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初盆

最近涙腺が弱くなってきたように思う

大人になると年々鈍くなると聞いたのに
簡単に泣いてしまうから、音楽や本に向き合うのに勢いが必要になった
こんなに緩くなってしまうととても生きていけないと思う



初盆、2024年の夏。

生前、刺繍や着物が好きだった祖母は
私に何着かの着物を残してくれた

特に大島紬の着物は、美しく
そのままタンスの肥やしにするのはもったいないと思った。
長襦袢からはじまる基礎練に億劫さを覚えつつ、正月に着れるようにちょっとだけ頑張っている。

まだ顔も声も覚えていて、祖父も寂しそう。
小さな頃にもらった手紙やSMSを時々見返してしまう
先にいく人たちは、何かを残そうとしてくれてあっさり置いていくからちょっと嫌だ



認知症が進行してきたおじいは、ゆったりした時間の記憶をあたまに残さなくなった
都合の悪いことは全部忘れて、好きなことだけ覚えている
その鈍さを少しだけ羨ましく思う  



今年か来年に退職予定の元気なじいちゃんにも、健康状態に影ができ始める。
伝えたいことが溢れすぎて喧嘩をする。
やってられない
もっと時間があれが良かったのに。
もっと素直になれば良かったのに。
やっぱり置いていかれるのは寂しいんだろう

時間が限りあるものだと、気がついてしまった人から優しくなるのやめてほしい
そのまま、何も知らないまま、知らないままで大往生してほしいと思う
なんだってできると思う人の背中は眩しいから
後ろのことなんて気にしないで好きにしてほしいと思う
好きに生きなよと伝えると、じいちゃんは苦虫を噛み締めるような顔をした
綺麗に生きていけるわけないよ
迷惑かけて生きてほしいよ