蔵元さん訪問【京都府伏見区:月の桂】
京都随一の歴史を持つ増田徳兵衛商店さん(『月の桂』醸造元)をご訪問
自身京都の文化圏で育ち、また毎週通っているほどの京都好きではありますが、、、
前職ならびに現職でも月の桂さんを含め、他の京都の蔵元さんをしっかり取り扱えていないことを反省しており
「京都酒」を教えていただきたく蔵元さんにはお時間を作ってもらいました
日本酒の名醸地「兵庫・灘(なだ)」と双璧をなすのがここ「京都・伏見(ふしみ)」
JR京都駅から南に5kmほどの地が伏見区
その伏見でも最も古い蔵元さんのひとつである月の桂さん(1675年創業)
他の多くの蔵元さんが別の地で酒造りを行った後、伏見に移ってきたのと違い、月の桂さんは今も昔も同じ場所で酒造り
酒造りの他に米屋「米屋弥平衛」、さらには京都から淀、大坂を経由して西国に向かう公家の中宿としての役割も果たしてきた蔵元さん
とにかく「ダンディー」という言葉が似合う14代目増田徳兵衛社長
社長自らも酒造りに参加しているのが驚き(蒸し上がったばかりのお米を移動させる増田社長)
イベント時の「蝶ネクタイ」が何よりも印象的、豪快な笑いとユーモアでお会いするたび「カッコいい大人だな〜」と感じていた生粋の京都人
月の桂さんをもってして外せない日本酒が【にごり酒】と【古酒】
現在多くの蔵元さんが販売しているが、共にこの月の桂さんが発祥蔵
【にごり酒】
お米を発酵させた「醪(もろみ)」を搾ると普段目にする口にする透明なお酒(搾った後の固形物が「酒粕」)
その工程でしっかり搾るのではなく、粗い搾りにとどめて、液体に澱(おり)を残したものが「にごり酒」
ちなみに全く搾っていないものは「どぶろく(漢字では「濁酒」と書くので要注意)」
発酵学の世界的権威・坂口謹一郎博士から「月の桂さんでにごり酒を造ってみてはどうか」と提案され、先代の13代目が着手
前回の東京オリンピックの1964年に日本ではじめて商品化したのが「月の桂 大極上中汲み にごり酒」
まさににごり酒・スパークリング酒の『元祖』蔵元
【古酒】
ワインに比べて「熟成させる」という概念が少ない日本酒
爽やかでキレイな飲み口こそが『日本酒』というイメージの一方、「これが米からできているの?」と思わせる複雑さが古酒の魅力
にごり酒販売の翌年、1965年から古酒製造に着手
常時販売しているものは『月の桂 純米大吟醸古酒 琥珀光 10年貯蔵』
10年でも十分すごいが最長で55年寝かしているお酒も
他の蔵元さんでは聞いたことがない、特別発注の「磁器の甕」で熟成中のお酒、その数1,000本以上
月の桂さんには世界中からワインやシェリー、ラムの製造者が見学に(一般の方の造りの見学は不可)
増田社長は古酒の普及に力を入れる「刻(とき)SAKE協会」の代表理事
「刻SAKE協会」加盟の蔵元さんとのセット商品はなんと202万円、古酒の魅力を発信されている
テイスティングルーム
現在の建物は鳥羽伏見の戦い(1868年)で罹災した後に再興
月の桂さんの商品は古都・京都に相応しい上品で調和が取れ、口当たり優しい味わい
透明感があって、あくまでも料理を第一に考えた食中酒
『月の桂 純米にごり』
甘くて濃厚なにごり酒が多い中、月の桂さんの商品は対極の辛口&炭酸ガスも強く、後口も清々しい
『月の桂 純米吟醸 柳』
台湾でも取り扱いさせていただいている純米吟醸
『月の桂 抱腹絶倒』
度数8%の低アルコール商品、乾杯酒やアペリティフとして
白ワインのような爽やかさ、ジューシーな果実味溢れる味わい
日本酒というのはついつい「商品そのもの」をお伝えすることに終始してしまう(それで十分なのかもしれないが、、、)
しかし、「蔵元さんのストーリー」もその商品情報に追加しないといけない
さらにはそこで留まるのではなく、その蔵元さんの「土地」の体現も目指さないといけないと感じたご訪問だった
京都は勉強すればするほど味わい深さを知ることができる稀有な土地
京都の「奥深さ」も付加して、月の桂さんの商品を自分なりに伝えていくことができれば
そして増田社長のダンディーさを100分の1でも身につけたい、、、、