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トランスジェンダーが婦人科に行った話。

題名通りな話。
多くの人には大したことないように聞こえるかもしれない。ただ、僕はとんでもない一大決心をして婦人科の「女性専用」と書かれてある自動ドアを申し訳ない気持ちで潜り、震える手で問診表を書いて診察を受けたのだ。

なぜ、一大決心?どした、どした?と思うのが普通かと思う。以前書いたnoteを読んでくださってる方はお察しの通り、禾口希は生まれてきた性別と中身が逆だからである。女性として生まれ男性の心を持っている。世間ではトランスジェンダーと言われるやつ。LGBTのTの人間。
題名にわざわざ好きじゃあ無い言葉でも書いたのは同じような悩みを持ってる人にちょっっとでも情報を共有したかったからだ。

前提として僕は、とてつもなく生理が重いという悩みを十数年抱えていた。婦人科なんか絶対いかねぇ!婦人じゃねぇし!痛み止めで誤魔化せばまあ動けん時はあるが男やしこれくらい我慢できなくてどうする!ぐらいの気持ちで生きてきた。(ちょっと矛盾と、虚勢)
ただ生理前の所謂PMS(精神的に不安定になったり、イライラしたり、体調をそもそもくずしたりetc)も酷かった。PMSについては詳しく調べて見て欲しい。生理前やから仕方ないかと思っている女性の肉体をもってる人は僕の周りにもかなり多いが度合いによっては、様々な可能性がある。
毎月通院している精神科で主治医に相談したこともしばしばあったが、それはもちろん専門外で然るべき科、この場合婦人科に行くことを長年進められてはいた。

もちろん仕事にも支障が出ていた。
いつもなら仮面を被って禾口ちゃん(女)として働けてる僕もその時期は仮面が外れたり、割れたり、本当の僕が嫌悪感丸出しでいるのと、体調の悪さから仕事を休まざるを得なかった。

話は少し過去へと戻るが、頭を過ったのは小学五年生の夏休み。当時家も近く、仲良くしていた友達のYちゃんが「なぁ、希ちゃんナイショの話あるんやけどな」との前置きで言われた「生理になってん」という言葉となんというか一段階上に上がったでって感じの表情。
僕はそれを聞いた時に「ほぁ、そうなんや、大変やなぁ」と言うて、帰路に着いたのを思い出した。
女性になるということへの恐怖からそういう話題は避けていたが、怖いので本などで調べてはいた。
ちょうどその後、生理についての授業があり女子生徒にはナプキンとなんかメカニズムが書かれてある冊子の入ってあるピンクの巾着が渡された。
僕はそれを勉強机の横にちょこんとおいて、どこか他人事で、これを使う前にちんこ生えてこないかなぁなどと思っていた。

月日はすぎ、僕は中学生になった。そして体格が小柄なこともあってか生理が始まるのが遅かった。このころ周りの女子達はひそひそ、ナプキンがなんだの、体育の授業を見学するだの話してたのを覚えている。

その日は突然やってきた。
感覚的には未体験のなにか。
お腹に違和感、牛乳飲みすぎた?いや、くだした感じでもない。
ん?なんや?え?まさか。トイレに駆け込んだ。
鮮血に染まった下着をみたときに脳味噌がぐわんぐわんした。幸い自宅だった為、半泣きになりながらも女性のベテランの母を呼んだ。
「おめでとう!やっときたね!」
呪いの言葉に聞こえた。悪い魔女に魔法をかけられたみたいな。鈍器で頭を殴られたような感覚。
へぇ、おめでとうで人は傷付くんやなと新たな気づきをここで得た。

そのあと忙しなく母は赤飯を炊こうか、おばあちゃんに報告しようかだとかなんやらかんやら言うていたが僕は言葉を選び絞り出すように「赤飯は好きやないから、寿司がええ」とだけ言い放った。

希望通りに晩御飯はお寿司に決まり、家族全員でお寿司を食べにいった。僕はこんなに不味い寿司あんねやと思いながら、普段はがっつく寿司をちょっとだけ食べた。小さな抵抗。こんなんやからって僕が女になってるわけないという大きな反発。

話は戻って婦人科へ行った理由。
別件のように聞こえるかもしれないが、最近僕は咳喘息という病気を患った。
喘息の一段階下の放っておけば三割が喘息になるという厄介な病気。絶賛服薬治療中。
そして、今月もPMSが酷かった。今月もというか、いつもより酷く感じた。今思えば職場の環境の少しの変化やストレスも普段よりあったので、要因の一つかもしれないが、にしても酷い。
休みの日が潰れるくらいの体調不良。
あと重ねていうがシンプルに心身ともに疲れていた。
そこで、乗り気ではないが軽く婦人科系の病気についてスマホで調べた。厳密には生理が重い人について。
可能性として年齢的に子宮筋腫が気になった。今年僕は33歳で、物理的にめちゃくちゃ若い訳では無い。
母は子宮癌を患ったことがある人で、子宮筋腫から子宮癌になったと聞いた記憶があった。
家系的な遺伝とかもあるかもしれないと、検索して職場の近くの病院をみつけた。仕事が終わって行ける時間に診療している事と職場から近いってだけで「ここじゃないと!」ってわけではなかった。そして、このしんどさが軽減されたらラッキーくらいの何故か軽い気持ちでしっかり調べずに予約した。あえてそういう心持ちにしていた。いくら身体が女性でも男が婦人科行くなんて…なんていう気持ちはガムテープでぐるぐるにして、いやぁ、けど肉体的に女性ですからね、当たり前ですよって気持ちをなるべく全面に出していた。今思えば自分の本当の気持ちを殺してたんだなと思う。

そして冒頭に戻る。問診表を書き終えて番号札の印刷された紙を渡された。問診表の内容は当たり前だがもうそれはそれは赤裸々に書かなければいけなかった。
・性行を最後にしたのはいつ?
・直近の生理の期間は?
・初潮はいつ?
ノーコメント!って書きたい気持ちを抑えて素直に全て書出した。

○‪番さん〜、一診にお入りください。

こっから始まった地獄の時間。問診表をみながら先生からの質問。
「生理が重いんですね、詳しく教えてください」
自分でもあほらしいほど辿々しく答える。この時から声が震えていた。
「PMSも酷いですか?」
そりゃあもう、別人になったのかって精神状態になりますし、体調も最悪できついんです!これに関してはつらつらとしんどさを伝えた。

「検査をしましょうか」

はい!
所謂お子さんを授かった時のような腹にジェルを塗ってやるタイプのエコーで調べれるもんやと思ってた僕は割と迷いなく答えた。

先生の詳しい説明のターン「エコーは腟内から…」この辺りで僕は勢いよく椅子から立ち上がった。
立ち上がったくせにへなへなと座り込みながら小さい声で伝えた「あの、自分は心が男で」多分ちょっと泣いてた。

そこで先生はなにか察してくれたようにわかりやすい用紙をみせてくれなが、薬の説明を始めてくれた。会話形式で記していく。

医者「まず、一般的に低用量ピルというものがあります。これには女性ホルモンが含まれていて子宮の壁を厚くする効果があります。」

僕「あっと、女性ホルモンが増えられるのは…あの…困ります…」

医者「そうですよね。LGBTの方ですもんね。生理痛が酷いパターンはいくつかありますが、年齢的にこちらの可能性は省いて、子宮筋腫、子宮内膜症、性病が考えられます。その…性行為は女性とですか?」

僕「…いや、女性とも男性ともありますが、ここ数年は無いので可能性はないです…」

医者「そうですか。低用量ピルはホルモンの関係でLGBTの禾口さんには抵抗があると思ので、漢方と痛み止めと子宮のけいれんや運動を和らげる薬を今回は出します。が、やはり子宮筋腫などが懸念事項としてありますね、希望すれば今からでも検査はできますが、やはりLGBTの方となるとそうはいきませんよね」

ここで僕の嫌いなワードLGBTがびっくりするくらい飛び出してきた。
客観的に見るとお医者さんも吃驚してた可能性がある。
ただ、嫌いな言葉でも一般的な事実としてはそうなので頷くしかできない。

医者「LGBTの方でも診て貰える病院はあると思います。僕は知りませんが、調べればあると思います。で…やはり内診台は抵抗ありますよね」

僕「内診台って赤ちゃん産む時のやつですか?…コウノドリでみました…抵抗とかの次元じゃないかもしれません」

泣きながら脳味噌に浮かんでたサクラ先生と四宮先生でコウノドリというワードが出た。すごい。腐ってもオタクだった。

医者「望むなら今から直ぐ検査することも可能ですが……」

僕「覚悟が…ないです。薬だけいただいて帰ります。1番近い薬局はどこですか…?」

僕はそのまま診察室を出て、遂にボタボタ落ちる涙を隠すことも出来ないまま受付で支払いを済ませ、薬局に向かった。

薬局では入った瞬間から号泣してる大人にびっくりされていたと思うが、しっかりとお薬手帳もだし、薬の説明もふわふわした状態で受けて、相変わらず止まらない涙を隠せる訳もなく帰路に着いた。

因みに診察は1200円ほど、薬は1800円ほどだった。
地域や状況によっては値段が変わるかもしれないので病院に行く人は参考までに思っておいて欲しい。

薬は漢方の当帰芍薬散・ロキソニン ・ブスコパン と胃薬だった。漢方は毎日服用するもの、ロキソニンとブスコパンは生理が始まったら服薬するものだった。

結論、言ってしまえば成果はあったが僕は傷付いてしまった。勿論、医者も、親も誰も悪くない。強いて言うならば僕の知識不足。そして自分の心に素直にならなかったこと。それが敗因だったように思える。悔しい、やるせない、情けないの三拍子で久しぶりに落ち込んだ。

ただ、数日経ち信頼できる人に話を聞いてもらい客観的な意見を貰えたことと、自分の中で少しずつ消化していること、こうして文字にしていることで気持ちは回復してきている。

裏腹に、今月もやってきた血祭り、生理は近年稀に見るしんどさなため、準備や覚悟、下調べを済ませれば、僕のようなトランスジェンダーのPMSや生理痛を診てもらえる病院にいくつもりである。少し調べた限り、性別適合手術をできる病院であれば婦人科もあるため受診してもらえる可能性があるといえる。次は事前に電話やメールで確認して受診しようと思う。

最後に、ここまで読んでくれた方、ありがとうございます。読みにくいですよねすみません。

そしてトランスジェンダー(FtM)で生理痛が酷く悩んでる方へ、同じ轍を踏まないように、下調べはしっかりとして、快適な環境になることを望みます。

僕は定期的に通院している精神科でいつでも性別適合手術を出来る診断書出せるよと言われているが、まだしてないことについては気が向いたら書きます。

それでは、サラバーイ!

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