表現者たちの矜持
TIME
JIROが作るこのようなトーンの楽曲が実は好きだ。ロックをストレートに表現したライブでの起爆剤になるような楽曲も、明るさの中に泣きを引き出す切なポップも、今回の「THE GHOST」のような新たな境地を開いた楽曲も好きなのだが、「TIME」のようなどこかに救いどころはないのか?と最初に思ってしまうようなトーンの楽曲も好き。内面を表現することに向き合ったその過程すら、愛おしさを感じるから。
ただ、「TIME」について言えば、マイナー調の楽曲ではないし、アウトロの終わりには、明るい兆しのようなものが見えるように収束していく。だから、悶えて、もがいて、あがいて。。。ではあるけれど、絶望しか見えないのではなく、その時間の中で、自分なりに落とし所というか、完結させられる先が見つかったのではないかと思わせてくれる。落ち込んだ時に寄り添ってくれて、でも最後にはちゃんと希望に向かう道を見せてくれる、そんな楽曲なのだ。
歌詞も素朴で、難しい言葉を使うでもないため、自身の心情に真正面から向き合うことができる。そして、悶えても、もがいても、あがいても、そばに寄り添ってくれて、見守ってくれるような力強ささえも感じられる。
とは言え、ポジティブで明るさ満点の楽曲ではないので、とても繊細だ。何より、TERUの地声と裏声の間の声がギリギリ出てるか?出てないか?というラインで展開されているので、一種の息苦しさのようなものを感じる。呼吸をするのもまともにできないような感覚が、この声で表現されているから、渦中にいる自身と照らし合わせてしまう。ただ、ハイトーンの楽曲を少し苦しそうに歌うTERUの声は、なんとも神秘的だ。
そして、ギターの動き。メロディーにすっと乗っかるようなフレーズだと思ったら、さっとメロディーから離れたフレーズに移っていく。そして、ベースとなるリズムから、少しばかりテンポをずらして音を出す。このテンポのずれた感じが、楽曲の中に違和感を生み出し、歯車が合わないと感じる気持ちをうまく表現している。アウトロでドラムが裏を打つ箇所においても、同じ効果を齎していると思う。複雑さは表に見えないような演奏ではあるが、繊細な楽曲と歌詞を支えて、際立たせるため、今のような形にたどり着いたのではないかと思う。
そこにあるリアルと今向き合ってる
そう、私たちはリアルを生きている。