クリエイティビティとは何か

広告マーケットが縮小していく中で、広告クリエイターたちは様々な拡張や応用を試みていますが、根本にあるクリエイティビティの定義が曖昧であると感じることが多いです。そこで、私なりにクリエイティビティを再定義してみます。

結論として、クリエイティビティは以下の3つの力を指すと考えます。

  1. 前提を疑い、問いを立てる力

  2. 立てた問いに答えを出す力

  3. 伝わる形にする表現力(狭義のクリエイティビティ)

具体例として、私が非常にクリエイティブだと思う人物の一人に、黒鳥社の若林恵さんがいます。彼の書いた『さよなら未来』という書籍の中の「写真と俳句」というコラムから一節を抜粋します。


“歴史的に見ると「写真」は「絵画」というジャンルに接続され、そこから独自の文化を開花させたということになっている。そんなのあたりまえだろうと思われるかもしれないが、日本においては、それはあたりまえではなかったはずだ。そもそも、写真という新しい形式を、そこに接続できるような絵画の伝統を日本は持っていなかったように思うのだが、違うだろうか。では、日本人は写真を何に接続したのかというと、実は「俳句」なんじゃないか、という気がしている。”


この一節は私にとって非常にクリエイティブだと感じたものです。これを先ほどの観点からデコンストラクションしてみます。

  1. 前提を疑い、問いを立てる力:

    • 歴史的に見ると「写真」は「絵画」というジャンルに接続され、そこから独自の文化を開花させたということになっている。そんなの当たり前だろうと思われるかもしれないが、日本においては、それは当たり前ではなかったはずだ。そもそも、写真という新しい形式を、そこに接続できるような絵画の伝統を日本は持っていなかったように思うのだが、違うだろうか。

  2. 立てた問いに答えを出す力:

    • では、日本人は写真を何に接続したのかというと、実は「俳句」なんじゃないか、という気がしている。

  3. 伝わる形にする表現力:

    • 若林さんは、この問いに対して、自身の観点から明確な答えを導き出し、それを分かりやすい形で表現しています。この表現力こそが、彼のクリエイティビティの真髄です。

このように、前提を疑い、自分なりの観点から答えを導き出し、それを伝わる形で表現することが重要です。クリエイティビティというと「形にする表現力」という狭義の意味で捉えられることが多いですが、1、2、3が揃って初めてクリエイティブな人だと私は思います。

いわゆるクリエイティブと呼ばれる領域にいる人間として、3の狭義のクリエイティブ領域は大切にしつつも、GenAIの台頭や制作ツールのユーザビリティ向上に伴いその価値が低下していくことを自覚し、より1、2のコンセプトレベルのクリエイティブ領域を大切にしていきたいと考えています。

結論として、真のクリエイティビティとは、前提を疑い問いを立てる力、立てた問いに答えを出す力、そしてその答えを伝わる形で表現する力の3つが揃ったものであると言えます。この3つの力を兼ね備えた人こそが、これからの時代における真のクリエイティブな存在であると信じています。