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真夏の方程式 感想




『真夏の方程式』をうっかり見直して、映画の約半分の時間くらい涙と鼻水出まくりの情緒不安定人間に成り果ててました。あろうことか、土曜の夕方に。

ガリレオシリーズの長編映画の2作目にあたる、真夏の方程式です。もう何年前になるんでしょうか、初めて見たときはまだ中学生だった気がします。時の流れは早いですね。考えたくないです。

ガリレオシリーズは映画3つあって、『容疑者Xの献身』『真夏の方程式』『沈黙のパレード』です。小説で長編としてかかれている『聖女の救済』『禁断の魔術』などはSPドラマで実写化されてます。
正直ドラマ枠の実写化は、可も無く不可も無くが一番近いかもしれません。というよりも、この感想が綺麗な言葉で出せる限界です。その話は機会があればします。
映画枠の実写化した3作品はめちゃくちゃ良いです。私は全部好きです。ドラマのコミカルさなど無縁と言わんばかりのシリアスさがね、堪らない。やっぱりガリレオはシリアスさが良いなぁ~、湯川先生がじわじわと真実に近づくのが良いなぁ~、人間関係の重さが見えるのが最高だなぁ~、という感じです。私がそもそも小説(原作)から情報を得たいという人間なので、小説の雰囲気が好きだから先ほどのような感想になっています。

真夏の方程式の好きなシーンを挙げながら語りたいと思います。

ネタバレ満載なのでご注意









湯川先生と恭平がペットボトルロケットを200m飛ばして海の底を見る

これです。この映画の最大の印象的な場面であり、最大の癒やしです。
このシーンを終えると大体1時間経っており、そこから事件の真相へ近づくためのミステリーの雰囲気になるため、ここが転換点です。

転換点はそうなのですが、湯川先生が理科嫌い(小4なので仕方ないのでは?と私は思っている。)の恭平と、実験を繰り返して海の底を見るというシチュエーションというだけで最高だと思いませんか。恭平は船酔いするし、泳げないし、潜れないので、海の底を見る術が限られているのです。そこを湯川先生が、実験を通じて結果を見せるという、先生の立場として子どもに最大限の理科を提供しているのです。
あの子供が嫌いな湯川先生がですよ?これまで子供に近づくと蕁麻疹が出る湯川先生が、蕁麻疹も出ず子供と話しているだけで凄い。相手が恭平だから為し得た場面であると思います。


湯川先生と恭平の晩御飯の場面

ここから物語の雰囲気が変わります。ミステリーに。
具体的にいうと、固形燃料で紙鍋がなぜ燃えないのか、という話です。胸が苦しくなります。普通に湯川先生は原理をわかりやすく説明しているのですが、一通り話を聴き終わると恭平は疑問を投げます。
紙のコースターを紙鍋と固形燃料の間に入れたらコースターはどうなるのか。
子供は時として残酷ですよね。だってこの疑問、今回の事件に使われたトリックとほぼ同じなんですから。紙鍋とコースターは濡れた段ボール、固形燃料はボイラー。そりゃあ、おじさんが裏で聴きながらゾッとするしかないでしょう。湯川先生も薄々勘づいてたはずです。もしかしたら葛藤もしていたのではないでしょうか。このまま実験させることが恭平にとって良いことなのか、もし真実にがむしゃらに近付いて恭平の人生に多大な影響が出るのではと。湯川先生は、恭平がコースターを突っ込んだ後すぐ箸でコースターを退かせます。恭平は不思議そうに湯川先生を見ていました。彼はまだ気付いていなかったのです。湯川先生が先生という立場の人間だなぁと思い知らされる場面です。

恭平が、僕はあの日花火をしちゃいけなかったの?と湯川先生に訊く場面

ほぼ最後のシーンです。というかこの場面の前から我々の心を抉りに来てます。初めて原作者(東野圭吾さん)が怖いと思いました。
まず子供にそんなこと言わせた今回の事件、および絡み合った秘密がすでにどうしようもないです。しかも恭平は巻き込まれただけなので、行き場のないどうしようもない感情が、こちら側訴えてきます。

そう、この事件の最大の決め手は恭平なのです。花火が煙突に入ったら危ないからとおじさんに言われ、代わりに恭平が煙突に濡れた段ボールで蓋をしたからです。確信とまではいかないものの、恭平もうっすらと気付き始めます。紙鍋の話、おじさんが旅館(もう亡くなられてる仏さん)に向かって頭を下げてたこと、湯川先生が旅館のことを確かめたいと恭平と2人で見に行ったこと、全部。彼は小4です。全く気付かない、とはならないでしょう。ですが小学生はそこまで馬鹿ではなかったはずです。胸のざわめきを感じてから、ホテルでの湯川先生の部屋をチャイムで何度も鳴らしていたときの表情が悲しくなります。小学生がそんな顔してたらこっちは泣いちゃう。気付かないでほしかった、とさえ思った。
諸々の話を駅で終えてから湯川先生が最後に言うのです。

君は一人じゃない

他にも付随して様々な良いことを言っているのですが、この一言で恭平は救われることでしょう。頼むから救われてくれ。




他にも好きな台詞とかシーンとかありますよ。

  • 回想で、昔の旅館のおじさんが酔って帰ってきて、娘の写真置いて「俺には全然似てないってよ」って妻に言うシーン。

  • 成海の母(先ほど書いた妻)が面会で成海に「ちゃんとご飯食べなさいよ」とか。

  • おじさんが湯川先生の推理聴いて、全然違うでっち上げだ、とあくまで秘密を貫き通す態度とか(妻と娘のこと全部知ってた)。

  • その後のマジックミラー越しに見ていた成海とおじさんが窓を隔てて探してるところとか。

  • 湯川先生が最後成海とダイビングして、罪を償おうとしている成海に、恭平を守らなければならないみたいなこと伝えてたりとか。



久しぶりに見返したら、とんでもない人間関係の秘密が混ざり合ったやばい映画でした。最初に書いたように、土曜の夕方急に見始めたのですが、情緒不安定人間となってしまいまして……。普段独り言がかなりうるさい人間なのですが、その後の夜めちゃくちゃ黙ってました。こんな引きずるような人間だったっけ?こんなに色んな人に情を写してすぐ涙してしまうような人間だっけ?
ましてや中学生のときの自分が引きずるような感じでもなかったのが驚きです。今以上に湯川先生のことしか見てなかったな?

半分はそうだと思います。もう半分は、子供に影響が出ていることへの虚しさ、大切な人を守るための意志を自分が中学生のときに理解しきれていなかった部分が溢れ出たことだろう、ふわふわと考えております。

ガリレオシリーズの映画はやっぱり重くてシリアスで最高です。
でも『真夏の方程式』と『容疑者Xの献身』は、人には勧めにくいね。雰囲気が重いから。
『沈黙のパレード』が最初の10分くらいの掴みが良くて、一番ドラマの雰囲気に近い部分があって、登場人物も皆良くて、ガリレオ映画初めてです!重い雰囲気ずっと続くのはちょっとな……の人にとって、かなり見やすいと思います。泣けるガリレオと言うだけはある。
ガリレオの雰囲気わかるしミステリーとか重い雰囲気大歓迎だぜ!って人は『容疑者Xの献身』か『真夏の方程式』で良いと思います。
個人的には容疑者X→方程式→パレードの普通の公開順でいいと思います。湯川先生の真実との付き合い方に変化が見えるから面白いよ。
湯川先生が警察の人間でも探偵でもないからこその、情の深さがあるので。


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