オープンデータの落とし穴
MotionBoardにはcsvやexcel、DBのデータを地図上に可視化する機能があり、それらはGEOアイテムと呼ばれています。
そのGEOアイテムの機能を補完するものとして、オンラインマップと呼ばれる地図タイルの配信サーバがあります。
オンラインマップを利用すると、インターネット経由で様々な見栄えの地図をGEOアイテムの背景地図として利用することができます。
ちなみに地図タイルとは、地図をタイル状に細切れにした画像のことです。ズームレベルを変更したり、表示領域外に移動したときに都度 地図タイルのダウンロードが発生します。
このオンラインマップの中にはオープンデータ・OSSによるものが含まれています。
ちょっと昔話になるのですが、2016年末頃まで Mapbox互換の地図データを無償で配布していたOSM2VectorTilesというサイトがあって、当時こちらを利用していたところ…
配信停止
しばらくぶりに訪れた配信サイトには
とあり、気がついたら配信停止。
さらにOSM2VectorTilesのリポジトリには、しれっとこんなことが
知的財産権侵害...
詳しい経緯については、こちらのissueに書いてありました。
経緯
Mapbox側の主張
Mapboxの地図データはOpenStreetMap(以下OSM)がベース
OSMの複雑なタグを、Mapbox独自の簡単なタグに変換 -> この変換ルールのセットをタイルスキーマとよぶ
Mapboxのタグを使い、HTMLのclassやidがCSSでスタイルされるようなやり方で見栄えを設定する -> これが地図作成方法(スタイル)
Mapboxはタイルスキーマに知的財産権を主張。
OSM2VectorTiles側が、ベクトルタイルからタイルスキーマをリバースエンジニアリングしてコピーしたと考えている。
OSM2VectorTilesの反論
一方、OSM2VectorTilesの地図データも名前通りOSMベース
Mapboxはスタイルをオープンライセンスとして公開している
Mapboxはタイルスキーマのタグ一覧をWebで情報公開している
OSM2VectorTilesはあくまで、Mapboxが公開している情報をヒントに
Mapboxのスタイル互換のタイルスキーマを作ったので、コピーではないと反論。
Mapboxの反論
情報公開しているが、オープンライセンスではない。
GitHub外の話し合いの結果
OSM2VectorTilesは部分削除を提案したが、Mapboxは全面作り直しを要求。
「部分削除ではダメ」というMapboxの主張に法的な根拠はないものの、OSM2VectorTilesは将来の法的リスクも考えて作り直しに舵を切る。
周囲の反応
法的な面が明らかになっていないので、Mapboxのその他OSSの利用に対して萎縮する人も現れる
OSM2VectorTilesのフォロー
その他のMapboxのOSSの利用は問題ないと確認済み。
これまでMapboxに多くの借りがあるため、今後の事も考えて作り直しで手打ちに。
結果
OSM2VectorTilesは地図データを配信停止
組織もOSM2VectorTilesからOpenMapTilesに変更
独自のタイルスキーマをオープンライセンスで提供
上のスキーマで地図データをビルドするパイプラインをOSSとして提供
上のスキーマに対応したスタイルのサンプルをOSSとして提供
ビルド済みの地図データを
開発用であれば無償で提供
商用利用は有償
上記パイプラインを使い、サーバを並べて全世界のタイルを1ヶ月ぐらいかけてビルドすることに。
パイプラインの利用についてはこちらのサイトにお世話になりました。
https://smellman.hatenablog.com/entry/2017/12/10/210900
見栄えが極力変わらないように、スタイルも新しいスキーマに合うように作り直したのですが、
MapboxとOpenMapTilesのrankの値が大きく異なるため非常に苦労しました。
rankはpoiの表示・非表示に関わるもので、
ズームレベルが低いときは病院や史跡など大きいものだけ出す、ズームレベルが高いときは飲食店やコンビニを出す、といった制御に使われます。
Mapboxのrankはかなりきめ細やかに振られていて、poiのメンテナンスをしながらrankのバランスを保つのは相当な苦労があると思います。
オープンデータやその派生物のライセンスについて改めて考えさせられる問題でした。
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