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採用担当から労務担当になって1年半たつのでその面白さを書いてみる
こんにちは!ウィルゲート労務の伊藤(@itochan_315)と申します。
自社で労務担当になって1年半が経った最近、
・労務担当になる前と後で労務の印象が変わった(良い意味で)
・労務に関する情報はまだまだ巷で少なく、そもそも労務キャリアを考える機会があまりない
と感じています。そこで、私がこの(短い)1年半の経験を経て考えた労務についてのあれこれを、自分の思考の整理も兼ねてまとめてみます。
■前提①:自己紹介(飛ばしていただいて構いません!)
私の経歴をざっくり記載すると以下の通りです。
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●2015年4月~@大手自動車部品メーカー
:調達部門での半導体部品の価格交渉/サプライチェーン管理など
●2017年3月~@ウィルゲート(ITベンチャー) ※人事として入社
:新卒採用担当(~2018年12月)
:中途採用・労務担当(2019年1月~)
※上記は主担当であり、上記以外にも組織活性化施策や
評価関連実務の経験など人事領域の実務は広く浅く経験してきました。
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大手メーカーの調達部門からITベンチャーに飛び込み、主に採用担当を経てから労務を兼務するようになりました。そしてそのようなキャリアを経験する中で感じたことは、労務を担当する前に他の人事領域(採用/組織活性化/評価関連)の実務を広く経験してきたことは、自分の労務キャリアにも活きた点が非常に多かったということ、またそれと同時に、労務を担当したことで他の人事領域への理解が更に深まったということです。(詳しくは後述します)
■前提②:弊社の労務体制と私の担当業務
こちらもざっくり説明すると、以下の通りです。
※体制をあえて記載したのは、会社規模によって労務の担当範囲や業務の進め方が異なることが多いためです。
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・従業員規模:150名程度
・労務業務の外注:あり
・業務内容
:勤怠管理
給与計算データ作成(計算は社労士の先生に外注)
社保等の手続き対応(情報連携のみで手続きは社労士の先生に外注)
住民税の切り替え
年次有給休暇&特別休暇等の管理
組織図作成
毎年発生する行政対応(健康診断/ストレスチェックなどなど)
その他、社内労務対応など
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上記の内容は、弊社と同規模の会社であればほとんど変わらないのではないかと思います。これら業務を私が主担当として、顧問の社労士の先生に相談しながら、日々進めています。
■労務担当になる前の労務のイメージ
このようなことを申し上げるのは、労務領域の皆様に失礼かもしれませんが、正直に申し上げますと、
・全体的に細かい業務が多そうで、自分には向いていなさそう...
・紙でのやりとりが多そうで、作業にめちゃくちゃ時間取られそう...
・というか、そもそも何をやっているのかがよくわからならない...
など、正直、ワクワク感というよりは、「自分にはできるのだろうか...」という漠然とした不安感に近いような感覚を抱いていたことを覚えています。そして実際に経験した今、当時の印象と間違っていない部分が少なからずあるのは否定できないですが(笑)、ただ、間違いなく当時は知らなかった気づきが多々ありました。そして結論として、本当に労務の仕事を担当できてよかったと思っています。
以下に、実際に労務業務を行ってきたなかで感じたその面白さについて、いくつか書いてみようと思います。
■労務担当になった今感じる労務の面白いところ
①労務ならではの「明確なルール」を前提とした議論が求められる
これは、響きだけ聞くと当たり前だと思うかもしれませんが、それまでの私は、どこか無意識的に人事の業務を定性的に捉えてしまっていることがありました。
しかし労務に関していえば、明確にルールとして存在するものがいくつもあるので、他の人事領域と比較して「知らないと議論にもならない」ということが多く、その分議論や施策策定の具体性が大きい印象です。
例えば、労務では以下のような「従わなければならないルール」があります。
・そもそも、36協定の締結/届出をしなければ時間外労働/休日労働は認められない
・年次年次有給休暇の最低限の付与日数は法律で決まっている
・フレックスタイム制の導入には、就業規則等への規定と労使協定の締結が必要
あくまで上記は一例ですが、お恥ずかしいことに、最初はこういった初歩的な内容に関しても、ルールを正しく明確に理解ができておらず、自信がない状態でした。しかし労務では、このようなルールがある以上、会社側が勝手に残業をさせたり、有給休暇の付与日数を恣意的に取り決めたり、何の手続きも踏まずに「明日からフレックスタイム制で!」といったことはできないわけです。また、会社のルールとしては就業規則がベースになるため、就業規則に記載されていないものはルールとして認めてないという判断にもなります。
このように労務では、他の人事領域と違って「絶対に守らないといけないルール」が存在するので、それを理解した上で、会社が実現したいことをどのように施策に落とし込むか、という思考アプローチが求められます。そのため、いかに労務にまつわる原理原則を「理解しているか」が重要であり、逆に言うとそれができれば、論点を明確にして議論ができます。
一方で、単に原理原則を知っていればよいかというと、決してそうではありません。労務的な問題は、常に全く同じ問題というわけではないので、対応方法はケース・バイ・ケースです。
また、一定の原理原則はあっても、実情上に即して定性的な判断も時に求められることもあるため、やればやるほど奥が深く、そして実は非常に人情味のある領域だと感じています。
②労務の経験は他の人事領域にも非常に役立つ
労務業務を通じて、会社の人事領域の全体像が見えてきた感覚があります。なぜかと申しますと、実際に他の人事領域と労務は繋がっていることが多いためです。
例を挙げてみますと・・・
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・採用:入社手続き
→労働条件通知や雇用契約の締結にあたっての内容確認や手続きは労務で担当します。
・制度:「テレワークを導入したい!」「その場合、交通費を実費支給にしたい!」
→まさに直近でもこのような議論をされている会社さんも多いかと思いますが、実際に制度の概要が決まった時のを就業規則への明記や、勤怠システムの設定の修正、新ルールの作成&周知などは労務で担当します。
・活性化施策:「社内表彰を受けた社員にインセンティブを支給したい!」
→定期的に社内で表彰式を開催する会社さんも多いかと思いますが、このように「●●費を支給したい!」という内容は、最終的に給与計算に関係してくるため、その費用をどのような形で支給すべきかを検討するのは労務で担当します。
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といったことが挙げられ、これらは弊社に限らず他の会社さんでもよくあることだと思います。
このように、各領域との関わりを通じて、会社の施策が最終的にどのような形で社員に提供されているのかを身をもって実感することができるようになりました。
また、労務担当として意識していることは、「いかに相手の意図を汲み取り、バランスの良いところで着地させるか」です。労務が扱う範囲は全社に影響するものがほとんどなため、経営陣と議論を交わす機会も多いです。
労務として求められていることは「やりたいことの実現&リスク回避」だと理解しているので、いかにそれを一番よい形で着地させるためにも、常に相手の立場に立ちながら、広い視野で見渡すことを意識するようになりました。少なくとも、労務を担当した1年半で自分の視座が非常に上がったことを実感しています。
③超絶アナログな領域だからこそ、開拓余地がありすぎる
最近の労務界隈のトレンドとして、昨今のコロナも相まって、「ペーパーレス化」や「業務効率化」がホットかと思います。
弊社の労務業務も、従来は紙中心に行っていただけでなく、労務部門の体制も整っていなかったので、生産性という点では非常に低かったです。特に紙中心という点では「入退社手続き」「年末調整」「行政対応」いずれをとっても、各社の労務担当者さんにとっても、長らく大きな課題感を持たれてきた部分ではないでしょうか。
しかしながら、最近はこれらの課題を解決できるようなツールも出てきており、労務の現場業務は、とても著しいスピードで業務効率が進み始めています。(弊社も昨年度にSmartHRを導入しましたが、それによってとんでもなく業務が楽になりました。その内容はこちらに書かせていただきました。)
【人事労務を通じて社会を少しでもよりよく】
— 伊藤ちゃん@人事と労務ときどきサウナ (@itochan_315) June 26, 2020
"労務の進歩は、日本の働き方の進歩"
そんなことを想いながら、日々コツコツやらせていただています。
労務領域における、
"生産性"や"クリエイティビティ"を追求したいです。
そんな私の人事労務に対する想いを綴っています。https://t.co/NpbQ1hibae
このようにいまはまさに、労務領域が大きく変わり始めている時期だと思います。それまで大きな変化が起こりづらかった領域だからこそ、変化を起こせる範囲が非常に広く、たくさんの「チャンス」が転がっているような気がしています。
そして、チャンスを活かして業務効率化できた分だけ、経営に与えるインパクトも大きいと感じます。効率化によって新たに生まれた時間で、従業員がより働きやすくなるための議論を検討できれば、会社はもっと魅力的な場所にできると思っています。
■最後に:労務が強くなれば、日本企業はもっと強くなれる
長々と記載してしまいましたが、今回のnoteを書こうと思ったのは、「巷に労務に関する情報が少ないのでは」と感じたことがきっかけでした。
私自身、労務を経験したことによって自身の成長を非常に実感しましたし、こんなにやりがいのある仕事はないのでは、と思っています。だからこそ、これから大きく変わっていくことが求められる労務領域において、少しでも情報の発信が増え、各社がそれらを取り入れることで、労務業界の底上げがなされるようになるといいなと思い、僭越ながら、今回のnoteを書かせていただきました。
この文章を読んで、少しでも労務に興味をもってくださる方が増えたり、同じように労務をがんばる人による情報発信が増えたりしたら幸いです。
お読みいただき、ありがとうございました。