社長はチームに入れ込んだ方がいいのか?
昨日はJFL27節だった。対戦相手はアトレチコ鈴鹿。ご存知、三浦知良選手が活躍しているチームだ。残念ながら都並監督(ヴェルディで仲間かつ元横浜FC監督時代にカズさんが選手だった)や選手達の期待虚しく故障で三浦知良選手の出場は叶わなかった。
結果はアウェイながら3−2の勝利で鈴鹿とは1勝1敗のトータルドロー。
今回のテーマは社長の自分はどこまでチームに、選手に入れ込んでいいのだろうかという自問自答。ここではチーム=トップチーム、クラブは育成やスタッフも含めた全体という使い分けをさせていただきます。
自分は一番のサポーターでいたい
18年前にクラブ代表を引き受けた時は息子が所属するチームということで、息子(小学6年)の応援には行くがトップチームにはあまり興味がなかった。ところがクラブ理念を理解し、クラブ代表としてトップチームの応援に行き始めると一変した。面白いのだ。学生や社会人として働きながら週末の県リーグに出場。平日は仕事が終わって19−21時までの練習。しかも土のグランド。
試合が始まると監督の熱量、選手の走り、ボールの音に引き込まれていったのだ。当時の千葉県はリーグで首位にならないと関東大会(関東リーグへの昇格権がある)に出場できず(今は上位2チーム)、いつも2位ー5位ぐらいをいったりきたり。
ある年に千葉県開催となり開催地区の恩恵で2位ながら出場権を得た。
応援シャツを作ったり、応援グッズを準備したりして市原の会場で応援した。その時も一定のサポーターがいてくれた。残念ながら2試合目で日立ビルシステムに終了間際の失点で敗戦。選手と共に涙を流した。
そこからもなかなか優勝ができない。そして迎えた2011年。年初に監督とGMに勝手な宣言をした。「今年関東リーグに昇格できなければトップチームを解散する」。自分がオーナーでもないのに(当時は監督達の別会社が経営をしていた)勝手なことを言ったものだ。今更ながらに赤面するが。
ところがだ、この私の宣言に監督がこれまで以上に本気になった。なんとJクラブから清水康也と長谷川太郎を連れてきたのだ。さらにアミティエ(現おこしやす京都)のGKだった永井文也が加入して千葉県リーグをダントツ優勝。さらに関東大会を優勝し関東リーグ2部に昇格をしてしまったのだ。
栃木県で行われた最後の試合に勝つと熱い涙が流れた。
そんなことで自分は社長やオーナーというより代表という名前を借りたサポーターだったわけです。
社長になってもサポーター
関東リーグに昇格してからは大泣きしたことがあった。それは2014年の天皇杯1回戦。グルージャ盛岡に勝利をして浦和レッズとの2回戦を手に入れた瞬間だった。テクニカルディレクターの都並さんもベンチに入っており、勝利の挨拶にゴール裏に向かった。都並さんは平然としていたが、自分は涙が溢れて声にならなかった。都並さんになにか話しかけたのだけど、多分「レッズと対戦なんて夢じゃないか」なんてことを。
そして2015年にチーム名を浦安SCからブリオベッカ浦安に変更。狙いはJFL昇格を本気で目指す覚悟を決めたから。そして株式会社ベイフットボール浦安を設立してオーナーになった。当時勤務していたシスコシステムズが兼業を認めなかったので最初の社長を増田氏にお願いしたが、自分はその後退職して代表取締役になった。
そして関東リーグ1部を優勝、地域決勝大会で準優勝しJFLに昇格。
しかし自分では何も変わらない。あくまでも1番のサポーターで、声を枯らして応援していた。JFLのアウェイ試合も全て自費で遠征に付き合い、SNSと試合報告ブログに動画編集を帰りの移動中にこなした。
だから勝利すれば歓喜するし負けると苦しさで胸がいっぱいになる。
社長の仕事ってなんだろう
代表取締役だがここでは社長という言葉を使わせてもらいます。
さてサッカークラブの社長って何をする仕事なのでしょうか?
簡単に書くと運営している株式会社の健全な経営を成し遂げること。健全とは?それは財務の健全性であり、クラブの理念に基づいた行動の健全性であり、育成の子供達の成長を促す健全性でしょう。社長としては特に財務の健全性が問われる。
浦安の収益はスポンサー売上と育成の月謝が中心だ。だからスポンサーやパートナーの皆様との交流はすごく重要だし、育成の質を上げることも重要な仕事になる。
さらに理念をしっかりと整理してこれを定着させてスタッフや選手の行動規範にしなくてはならない。
またこれは株式会社とは直接は関係がないがすごく重要なことに地域とのつながりがある。地域のさまざまな団体との貢献活動や地域のサッカー協会との関係がとても重要だ。これは間接的にはスポンサーやサポーター拡大にもつながる取り組みでもある。
自分はJFLの実行委員(昨年までの理事会が実行委員会に移行した)のためJFLの意思決定のプロセスに関与している(最終決定は新しい理事会)。
もう一つ大事なことがあった。ホームゲームの運営の総責任者だ。ホームゲームのある週はアクションがたくさんある。残念ながら昨年の手術からの流れでアウェイ帯同の回数は減ってしまっているが、行く時には先方の代表者の方と意見交換をさせていただいている。
ということで実はチームに関わる暇がないほどやることはたくさんある。
ファジアーノ岡山の木村さんから学んだこと
2016年のJFLにはファジアーノ岡山ネクストというファジアーノ岡山のセカンドチームがあり、当時ファジアーノ社長の木村さんとは意見交換をさせていただいた。昇格してなかなか勝てない時期になんとかファジアーノ岡山ネクストとの試合で勝利。そしてその日の夜に木村さんと二人で意見交換の会食をさせていただいた。
その後、Jリーグの理事をされていた時も電話で色々教えていただいたりしていた。今はとある会合でご一緒しており、たまに飲みに行ったりさせていただいている。
その木村さんの教えに「社長は必要以上に選手と交流しない」というのがある。理由はいくつかある。選手に個別に肩入れするとチームがおかしくなることがある。
しかし木村さんが言い切っていたのは「社長がやるべきプライオリティーの1番は経営を健全にするための営業活動」ということだ。
平日はスポンサー開拓に邁進、ホームゲームではスポンサー交流に時間を割く。選手と個別に会話することはまずない、と言い切っていらっしゃる。
中国リーグからJ2に駆け上がる背景にはこの辣腕ぶりがあったのだ。
矛盾を抱えながら
そうは言っても自分は1番のサポーターとして生きてきた。日本代表の試合を除くと他のチームのサッカーには全く興味がない。生粋のブリオベッカファンなのだ。
だから得点をしたら大きくガッツポーズもするし、勝利したら真っ先に監督のもとに行って握手をし、選手とも握手をする。試合前にはロッカールームで監督の言葉に耳を傾け(半分はファンクラブ向けの動画撮影が目的だが)、ロッカーアウトのハイタッチは一番後ろで選手に声をかける。(これが至福の瞬間です)
練習も頻繁ではないにしろたまに出かけて選手に声をかける。調子の良い選手よりも故障を抱えている選手の方に気持ちが向く。
木村氏の言葉が経営者としては鉄板であることは重々理解しているが、心の中でサポーターの自分を抑えられない。
アウェの試合に行く時は今でも自費だ。クラブのお金を使うならむしろ広報の人に使いたいから。(おかげで好きなルートで行って好きなホテルに泊まる)
気をつけていること
とは言っても気をつけていることはある。とある人にサッカークラブの社長はチームの成績に一喜一憂しないようにして欲しいと言われたから。
「あるJクラブの社長が自分の個人SNSに割と感情的に自分のチームの結果について書いているが、あれはいただけない。見る気がしない。」とその人は言っていた。
確かに一理ある。社長はもっと広い見識で臨むべきだし、もっと中長期的な目線が必要だ。そして常に冷静でありたい。トップが冷静なら現場も冷静になれるかもしれない。(たまに逆もある、トップがはしゃぎ過ぎるので現場が冷静になったり)
だからなるべく自分のSNSに試合結果についてのコメントを書かないことにした。たまに載せるのは意義のあること。例えば天皇杯本戦の競技場に行ってその感動を伝えたい、その相手がJ1チームでのそのチームの素晴らしさを感じた時などなど。
だから私のSNSをサッカークラブの代表として見ていると失望するかもしれない。書かないから。その分、noteに気持ちは記載しているつもりだが、これも感情的にならないようにしている。
もちろん酒宴の席では言いたいことを(クローズなら)言っていますよ。
なんか答えのない自問自答で申し訳ありません。
果たして社長であり1番のサポーターは成り立つのか?自分はそこから抜けきれないでいます。しかし今年Jリーグを目指すことを宣言した以上、覚悟を持って経営しなくてはならないのでしょう。
シーズンもあと3節、今が正念場。そしてリーグが終わると社長の力量が試される時期に入ります。営業と組織編成です。
そうそう、理念についてもシーズンが終わったらお知らせします。