新仮想通貨(暗号通貨)「Chia」
第1回 Chiaとは
先月の米国時間2021年3月19日、Chia(チア)という新しい仮想通貨(暗号通貨)がリリースされた。英語ではCryptocurrencyであるため、直訳としては「暗号通貨」であるが、日本語では「仮想通貨」という名称がより一般的名称として広まっているようなので、以下、本稿でも仮想通貨と呼ぶ。
「Chia」という名前は、栄養豊富なスーパーフードのチアシード(Chia seeds)から名付けられているらしい。Chiaが中国の仮想通貨というネットニュース記事も存在した。確かにChinaとスペルが似ているが、Chiaはサンフランシスコ拠点のアメリカの会社なので、「中国の仮想通貨」という説明は誤報と思われる。Chiaと中国は直接の関係は無い。ただし、仮想通貨マイニングは中国で流行っているので、中国でもChiaは注目されているようだ。
Photo by Nataliya Vaitkevich from Pexels
Chiaのホームページ
地球環境に優しい仮想通貨
Chiaは、ビットコイン(Bitcoin)等の既存の仮想通貨とは性質が異なり、緑色植物の葉がアイコンとなっていることからも推測出来るように、地球環境に優しい仮想通貨という点を特長としている。
既存のビットコイン等の仮想通貨は、Proof-of-work(仕事(計算)で価値を担保する)という仕組みで、仮想通貨の価値の源泉は計算量であり、「(計算量)=(単位時間あたりの計算量)X(計算時間)」という関係があるが、コンピュータで計算をするには電力が必要であるため、計算量はすなわち電力量と言い換えられる。電力あたりの計算量はハードウェアの計算効率や、ソフトウェア(アルゴリズム)の計算効率によって増減するが、電力量に一定の変換係数を掛けて仮想通貨に変換していることになる。仮想通貨を採掘(マイニング(mining))するということは、電力を仮想通貨に変換していることに他ならない。昔、金(Gold)が通貨価値の根拠であった時代があったが、仮想通貨は、文字通りコンピュータを道具に使った採掘である。また、仮想通貨の取引を行う場合にも、取引の正当性を検証するために計算が必要となり、仮想通貨の取引量が増えると、世界中の電力消費量が増えることになり、昨今の省エネルギーへの取り組みと矛盾する話となる他、取引量の上限が世界の電力量で頭打ちすることになる。経済規模に上限が出来てしまい、仮想通貨では経済成長が一定規模以上出来ないことになってしまう。この辺りは取引に用いられるサブ仮想通貨のEthereum(イーサリアム)では課題と捉え、Proof-of-stakeという改良された仕組みへ移行する計画があるようだが、本稿ではひとまず省略する。
一方、ChiaはProof-of-spaceという仕組みで価値を担保しており、データ規模(=ストレージ容量)が通貨の量を決める。データサイズを拡大するには一定の時間が掛かり、無限には大きくならないという性質を利用し、通貨価値を作るという仕組みである。ちょうど農業で農作物の収穫量が耕作面積によって決まるのと同じであり、実際にChiaでの「マイニング」プロセスは農業をモチーフにした名称を付けており、Chiaではマイニングではなく、「ファーミング(farming)」と呼ぶ。また、Chiaを産み出す人は、Minerではなく、「ファーマー(Farmer)」と呼ぶ。ストレージ容量が耕作面積であるため、ファーマーは、ストレージ容量(=Chiaという農作物の作付け面積)に相当するHDDやSSDをいかに大容量かつ大規模に確保するかという、ファーミングの作付け面積拡大に努めることとなる。(実際のファーミング方法や必要機材については、次回記事にて説明する)
Chiaについて詳しく知るため、Chiaの公式サイトでの発表文の引用に加え、和訳と解説を行う。
Mainnet(メインネット)のリリース
Mainnet Release
We believe that cryptocurrency should be easier to use than cash, harder to lose, and nearly impossible to steal. Anyone who wants to validate transactions should be able to farm without single-use hardware or a big electricity bill.
Mainnetは、米国時間2021年3月19日にリリースされたChiaのネットワークであり、現在、Mainnetに参加してFarmingすることで報酬として、Chiaの通貨であるChiaコイン(略称:XCH)を獲得することができる。(後述するが、Chiaコインの取引は本項執筆時点(アメリカ時間2021年4月25日現在)、まだ始まっておらず、本項執筆時点の1週間後、2021年5月3日から取引開始ということになっている)
以下、Mainnetのリリースにあたっての宣言文である。
「我々は、暗号通貨(仮想通貨)は現金よりも簡単に使え、より紛失しにくく、盗むことが不可能に近いものであるべきと信じている。取引の検証をしようとする誰もが、特定の目的に作られたハードウェアや大量の電気代を必要とすることなく、「ファーム」可能であるべきである。」
On February 9th we released our Business Whitepaper and mainnet launched for farming rewards on Friday March 19, 2021. Transactions will be enabled on May 3, 2021 around 10AM PDT. You may also be interested in our new consensus working document which was implemented first in Beta 19 on January 12, 2021.
「2月9日(2021年)、我々はビジネスホワイトペーパーをリリースし、2021年3月19日にファーミングに対する報酬を行うMainnetを開始した。取引は、2021年5月3日午前10時PDT(アメリカ西海岸(夏)時間)に可能となる。関心があれば、2021年1月12日にBeta19として初めて実装された新しいコンセンサスに関する作成中のドキュメントを参照してほしい。」
Chia Network develops a blockchain and smart transaction platform created by the inventor of BitTorrent, Bram Cohen. It implements the first new Nakamoto consensus algorithm since Bitcoin in 2008. Proofs of Space and Time replace energy intensive “proofs of work.”
ブロックチェーンやスマートトランザクション(取引)プラットフォームを開発するChia Networkは、BitTorrentの発明者であるBram Cohenによって設立された。Chia Networkは、2008年のビットコイン以来初めて、新たなナカモトコンセンサスアルゴリズムを実装する。Proof-of-Space and Time(空間と時間による担保)は、電力中心の「Proof-of-work」を置き換える。
Chialisp is Chia’s new on chain programming language that is powerful, easy to audit, and secure. It will make cryptocurrency easier to use than cash or credit. Reference smart transactions currently available are: atomic swaps, authorized payees, recoverable wallets, multisig wallets, rate-limited wallets, and Coloured coins. Bram introduces Chialisp on our blog.
Chialispは、Chiaのチェーンプログラミング言語であり、強力で、監査が容易、そして、セキュア(安全性が高い)である。同言語は、現金やクレジット(カードによる取引)よりも仮想通貨の使用を簡単にする。参照可能なスマートトランザクションで現在利用可能なものは:atomic swaps, authorized payees, recoverable wallets, multisig wallets, rate-limited wallets, Coloured coins である。Bram氏は、Chialispをブログで紹介している。
You should review the release notes and then install Chia blockchain.
リリースノートを参照し、Chiaブロックチェーンをインストールしてほしい。
(次回記事予告)Chiaのファーミングに必要な機材と方法とは
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?