【とキどき間氷期】七草にちか 感想【シャニマス】
はじめに
こんにちは。こちらは先日実装された【とキどき間氷期】七草にちかの感想記事となります。コミュ内容のネタバレがありますので予めご了承ください。
前回の【ふラiとぅTHE】がLanding Point編と強い結びつきがあったのに対して、今回の【とキどき間氷期】は久しぶりに「家」の話を主題に置いたコミュであったように思います。実際に【夜よこノ窓は塗らないデ】や【泣けよ洗濯機】との繋がりを感じる描写も散見されます。当該コミュの感想記事も書いているのでよろしければ是非ご覧ください(隙あらば宣伝)。
ではさっそく以下で内容を見ていきます。
第1話「先いえ」
レッスン終わりにはづきから買い出しを頼まれるにちか。当番制で本来ははづきの仕事のはずですが、彼女は残業で遅くなるようです。急な連絡ににちかは文句を言いつつも対応します。
買い出しを終え疲労困憊のにちか。家の前に人影を見つけ、姉かと思って声をかけようとしますがそこにはなんとシャニPがいました。
にちかは事務所に家の鍵を忘れていました。(にちかに連絡がつかないこともあり)それを届けにきたシャニP。にちかは買い出しに行っていたため、シャニPが先に着いてしまったようです。彼はいつからそこにいたのでしょうか。
シャニPはそれ以上立ち入ろうとはせず帰ろうとします。彼の献身に対して何か声をかけたいようですがうまく伝えられないにちかがいじらしく可愛いですね。
本話ではこれまでのコミュと同様に家の外で献身するシャニPの姿と中々素直になれないにちかのいじらしさが描かれます。
また、「家の前でにちかの帰りを待つ人がいる」という展開は本コミュと同時に実装されたイベントシナリオ『not enough』のワンシーンとも重なります。
第2話「 ん ょう←けすな笑」
んょう。誰かが書いた「ざんぎょう」の文字を、誰かが消して面白くした感じでしょうか。
公園で仕事の台本を読むにちか。友達と別れても一人公園に残る男の子のことが気にかかります。地面に棒でオムライス?の絵を描く男の子。彼のお母さんは遅くまで残業しているようです。
そんな男の子に自身の境遇を重ねてか、にちかは彼と一緒に遊んであげることにします。そして偶然通りかかったシャニPも遊びに巻き込まれます。
子供の面倒を見るお姉さんなにちか、同時に童心に帰って楽しむにちかが描かれます。そこにシャニPも加わり暖かい時間が流れます。普段は少し冷めた反応を示すことも多いにちかですが、ここでは素直で悪戯っぽい彼女がとても愛らしいですね。
第3話「また黒いの」
起承転結の「転」ということで不穏さを感じるタイトルです。
車での帰路で渋滞に捕まる二人。ハロウィン当日を前にして早くも繁華街は人で混み始めているようです。
にちかはメイクスタッフとの会話を回想します。ハロウィンに冷ややかな反応をするにちか。そんなにちかに対してメイクスタッフは「ハロウィンは亡くなった人が家族に会いに来る日」なのだと言います。由来などは割愛しますがハロウィンは「西洋のお盆」だと言う話は実際によく聞きますね。
回想が終わり車内に戻ります。シャニPはハロウィン当日は人混みを避けて帰ろうと提案します。それは「ハロウィンのようなイベントはにちかは好きじゃないだろうから」です。しかし、その説明がにちかの機嫌を損ねます。
にちかは車を降りると言い出します。選択肢によって内容の違いはありますが二人のすれ違う問答が続きコミュが終わります。
にちかはなぜ怒ったのでしょうか。にちかやシャニP自身の言う通り、シャニPの「決めつけるような態度」が気に入らなかったということはもちろんあるでしょう。しかしそれ以上に大きい理由は「ハロウィンを否定するようなことを言われた」からではないでしょうか。
当初にちかはハロウィンに冷めた反応を示していましたが、メイクスタッフの言葉を受けて「家族の日」であるハロウィンに思いを馳せるようになります。そんな中で、家族が帰ってくる日であるハロウィンを「シャニP」に否定されたことが特にショックだったのではないかと考えます。
この辺りは【夜よこノ窓は塗らないデ】の「転」にあたる第3話にも似ています。この話ではタイムセールで一家族1パックのたまごを別々に買ってはいけないという「家族の道理」を家族でないシャニPに説かれたことが、にちかを混乱させ苛立たせました。
シャニPはにちかの家族ではありません。しかし二人の距離は近づき、その境界が曖昧になっている側面もあります。にちかに、シャニPと父を重ねている部分があるのもまた事実です。にちかはそんなシャニPにだけは「家族の日」を否定するようなことは言って欲しくなかったのではないでしょうか。
第4話「いないので」
撮影の仕事に臨むにちか。シャニPは他の仕事があり、同席できないようです。現場にはにちか一人で行くことになりました。
にちかは心配いらないと言いましたが、現場では不機嫌なカメラマンの怒号が飛び不穏な雰囲気です。味方のいない空気が彼女に心細さを感じさせます。
しかし遅れたきた撮影ディレクターが到着することで空気が一変します。彼女はにちかに優しく、撮影現場の雰囲気も暖かいものへと変えてくれます。ディレクターのサポートを受けながら、にちかの撮影の仕事が始まります。
撮影が無事に終了します。撮影後にディレクターから「プロデューサーににちかを守ってくれるよう頼まれていた」というネタばらしがされます。ディレクターは「にちかは大事に思われている」と伝えます。
この辺りは【夜よこノ窓は塗らないデ】でメイクスタッフが言っていた「必死に思ってもらえるならアピールでもいい」という話と重なります。
現場からの帰り道、にちかは電話でシャニPに仕事の報告をします。無事仕事を終えた解放感もあるでしょうが、この場面のにちかは声のトーンも明るく可愛いらしいです。
一緒に現場に行けなくてもシャニPはにちかのことを大切に思っています。それは寄り添えないのに寄り添うフリをする「アピール」に見えるかも知れませんが、その想いは今のにちかにはしっかり届いているはずです。離れている時ほど相手の思いやりを感じ、それを素直に受け取ることができるというのは現実の親子関係でもよくあることなのかもしれませんね。
シャニPは本当の家族よりは少し遠くにいる存在ですが、その想いは本物でありにちかにも届いています。すれ違いを経て、一人の仕事を通じて、改めてにちかはシャニPの想いやその存在を認識します。
True End「 えり」
ハロウィンの雑踏の中でシャニPとにちかは合流できずにいるようです。何とか連絡を取り合ってシャニPはにちかを迎えに行こうとします。
にちかはハロウィンの人混みや騒ぎを目の当たりにして、やはり冷ややかな反応を呈します。しかし同時に「家族が会いにくる日」だという言葉がフラッシュバックします。
(恐らく)道端で座り、少しの間まどろむにちか。彼女に「ただいま」という言葉が聞こえます。その言葉に驚き、「おか(えり)」と返そうとします。そこにはにちかを呼ぶシャニPがいました。
このシーンは【泣けよ洗濯機】のリフレインでもありますね。【泣けよ洗濯機】ではまどろむにちかが父の呼ぶ声に答えようとしたところ、シャニPが現れました。にちかがシャニPを父と重ねていることが改めて分かるシーンです。あの時は、家の中にシャニPが入ってきたこともありにちかを大きく困惑させる結果になってしまいました。しかし今回のにちかの反応は前回とは異なるようです。
にちかと合流できて安堵するシャニP。そんなシャニPを見て、にちかは怪獣になってどーんっ!します。シャニPもこの反応には驚きますが、彼女は悪戯っぽい笑みを浮かべてハロウィンの街へ駆け出して行きます。シャニPが彼女を追いかけていくのを想像させる形でコミュが終わります。
なぜ今回は【泣けよ洗濯機】の時と異なる反応だったのでしょうか。端的に言えばそれは「にちかがシャニPという存在を受け入れ始めている」からだと思います。前回は「家族ではない男」が「家の中」に入ってきたことが、受容のできていない彼女を混乱させました。しかし今のにちかはシャニPの想いが本物であると知り、その想いを受け入れつつあります。本当の家族でなくても、家の中の人でなくても、相手を大事に思っているその想いは届きます。「家族でなくても傍にいるシャニPという存在を受け入れられるようになった」「家の中か外かという線引きが以前ほど彼女にとって重要でなくなった」ということかも知れません。
自分のことを想って自分を迎えに来てくれる人がいる。その人の「ただいま」は家族でなくてもきっと本物で、返すべき言葉は「おかえり」なのでしょう。
今回実際にシャニPが「ただいま」と言った訳ではないと思いますが、にちかは父ではなく目の前のシャニPに対しても心の中で「おかえり」と言えたのではないでしょうか。言いかけた「おか」の言葉はタイトルの「えり」に続きます。父とシャニPを重ねつつも、その違いを認識してシャニPの存在を自然に受け入れられたからこそ、今回は混乱しなかったのだと思います。
今回の「おかえり」はLanding Point編の最後に出てくる「いってらっしゃい」とも対になっています。二人は家族でなくても「いってらっしゃい」「おかえり」を言える関係なのだと言えます。
また第1話で少し触れましたが美琴との関係にも同様のことが言えます。同時実装のイベントシナリオ『not enough』では七草宅の前でにちかの帰りを待つ美琴が描かれました。彼女は家の中でにちかと一緒に料理や食事もしました。
美琴は当然にちかの家族ではありません。しかし彼女は家の前でにちかの帰りを待ち、家の中でにちかと料理や食事をともにします。美琴もまたにちかに寄り添う人になりつつあるのでしょう。互いに不器用ながらも美琴とにちかの想いが通じ合いつつあることを感じさせます。
にちかはきっとこれまで(公園の男の子のように)家族が傍にいない寂しさを何度も感じてきたことと思います。しかし今の彼女には、はづきの他にも彼女のことを想い寄り添う人がいます。ハロウィンは「家族」と「家族じゃないけど大切な人」について、彼女に気付きを与えてくれたイベントになったのではないでしょうか。
おわりに
最後にタイトルの【とキどき間氷期】について少し考えてみます。間氷期とは氷河期の中にあって比較的温暖な時期のことを指します(現在の地球も間氷期にあたるそうです)。
本コミュでは過去コミュと比較してもにちかの態度が柔らかく暖かい会話内容が展開されます。少し氷が溶けつつあるにちかの態度を評して間氷期と銘打っているのかもしれません。
同時に氷河期の中にあって少し暖かい時間というのはにちかの現状そのものを表しているようにも思います。傍に両親がおらず、はづきと二人で生きてきたにちか。しかしアイドルになって家族ではないけど大切な人ができました。そして、にちかは大切な人の暖かさを徐々に受け入れられるようになってきています。にちかの生活に生じつつある温もりこそが、間氷期なのかもしれませんね。
にちかのこれからの時間がより暖かなものになっていくことを願っています。