理系大学院生の就職活動
こんにちは。
アラサー大学職員のL_NeRです。
今回は理系大学院生の就職活動がどのような形かお話したいと思います。
現在大学職員をしていますが、残念なことに勤務先の学生の就職の実態はよく知りませんし、近年の状況にも明るいわけではありません。
少し前の時代の実体験に基づくお話です。
以下の前提のもとご覧ください。
・2010年代中頃の時代
・某国公立大出身
・工学系(機械、電気、情報のどれか)の修士
・メーカー志望
・特別優れた実績や能力があるわけではない平凡
当時の世間の状況
リーマンショックや東日本大震災があり、2010年前後ってとても暗い時代でした。経済のことはよくわかりませんが、景気も良くなかったと思います。
ただ、幸いなことに私が就職活動をしたのはその後のアベノミクス真っ只中の景気が上向きつつある状況下でした。政治のことも詳しくないものの、安倍政権は賛否両論あったかと思います。政治に関してあれこれ言うつもりはありませんが、少なくとも大企業を志す就活生にとっては状況は悪くない、むしろ売り手市場かなとすら思う時代です。
当時の就活の制度
経団連により、面接開始及び内々定解禁が4月1日以降と定められていました。お固めの大企業はきちんと守っていて、オフィシャルな面接や内々定は4月からと言う形です。中には有名どころの会社でも12月くらいから面談と称した面接が始まっていました。守っているかどうかは企業によります。
老舗の大企業にこだわった理由
一般的にみて大企業にこだわる理由ってどのようにうつるでしょうか。例えば以下のような理由が想像しやすいですかね。
・安定しているから
・高給だから
・有名企業でかっこいいから
全てに関して真っ向から否定することはできないですし、そのような気持ちは少なからず私にもありました。でも、そのどれもが実は中途半端なのです。
希望退職とか大量リストラもめずらしくない、給料も商社とか金融の方が高い、かっこよさも外資系やGAFAあたりの方が断然上です。(個人的に)
では、なぜそんな中途半端な老舗大企業にこだわるのか。それは新卒という人生に一度しかないカードを切る上で1番利益のある選択だと思ったからです。
日本の社会って大企業に対して一定の評価というか幻想に近いキラキラ感をもつ部分があるのかなと。一度人生につまづくと立て直しが難しいですしね。ニートから立派な会社に入ることがとても難しいことに象徴されるように、日本ってレールから外れてしまうことに対して極端に厳しい国だと思います。逆に言うと、順調にレールに沿って進んだ結果の代表とも言える老舗大企業こそ、この社会の多くの人が価値を感じるステータスなのかな、と当時考えていました。職業選択に関して本質的ではなく浅い価値観に基づくことは重々承知していますが、大多数の見方がそうなのであればそれが正義なのが世の中です。
新卒って社会人としての経験やスキルも何もない大学生が、人柄や将来性だけを評価されてどんな会社にでも就職できるチャンスなのです。
将来やりたいことができたり、職を変えたくなったときに、履歴書に大企業の名前を書けるのってかなり有利な予感がしていました。自分がそんなに大したことない奴でも、その経歴だけで転職の際にジャケ買いしてもらえるかなという感覚。要は会社の名前を借りて箔をつけるというのが1番の目的です。
働いたこともない20代のときの会社選択で完璧に上手くいくなんてなかなか難しいと思います。会社なんて無数にあるんだから、その1社が自分に合ってるなんてとても幸運なことです。失敗したときにも役に立つように、新卒カードは老舗の大企業に使おう、というのが自分のスタンスでした。
理系の就活について
多くの会社で応募の形態は自由応募と学校推薦の2種類にわかれます。
自由応募
スタンダードな応募で一般的な就職活動の形態。エントリー→テスト→面接数回と重ねていくものです。
学校推薦
大学の学科・専攻で作ってもらった推薦状を添えて応募する形態です。当然辞退はできませんし推薦は同時に1人1社しか持てません。これが理系特有なのか工学系特有なのかはわかりませんが、推薦をうまく使うのが肝心でした。
学校推薦の実態
推薦枠の奪い合い 〜院生VS学部生〜
各大学の学科や大学院の専攻に対して、◯名推薦で応募して良いですよと各企業から通知が来ます。その枠を院生、学部生で取り合うわけです。
私の出身校では、1巡目の推薦の振り分けのみルールがありました。公式にはみなさんで相談して決めてというのが就職担当の先生の指示ですが、昔から喧嘩をしないよう学生の間で伝統的にルールが定められていました。
具体的には、先に院生が学部時代の成績順に推薦枠をとっていき、その後学部生が成績順に推薦枠を選ぶというものでした。中には留年生もいるので学年の順位ではなく、学年を跨いで比較できるGPAで順位を設定します。学校推薦を取得する上での強さは、院生成績1位>院生成績最下位>学部生成績1位>学部生成績最下位の順でした。
このような理由で大学受験が終わっても単位が取れれば良い、ではなく、GPAを高めるために試験は全力です。高ければ高いほど意味があります。
余談ですが院生時代の成績を使わないのは、平気でどの科目もSばかりで差が出ないためです。
学部生は残り物かよ、と思うかもしれませんが実はそうでもなかったり。さすがに1枠しかないような会社だと院生に取られてしまうかもしれませんが、当時を思いだすと、日立○作所、トヨ○自動車などのレベルでも1巡目では枠が余るような量の求人が来ていました。そのため学部生も選択肢はたくさんあったと思います。
学校推薦の効力
推薦の効力は企業によってまるで異なります。面接はするけど実質的に100%内定するような企業もあれば、いきなり最終面接に行ける企業、応募するためのチケット代わりの企業と様々です。残念ですが会社によるとしか言えませんのでそこは先輩に聞いてください。
パターンとしてはいきなり最終面接のケースが多いのかもしれません。トータルで見ると推薦を使えば7割くらい決まるみたいなイメージですかね。落ちるとは言えども大抵受かる感覚があります。
あくまで個人的な感想ですが、推薦枠無制限だったり、他に比べてやたら枠が多い企業があります。そういったところは信頼度低めに見えてしまいます。採用予定人数は決まっているのに推薦枠をばら撒いているわけですから。自分の学科・専攻からその企業への例年の就職人数と推薦枠を突合していくとなんとなく信頼度が見えてくるかと思います。
学校推薦の選考に落ちてしまったら
学校推薦の選考に落ちた瞬間から次の推薦枠を選べました。2回目以後は早いもの勝ちでした。
いかんせん2巡目以降はルールがないのでさっさと推薦1社目を使うってのがポイントです。後ほど記載しますがさっさと使う理由は他にもあります。
学校推薦の難しいところ
学校推薦を使ったら辞退できません。学校推薦でエントリーした瞬間から辞退は禁忌です。厳密に言えば辞退できるのかもしれませんが、大学と企業との信頼関係ありきで運用されている制度ですので、辞退はおすすめできません。
先生にも怒られるし、企業の人事担当も大学までクレームに来ます。
私の大学でも先輩が推薦応募していた企業の選考を受ける前に別の会社の内々定を承諾した例がありました。就職担当の先生も人事の方も激昂していたそうですし、翌年その企業からの推薦枠は来ませんでした。下手すると後輩から一生恨まれますのでやめましょう。
自由応募の罠
前述のとおり推薦応募は有利に働く反面、選択を狭められます。それなら自由応募で自分は頑張る、と言う方もいるでしょう。ただし、自由応募にも罠がある場合がありますので注意してください。
後付け推薦
選考を受けてる途中では縛られないのですが、内々定が出た途端に例えば1週間以内に推薦状を出せ、と言われるケースがあります。後で本命を推薦で受ける人からしたらたまったもんじゃないですね。いわゆる後付け推薦ってやつです。
第1志望で学校推薦で受けた企業の保険のために自由応募をしていても、本命の推薦の結果が出る前に推薦状を求められたら滑り止めの意味がありませんよね。企業も人員獲得のために必死なのです。
学校推薦での再チャレンジは不可
自由応募で受けたものの落ちてしまったら、もう1度推薦でチャレンジすることはできない企業が多いです。自由応募の方が採用基準が厳しいはずなので、学校推薦で受けていれば…なんてことにならないように。学校推薦を使用するつもりであれば志望度の高い企業に自由応募するのは得策ではないかもしれません。
自由応募⇨学校推薦 の切り替えができない場合がある
自由応募でエントリーしたものの後から学校推薦に切り替えることができる企業があります。この場合は全然問題ないのですが、学校推薦に切り替えられない企業もあるわけです。前述したとおり、自由応募の方が採用されにくいと思いますので、志望度が高いならよく検討すべきです。
私の就職活動
印象的な会社が3社出てきます。
a社:X業界トップグループの一角。1番行きたい。
b社:Y業界トップ。夏のインターン参加。
c社:Y業界2番手グループ。冬のインターン参加。
1月:推薦枠の選択
学部時代の成績は100人中5位くらいだったので院生の中でもかなり序盤に順番が回ってくる立場でした。どこも売り切れておらず選び放題で迷ってしまいます笑。
なお、学部2年生の前期くらいまではギリギリ単位をとる生活で順位も半分より下でした。途中からテスト勉強だけは本気で取り組むようにしてSランクを量産し巻き返しました。努力は報われる…
1番行きたいa社はあったわけですが私はその会社をあえて選びませんでした。理由は人気すぎていろんな奴から一生ものの恨みを買いそうだったため。
っていうのは半分冗談で、配属先への心配があったためです。新卒の配属ってジョブマッチングのない企業だと運要素強めです。研究開発に行けるかもしれないし、間接的な技術部門かもしれないし、工場で生産管理かもしれないんです。私が行きたかったのはa社の研究開発でしたので、仮に受かったとしても配属の運ゲーが気になっていたんですよね。
でも、転職ってとある業務ピンポイントで応募するわけだから、配属先も選んで面接を受けることができます。であれば、確実に研究開発ルートに乗ってから将来的にa社を狙い撃ちしたいな、と思ったわけですね。また、他の会社を一旦見たいなーって思いもあって、新卒ではa社の推薦を選びませんでした。後日談ですが、転職してa社に入る野望は数年後に叶うことになるんですよね。ただ、最終的に辞めて現在大学職員してるわけだから人生って難しい笑。
結局のところ、推薦の1順目では、M1の夏にインターンシップに行ったb社の推薦を取ることに決めました。製品力・業績とも業界不動のNo.1だし、学生で勉強してきた分野も少しは役に立つし。a社とは異業種ですが将来の転職にも関連する業務をできそうなことがインターンでわかっていました。たびたびb社の人事担当から囲い込みのメールや電話が来ていて、そんなに来て欲しいなら光栄です、喜んで選びますみたいな状況でした。いずれにしても、当時考えていたキャリアプランは満たせそうなルートだったのでベストかなと思い、b社の推薦を選択しました。これが1月頃のお話。
2月:運命の出会い
b社の推薦枠を獲得したところでまだ1月。結局本命は4月以降なのであまり気分は乗らず。面接練習くらいの気持ちで選考を受けたり、説明会参加必須の企業へ赴くくらいの生活でした。経団連を無視している企業の自由応募をしまくって内々定を早くもらっても本番4月までキープできないかもしれないし、無理せずやってました。
そんななかc社の冬インターンシップを見つけました。なんと推薦を取ろうと思っていたb社のライバル企業。せっかくだから行くしかねえと応募して面接したら見事合格しました。周りが全力で就活してるなか、呑気に2週間ほどc社の研究所でインターンシップに参加しました。
行ってみたらとんでもなく良い会社だったんですよね、c社。仕事もめっちゃ楽しかったし人柄も良い人が多くすごくよかった。お世話になった先輩からは「うちに受かったらこの部署確定だよ」と密告されて心が動き始めます。
推薦で受けようと思っていたb社よりも会社規模は少し下回るものの、仕事も人も立地も給与も待遇も全部上回っている。キャリアプランも十分遂行できる、そんな会社でした。
1番のネックは、このc社は自分の大学に推薦の募集をかけていないこと。c社に行きたかったらまず間違いなく受かるであろうb社の推薦を捨てて応募しないといけない、と言う葛藤を抱えて迎えたインターンシップ最終日。振り返り発表会を終えて解散した直後にc社の人事の方を捕まえて、以下をありのまま伝えました。
・夏にインターンに行ったb社に推薦を使うつもりだったこと
・b社の人事の方から頻繁に連絡をもらっていること
・今はc社に行きたい気持ちが遥かに強いこと
・b社の推薦を捨てた上で、自由応募でc社を受ける勇気がないこと
・b社の推薦応募やめるからc社に推薦応募させてほしいこと笑
なんてめちゃくちゃなお願いなんだと感じますが本当に行きたくて真剣にお願いしました。その結果、人事担当の方が「b社蹴ってくれるの?マジ?いいよ!推薦あげるから先生の連絡先教えて。」とあっさりOK。
こんなことがあり、1月に決めた推薦枠を撤回してc社の自分専用推薦枠に持ち替えた形です。b社の推薦権は持っていたのですが、エントリーはしてなかったのでギリセーフです。
3月:エントリー開始
4月の解禁に向けて、c社のほか4月解禁の5社弱くらいエントリーシートを出しました。少ないですよね笑。推薦ありきで就活しようとするとこんなもんです。
本気で行きたいところにはあえてこの時点ではエントリーしませんでした。理由はc社の推薦に落ちたら次の推薦で応募したかったためです。推薦枠がある企業への自由応募での無駄打ちは控えました。そんな理由で内々定可能性が非常に高いb社もこの時点ではエントリーせず。c社がダメなら当初の予定通りb社に2巡目の推薦を出す計画です。
ちなみに、1番行きたいa社には後々転職面接を受けるための話題作りのために自由応募しています笑。
そのほか、経団連の日程を無視しているフライングスタート企業のうち興味のある1社に2月からエントリーして選考を進めています。本来であれば3月頭には結果が出ている会社なのですが、後付け推薦だとわかっていたので、最終面接まではスイスイ1番早い日程で選考を進めていざ最終面接。1回目に提示された最終面接日はインフルエンザになってしまったと嘘をつき日程を延長します。2回目に提示された日程ではまじで学会と被って延期してもらいます。結果として3回目に提示された3月最終週に最終面接をして3/31に内々定。これだけ引き延ばしたのに内定くれるなんて優しいです。しかし、前評判通りの後付け推薦を10日以内に要求されました。2つ返事でわかりましたと言うものの腹の底では計画通りです笑。多くの企業が解禁する4月1週目に内定キープできるのが安心でした。
4月:解禁
当時のスケジュールがスマホに残っていたので以下書きます。
4/1:
・AMはa社の1次面接(トップバッターがこの会社なのおもしろい笑)
・PMはまた別のd社の1次面接
4/2:
・AMはまた別のe社の1次面接
・PMは大学で修士論文の中間発表
こんな時期に中間発表するな、とみんなブチギレでした。とはいえ出ないと卒業できないので渋々参加。先生方に質疑応答でフルボッコにされます。でも気にしない。
・夕方に前日受けたa社、d社、さらに当日受けたe社から1次通過の連絡がくる。
4/3:
・AMは本命推薦のc社。いきなり最終面接
・PMはまた別のf社、g社の1次面接
4/4:
・AMはa社の最終面接
・昼に本命c社から内々定連絡⇨承諾して就活終了
・PMはd社の最終面接も控えていたのですが、移動途中の電車を下車して速攻で辞退しました。
・夕方に前日受けたf社、g社から1次通過の連絡が来るもお断りしました。
4月の解禁後、4日目のお昼で就活終了しました。あっけなく終了。周りの友達もそんなもんです。
内々定をキープしていた企業にもお断りの連絡を入れて辞退の連絡も完了です。最終面接を受けていたa社からは2週間ほど返事がなく、忘れた頃に落ちたと連絡が来ました。ゆくゆくは転職するつもりの企業でしたから、自分から断りたくはなかったのでネタ作りもできて理想的な形でした。
1番心苦しかったのは夏のインターンからお世話をしてくれていたb社に一向に私がエントリーしなかったので、人事の方から「まだエントリーしてないみたいだけど、どうしたの?」って連絡が来たこと。何百人単位で新卒を採用するので何万人も応募者いるだろうに、こんな1人のためにそこまでするなんて、と心苦しい感じもありつつも、丁重にお断りしました。真摯に聞いてくださってたくさん説得もされましたが、最終的には応援してくれました。
先方から見れば格上の自社を断ってライバル企業に黙って行かれてしまうわけですからね。絶対に面白い状況ではないはずです。なのに常に1人をきちっと見ていてここも良い会社だなあとしみじみ思いました。高いので気軽には手が出ませんが、いつかb社の製品も買おうと思っています。
おわりに
一瞬で本番の就活を終えましたが、理系の就活ってこんな感じだと思います。そのくらい需要があって就活は学生側が有利に立てるのだと思います。それでもとても大事なのは以下の3点。
・学校推薦をうまく使う
企業側も大量の人数をとるので学校推薦で早めに数を埋めたいはずです。だからこそ行きたい会社の推薦があるなら解禁後に速攻で推薦応募するのが大事。後半になると数も揃ってきて選別がキツくなりますので、高学歴の猛者たちと比較されながらの戦いになるかと思います。
・インターンシップに参加する
私は業務体験型の2週間くらいのインターンに2社参加しました。参加者も10〜20人くらいですがかなり見られています。1dayみたいなインターンの効力はわかりませんが、長期で特定の部署に潜り込むインターンはうまくいけば有利です。ちなみに入社したc社も何百人と同期がいましたが、インターンに参加した十数名は内定式で全員と再開しました。それくらい採用に直結してるわけですね。
・面接では研究の専門的な話をし過ぎない
研究の話、たくさん聞かれます。理系の院生ですからね。でも内容について語って欲しいわけではないはずです。面接官も研究開発者ですが、お前の研究なんか畑違いでわからねえよ、が本心でしょう。詳しかったとしたら相手の方が格上ですから甘いこと言えませんしね。
内容はわかりやすく噛み砕きつつ、研究を遂行する上で苦労したこと頑張ったことへ徐々に論点をすり替えていきましょう。研究の話をしているようで中身はわかりやすい根性論とか努力の話をしているだけですので。テーマが簡単になるほどガンガン食らいついてきます。堅苦しい面接より、会話にもっていけると雰囲気良く見てもらえます。
まとまらず長くなりましたがこんなところで終わります。将来活躍する若者のために、少しでもお役に立てれば幸いです。
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