“守備をエンタメ化”した小坂誠の話
新年も迎えたと思ったら、もう既に2週間が経つ。2022年キャンプインまで半月を切ったこの辺りでようやく昨シーズンを振り返ることが多い。そして改めて思う。
「2021年シーズンは本当に惜しかった。」
あと一息でチャンピオンに届かずにシーズンが終了。
それが「あと一歩で届いたのに…」なのか「まだ、一歩足りなかった…」とするのか。
様々な受け取り方もできるが、個人的には前向きに“あと一歩で届いたのに”と受け取って今シーズンにまた期待したいと改めて思っている今日この頃である。
待たれる“新しい風”の出現
ただ、“そのあと一歩で届いた”のは、言い換えれば「あと何かが足りない」ということ。
そしてその足りない何かは「新しいスター誕生、またはその誕生の息吹」だ。それはチームに刺激を与える存在の出現。“新たな風”が出現することでチームの雰囲気がガラリと変わってくる。
新人選手の合同自主トレの報道が盛んになるキャンプイン前のこの時期も手伝って、その“新たな風”の出現を願わずにはいられない。
衝撃の二人:荻野貴司と小坂誠
そして、あくまで個人の主観だがその“新たな風の存在”をはっきりと感じたのは過去2人。
【荻野貴司のファーストへの駆け抜け】と【小坂誠のディフェンス】だ。
これまでのロッテ観戦人生の中で、この2つの衝撃が忘れられない。
荻野貴司のデビュー当時の“右打席”からのファースト駆け抜け内野安打も衝撃的な事件だった。
ただ、敢えて自分の現地観戦で一番衝撃という意味では受けた【小坂誠のディフェンス力】を挙げたい。
“守備をエンタメ”に昇華させた小坂誠
1997年の小坂誠がデビューした年のダイエー(現:福岡ソフトバンクホークス)戦での一コマが今も忘れられない。
本当はライトスタンドに行きたかったけれども、たくさんの狂気を纏った大人達に混じる勇気がなかった中学時代の自分はその日の試合、ライトスタンド行きを断念。仕方なくレフトスタンド中段くらいで試合観戦することにした。
97年シーズンが開幕し、小坂誠はレギュラー定着。素晴らしいスタートを切っていたはずだったが、当時の血気盛んな猛者揃いのパ・リーグの選手の中においては、漫画のサブキャラ的な印象が否めなかった記憶がある。
当初の段階ではプレーよりも、
「なんだか“小柄で優しそうな青年”でこの人本当に野球選手なのかな?」
と思ったくらい。
私が陣取ったのは、遊撃手の真後ろの位置で選手の動きがよく見えるレフトスタンド中段。生で見る小坂誠は足がよく動き、細かいステップで本当に“簡単そう”に内野ゴロをリズムよく捌いていった。
「これが本当のプロのショートか」とか興奮していた次の瞬間、さらなる衝撃を覚えることになる。
外国人選手が痛打したライナーが三遊間に放たれた。その打球の球筋はちょうどスタンドから一直線かつ目線くらいの高さでよく見える位置だ。
ヒットだと思い
「お、この外国人選手(多分、パークルだと思う)なかなかやるじゃん」
と思った刹那、その“ボールが消えた”のだ。いや、“捕球された”のだった。
え、誰に?
小坂誠がその強烈な打球を“捕らえた”。
これが小坂誠との“衝撃の出会い”だった。
その衝撃を目の当たりにして、うまく頭の中で処理できない中、当の本人はいつも通りの“優しき青年”の顔で既に “当たり前のように”立ち上がりボール回しを始めていた。
間違いなく彼は“新しい風”であった。
彼の守備を通じて “内野守備”の見方が大きく変わっていったと思っている。
今日では、菊池(広島)、吉川(巨人)、今宮(ソフトバンク)など“華のある守備”も野球のエンターテイメント要素として認識・定着してきている。
その内野守備という野球の試合において一番平凡なプレーを“見るべきもの(エンタメ化)”にした小坂誠の功績は非常に大きいと個人的には思っている。
20数年経った今も未だにあの時の衝撃を忘れられないのだから。
@KZSK(Twitter)