ダイハツの第三者委員会調査結果を読んで
2シーター軽オープンカー「ダイハツコペン」を愛車としている者として、ダイハツの第三者委員会調査結果は気になる気になる
愛車コペンに関係するトコ抜き出して見たら結構面白いし、開発スピードを求められるばっかりに、現場の混乱が手に取るように見える。
コペンに関する虚偽記載などの不正内容
①P50:車体番号の虚偽記載
歩行者の頭と足の保護試験を確認試作車でやったけど、その後設計変更無かったんで、認証試作車で実施した体で番号を流用した。
②P51:左右対称位置打点の試験結果の流用
車両の構造上、安全性に差異がないので、決められた測定点ではない左右対称位置にある別の打点の試験結果を流用した。
③P52:インパクタ衝突角度の虚偽記載
インパクタ衝突時の3つの角度誤差の測定が基準だけど、最も特徴的な1つが公差内に収まってたので大丈夫と考えて、3つ測定したって書いた。
④P53:試験速度の改ざん
衝突実験の速度が法規より速くなったけど、速くて安全なら良いし、速くなった理由説明するの面倒なんで、法規速度で実験したって書いた。
⑤P74:騒音の試験結果の虚偽記載
コペンは2本出しマフラーなのに、1本だけ測定して、もう1本は適当な数字を記入した。
⑥P80:後軸重量の虚偽記載
法規上は後軸450kgに達する重量であれば問題ないのに、451kgだったので、焦って450kgと書いた。
⑦P80:積算走行距離の虚偽記載
ヘッドランプの照射光線の垂直傾斜試験には、一定の距離走ってから測定しなきゃダメなのに、時間無いので走った風に誤魔化して書いた。
⑧P81:試験実施回数の虚偽記載
法規上必要な回数の試験してないのに、したって嘘を書いた。
⑨P84-85:確認結果の虚偽記載
試験車両に実験機器が載っていなくて試験できず、実験欄が斜線で記入されていたのに、OKと勘違いして適否欄に適印を記載した。
④なんて速くぶつかったからより安全じゃんって思うので、所有者としては安心だけど、この隠ぺいや虚偽を生んだ社風がヤバいよなって感じる。
不正発生の要因分析
報告書では、不正発生の直接的な要因や本件問題の真因が分かりやすく整理されている。
不正発生の要因分析等は、もうどこかで聞いたことがあるような話ばっかで、危機管理のお手本だなと思うので、以下に整理。
◆不正発生の直接的な要因
1. 過度にタイトで硬直的な開発スケジュールによる極度のプレッシャー
「短期開発」は、ダイハツの存在意義として開発部門の組織内で根付いたものであり、その結果、過度にタイトで硬直的な開発スケジュールの中で車両の開発が行われるようになった。
2. 現場任せで管理職が関与しない態勢
現場の担当者レベルで問題を抱え込まざるを得ない状況
「管理職は表向きは『何でも相談してくれ』というものの、実際に相談すると、『で?』と言われるだけで相談する意味が無く、問題点を報告しても『なんでそんな失敗したの』『どうするんだ』『間に合うのか』と詰問するだけで、親身になって建設的な意見を出してくれるわけではない」
3. ブラックボックス化した職場環境(チェック体制の不備等)
上司等によるチェック体制の不備や業務の属人化等に起因
実験報告書と試験成績書の整合性をチェックするという体制が存在せず、専門性の高さから属人化によりブラックボックス化した職場環境にあった。
4. 法規の不十分な理解
担当者の経験に委ねられていて属人化していた側面があるところ、2011年頃から人員削減が行われ、開発機種の数や日程の厳しさに対して人員が圧倒的に不足。
5. 現場担当者のコンプライアンス意識の希薄化、認証試験の軽視
認証申請書類に虚偽の情報や不正確な情報を記載してはならないというごく当たり前の感覚を失うほどコンプライアンス意識が希薄化。
6. 現場と管理職の断絶による通常のレポーティングラインの機能不全
現場と管理職との間に断絶ともいえる深い溝がある。
通常の指示系統が機能不全に陥っていた、フラット組織の弊害として管理職のテリトリーが広く部下に任せっぱなしとなっている。
7. 補完的なレポーティングラインである内部通報制度の運用の問題
内部通報しても、問題を矮小化し、あるいは通報者を捜して「村の調和」を乱した者として非難する行動に出る。
8. 開発・認証プロセスに対するモニタリングの問題
試験成績書と実験報告書の正確性の確認は安全性能担当部署に委ねられており、認証申請書類の正確性をチェックする体制が構築されていなかった。社内の監査においても発見・是正されなかった。
◆本件問題の真因
1. 不正対応の措置を講ずることなく短期開発を推進した経営の問題
「品質よりも日程・コストが優先している」と半ば諦めた指摘が多いのに、経営幹部は、不正行為の発生を想定しておらず、不正が発生する可能性を想定した未然防止や早期発見のための対策を何ら講ずることなく短期開発を推進した。
各部署が担当する工程を完璧に遂行すれば全体として最も効率的に組織運営ができるという「自工程完結」の考え方が根強く沁みついている。
2. ダイハツの開発部門の組織風土の問題
「自分や自工程さえよければよく、他人がどうであっても構わない」という自己中心的な風潮。
人事ローテーションが少なく、人事が固定化され、人事に関して目の前の人員不足に直面した各部門の要望が強く、中長期的な視点からの人材育成の施策が弱い。
他山の石としよう。
大企業も中小企業も同じだなと思うし、どんな組織でも陥りやすいヒントがたくさんあるような気がする。
工期厳守、業務過多などでの品質低下にプレッシャーを与えていないか?
担当者が問題を抱えていないか?コミュニケーションがとれているか?
業務・業種等の属人化が生じていないか?
人員不足を根性論で乗り切ろうとしていないか?
法規・基準の遵守、チェックの徹底などの意識が希薄化していないか?
上司が業務を管理できているか、担当任せになっていないか?
風通しの良い組織か?管理職に意見できる雰囲気か?
審査・照査が形骸化していないか?チェック機能は有効か?
経営陣は、現場の声を聞いて問題を予見し、未然防止や早期発見の対策を講じてくれますか?
部署間の壁は低いか?人材不足について中長期的な視点はあるか?
それ、ウチのことやんって感じてしまった。
ヤバいヤバい。