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ネットワークビジネスに勧誘されかけた話

「旅行先の飲食店で偶然隣の席になり、ひょんなことから話してみたら意気投合してまた会うことになった。」

と、ここまで書いたらちょっとした恋愛ドラマみたい。

だけど全然違う、私ととある女性の出会いと別れの話。

ひとり旅で訪れた地でお昼ご飯を食べようと、以前から気になっていたお店に入った。ひとり掛けテーブルに通されメニューを眺める。
その時、隣のひとり掛けテーブルに私より一回りは年下と思われる女性が座った。
私は普段、あまり隣の人と距離が近い席は好まないのだけれど、人気の店だったので仕方ないかと少し残念に思った。

店員さんが来て、初めてだったらメニューやお店の説明をすると言う。
しかも「お二人ご一緒でいいですか?」と。そんなフランクな感じのお店。
「(忙しい時間帯だろうし)いいですよ。」程度の私だったが、隣の彼女は「はい!いいです!」と語尾に!だけでなく♪が付きそうな元気の良さで答えた。
第一印象は「明るい子だな」。

説明が終わってこれで終了と思いきや、隣の彼女が話しかけてきた。

「一人で旅行ですか?」

コロナ禍だったということもあり、人との交流もめっきり減っていた私は久しぶりの会話にちょっと戸惑いつつも、「おしゃべり」に餓えていたので嬉しく思った。

そこから彼女の自己紹介が始まった。氏名の漢字についてと出身地、今の職業、なんでここに来たかという一連の流れを淀みなくまるで台本があるかのごとく、すらすらと話し出した。

(相手にすぐ心を開く子なのかな?)

私はこの時点でこんなことを思っていた。

しかし職場の話を聞いた時、美容関連だったのでこの時に一瞬、
「あ、もしかして勧誘目的かな?」と思った。
なぜなら美容関連の勧誘は結構多くて、以前も似た様な事があったからだ。

そうこうしていると料理が運ばれてきた。
SNSで見た通り、色鮮やかでとても美味しそう。

彼女はスマホで写メを撮って欲しいと言ってきた。

(まぁ、若い子だしねインスタにあげるんだろうな)

彼女に指定された角度で数枚撮ってあげると、

「良かったら一緒に写メ撮っていいですか?」と聞いてきた。

この日は暑くてたくさん歩いてマスクもしていたし化粧はドロドロ、髪はボサボサだったのでちょっと嫌だなーと思ったけど、承諾してしまった。
(今思えば、嫌だと思ったらちゃんと断りなさいよ自分。)

「ドロドロだけど、いいよ」と。

「インスタやってたら教えてください!ストーリーにタグ付けしてもいいですか?」と聞いてきた。

LINEを聞かれたら断ろうかと思っていたが、インスタならいいか、(何かあればブロックすればいい)と承諾した。

彼女のストーリーには私の名前がタグ付けされ、料理と一緒に写っていた。


さて、料理を食べようと思ったが、

「私、この野菜嫌いなんで良かったら食べてください。」と。
その後も「これってどんな味かな?」など独り言なのか話しかけているのかわからないので、私も答えるというのを繰り返した。

私は「ああ、ちゃんと料理味わえてないな。一人で集中して食べたいな。」と思い始めた。

でも彼女の話は止まらない、実家の家族のことや今回の旅行のことなど本当にたくさん話してくる。

その度に相槌を打ちながらとりあえず目の前の料理を口に運ぶ。
(そこまで聞いてないし、何なら知りたいと思ってないんだけどな、そもそも初対面にそこまで話していいのかな?なんて思いながら。)

だけど一向にこちらのことについて話してこない。
初対面の人に詮索されるのも嫌だし、もし勧誘されたら困ると思っていたけれど、ひたすら自分の話ばかりするのでなんだかなぁと思っていた。

食事が終盤になると、

「この後どこに行くんですか?」と聞いてきた。
(あ、これは付いてくるパターンだな)と思ったのと実際に帰りのバスの時間が迫っていたので、「◯時で帰るから難しい」と断った。

すると、

「今度◯◯へ(私の住んでいるところ)数日出張する予定だからその時に会っても良いですか?」

と聞かれた。

不慣れな土地だし色々教えて欲しいとその前に言われていたので、(面倒だけど)まあ食事くらいならいっかと、承諾した。
(この時、面倒と思った自分の素直な気持ちに従っておけよ、と今なら思う。面と向かって断れなかった自分をちょっと呪う。)

バスが来るまでの時間、お土産をじっくり選びたかったのだけど、そこにも付いて来たいという。

(ここまで来て私もいい加減断われよ、と思うのだけど断れない。。)

もうどうでもいいよ、と思い大急ぎでお土産売り場に行き、選んで購入。
「じゃあね!」とすぐ離れた。

バスの中で、先ほどの彼女のインスタのストーリーにハートマークを押して、お返事代わりに私のストーリーでシェアをした。
(今思えばここまでやらんでも、と思うけどいい人ぶりたい私のダメなところ。)

帰路、それでも久しぶりに他人との交流が楽しかったのか、自分より年下の子とおしゃべりをして新鮮だったのか、もしかしたらこんな出会い方もあるのかもしれないと呑気に考えていた自分。

そこへ妹からインスタでメッセージが。

「この人のプロフィールちょっと見たけど、なんかネットワークビジネスの匂いする」

「!!!」

彼女のインスタをよく見てみる。確かにプロフィールには「◯◯占いは◯◯です!」ととあるビジネスの常套句と言われる文言が。

「あらら。」とスクロールしていくと、職場の人とは思えない色んな人と写る写真が多数。

「うーん、これはやってしまったか。」と思った。

そしてなんで私ってこういう人に声かけられるんだろうかと悲しくなった。
そんなに声かけやすそうなのか。


そこで彼女に思い切って聞いてみた。

「はい!やってます!でも思っているのと全然違います!」


はい、ビンゴ。

というわけで、「会えません」と送った。
(メールではちゃんと断れるチキンな私)

そしたら「ちゃんと返信してくれて優しいんですね」と来た。

優しい、か。

優しかないよ。断れなくて無視もできなくて仕方なく返信してんのよ。

人の価値観はそれぞれ、否定はしないけど私は受け入れられない。

人と出会う時にその人自身を見るのではなく、その先にあるものしか見えていない人と交流を続ける気はない。

あーあ、これも勉強ですな。

今度はちゃんと味わいにまたあのお店に行こうかな。


とりあえず人の時間を奪っていることはなかなか罪深いということ。
そして、私、ちゃんと断ろうな!
ええ顔しようとしなくていいんやで!


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