人に限って、「音MADを作るのはやめたほうがいい」と言います。ただ承認欲求を満たしたいのであれば、音MADとかいう苦行より絵や小説なんかに取り組む方がコスパがいいのは当然だと思います。
「なぜ自分が音MADに取り組んでいるか」を忘れると、「ここの映像はこれくらいでいいか」という妥協が発生して、とても危険です。常に音MADを始めた時のマインドを忘れないように、メモしておくとよいと思います。
私なりの解釈ですが、創作において音MADしか持ち得ない利点は
技術的には「セリフ合わせ」
取り組み方としては「無課金でできること」ではないかと思います。
自分の好きなものを知ってもらいたいなら絵を描けばいいし、
映像を作りたいなら文字PVでもやればいいし、
キャラクターに歌わせたいならAIでいい。
セリフを「刻む」行為は音MADの原初であり、必要不可欠な要素ではないでしょうか。セリフ合わせがないバカタレ動画も、あえてセリフ合わせという常識を「破壊」することで成り立っている…
さらに、「あえて"自分が"」音MADをやる理由も定義したいです。
これは上を見すぎて絶望するのを防ぐためです。世の中にはGOD合作が溢れているので、クオリティーの向上だけを目標に掲げると「もう自分は限界だな」と思う瞬間が必ずやってきます。(私は原神をメインに投稿していたので、Hoyocreaterという絶対に勝てない存在がいるのが非常に辛かった)
そのため、自分の音MAD作者としてのアイデンティティを自覚するとよいです。
・合作を主催しまくる
・大規模鯖主になる
・誰も使わないような曲を使う
・毎日投稿する
・最強のスマホ勢になる
・リスペクトに特化して作る
・とんでもないバカタレになる
・身内ネタを擦りに擦る
なんでもいいです。一つあると非常に心強いです。私の場合は、「初心者が音MADを始めるきっかけとなる」ために情報発信や質問返答に力を入れています。
難しく書きすぎましたが、要は
・創作においての音MADの優位性
・音MAD界隈においての自分の優位性
を自分なりに解釈すると楽、ということです。
私はこれから再来年の三月くらいまで受験期に突入するので、このシリーズは一旦区切りになると思います。
合格して帰ってきた暁にはまた動画を見てくれると嬉しいです!
それでは、ここまで読んでくださりありがとうございました!