「マタハラ」があるなら「逆マタハラ」もある
きゅうり君が4年間正規職員として働いていた、障害者施設。26歳の時にマタハラを目撃・体験するも何も言えずにただの傍観者として、加害者となった。マタハラを体験したきゅうり君は翌年27歳にして今度は「逆マタハラ」を経験するのでした。
新しい配置で約半年が過ぎた。総務のおばさんらから「かき集め配置」と冗談半分で笑われ、陰で「本当に大丈夫」と心配を受けていた人事配置も板につき始めた。
フロアリーダーのライムさん、平職員のきゅうり君
新しく入ってくれたパートさん2人。
チュニックさん…福祉系大学を卒業後、障害者施設で正規職員として働いていた。義理の両親と同居の為引っ越し、子育てとの両立するために、パートとして働く30代女性。
竹子さん…福祉系大学を卒業後、病院で勤務をしていたらしい。結婚後3人の男の子に恵まれしばらくは専業主婦。一番下の子が保育園に通えるようになったため、時短パートとして働く30代女性
楽しく落ち着く職場
新人パートさんもおひとりで、内職を下さる企業様に出向くことに慣れてきて、バナナ統括施設長はあまりきゅうり君のフロアには来なくなった。その分きゅうり君がもともといたフロアにヘルプに行くようになっていた。きゅうり君は良くも悪くも人の心が読める。そのため、雪だるま主任や戸田副主任が苦手な、内職の伝票や3年に1度の行われる第三者評価委員会の監査準備など、をコツコツと行っていたのである。きゅうり君には新しいフロアで同じことをしなければいけないので、そちらに集中。
その分バナナ統括施設長がきゅうり君の穴埋めをするというよくわからないことになっていた。
きゅうり君の新しい職場は心地がよかった。管理職員が所属していないフロアであった為、配置図的には職員4人で30人の利用者さん担当する事となる。以前のフロアは管理職員込みで職員8人(内2人は週3パート)で40人の利用者さんを担当していた。一見すると管理職員込みで8人の方が人では潤沢のように思うが、会議などで抜けることが多かったので、現場は4,5人で回していた。管理職員がいないと緊急時の判断など不安なこともあるが、いざとなれば内線電話もある。しょっちゅう抜ける管理職員よりも、常にいるパートさんの方がとても頼りになる。
そして何よりも、タイムさん、きゅうり君、チュニックさん、竹子さんの相性がとてもよく、利用者さんが帰られた後職員は事務仕事や翌日準備をするのだが、自宅での出来事やお子さんの事を話しながら、笑顔でPC作業をできることが本当に楽しかった。
当時の悩みは、リーダーのライムさんときゅうり君に似すぎてしまっていた事ぐらいだろうか(笑)。後ろ姿も似ていて、職員から呼ばれる際に間違えられる。内線電話を担当フロア名だけ名乗ると、ライムさんなのかきゅうり君なのかわからず、戸田副主任に叱られそれ以降、内線電話であってもきゅうり君の所属するフロアに関しては「(フロア名)のきゅうり君です」と内線電話に出なければいけない決まりを作ってしまった(笑)
きゅうり君クレームを受ける
新しいフロアでの仕事も半年が過ぎ、落ち着いてきた。少ない職員人数で1日の仕事をするとなると、どうしてもご利用者さまのスピードよりも職員のペースで仕事をしてしまう事があった。もちろんダメな事ではあるが、対人関係の職場ではよくある事ではある。戸田副主任に、「きゅうり君は夏休みの宿題をせかすお母さん」みたいと言われたことがある。内職を行っている職場なので、どうしても納期がある為、期日を気にしていたのは事実である。しかし、受注を受けてから納期まで1週間以上あるものの納期をしっかりと覚えていたのが、きゅうり君だけというとてもびっくりな出来事もあったのだ。そのため、利用者さんからのクレームが入るまできゅうり君のストップママ譲りの「世話焼きママ」的性格は目をつぶってもらっていた。
しかし、利用者さんからきゅうり君へのクレームが入る。内容はご利用者さまと話している時よりも、職員間で話している時の方が笑顔が素敵というものであった。
定時で上がろうとしていた時、きゅうり君は、松崎施設長、雪だるま主任。戸田副主任に呼び止められる。約1時間の面談が始まった。最初の30分はきゅうり君は納得して注意を聞いていた。ライムリーダーよりも目立っている事。お客様である利用者さんのペースに合わせて仕事をするべきだ。仰るとおりである。もちろん素直に翌日「きゅうり君の接遇改善書」を書き、半年後再度提出するように命じられた。半年後覚えても居なかったのはショックであったが。
面談の残り30分は戸田副主任の感情論になってしまった。「私の産休代替えも決まっていない中、何やってんの」「いつも思っていたんだけど私たちの事信用してないでしょ」「きゅうり君を、見ていると全部一人で抱え込んで」…きゅうり君は少し泣いてしまった。
言葉が怖かったわけではない。戸田副主任が言ったセリフすべてに反論することが出来たのに言えない自分が恥ずかしかったのだ。
具体的には、産休に入る戸田副主任一番忙しい時期にクレームを起こしてしまった事は当然申し訳ないが、産休代替えを探すのはきゅうり君の仕事ではない。私たちの事信用していないというが、後に話すが戸田副主任が妊娠した時きゅうり君だけ、本人から教えてもらっていないのである。そして、全部一人で抱え込んでというが、そんなつもりはない。仕事の伝票なども戸田副主任がきゅうり君に教えてくれたこと。しかしながら新人のきゅうり君に教えた後戸田副主任は伝票の書き方を忘れてしまい、代わりに僕がやりますよと言ったら、そこからフロアを変わってもきゅうり君が行っていただけである。
きゅうり君は自分の心を守る為に、最初の30分は真摯に受け止めクレーム及び接遇改善書を書くために勤め。後半30分は戸田副主任の愚痴を聞いたのだと言い聞かせた。
リーダー会議でイラつくライムさん
先ほども書いたが、きゅうり君は戸田副主任からご懐妊報告を直接は聞いていない。職員会議での発表を連絡網方式で聞いたのである。
しかしながら、きゅうり君は他の誰よりも先に戸田副主任の妊娠に気が付いていた。親戚家族ともに女性が多かった事・「俺らに子供が出来たら、どんな子かな」が結果的にプロポーズだったとノロケ話を聞いたとき・そして、何よりも、戸田副主任が白のチュニックで仕事をしてエプロンをしていなく、チークをいつもよりも多く塗っていたのである。エプロンは制服では私物を使用するので、つける付けないは個人の自由である。しかしながら、常にエプロンをしていた戸田副主任、つけていないのは異常に感じたのである。
きゅうり君はライムリーダーから鎌をかけられる。
ライムさん「戸田副主任から何か聞いていない?」
きゅうり君「特に何も聞いてませんが。。。」
ライムさん「本当に。。」
きゅうり君「リーダー会議、何話されたんですか?」
ライムさん固まる。「いや、戸田副主任の件とか、求人とか」
きゅうり君「戸田副主任、おめでたですよね」
ライムさん「何で知っているの?、リーダー会議で戸田副主任から報告があって職員会議でみんなに一斉に報告する前に、きゅうり君には絶対に迷惑かけるから、自分から直接言ってほしいとお願いしたの。でも聞いてないんだね」
きゅうり君は、「戸田副主任が自ら話さない選択をされたわけですから、そこは気にしません。僕は部下ですから。戸田副主任の妊娠は僕以外でも気づくと思いますよ、チークや白のチュニックとか着てたし」
ライムさんとは腹を割って話せる仲だったので、えりか先輩の話をした。もちろんライムさんも大体の内容は知っていたようだ。今回報告を頂けないのは寂しいが、戸田副主任は雪だるま主任と妊娠は順番・嘘つきと言っていた人だから、自分の口から言うのはプライドが許さないと思うと伝えた。事実、桜井さんの育休が終わっていないのに、自分が産休に入るなんて言いづらいですよ。きっと。きゅうり君はライムさんと話しながら自分に言い聞かせた。きっと、あの時の事を悔いているから、きっと言いだしにくいだけ、きっと、職員会議の前には教えてくれる。
だって、トトロ相談員に目をつけられていた時に助けてくれたもん。
今文章を書いていて思う。語尾がまるで子供。一度信じた人はきっと裏切らない。僕のことを傷付けないと信じているだと。
「次はお前かって思ったでしょ」by戸田副主任
職員会議での発表後、きゅうり君は個別で戸田副主任におめでとうございますと伝えに言った。フロアが違うと中々ある機会は少ないので、お昼の時間食堂であった時に伝えた。食堂は利用者さんも使うので、大きな声でおめでとうございますと言えないため。きゅうり君は「会議の話聞きました、おめでとうございます」と伝えた。
戸田副主任が当時どんな気持ちかで答えたかはわからないが、満面の笑み(きっと照れ隠しだと信じているが)「次はお前かと思ったでしょ、忙しいときに(笑)」と言われた時に、きゅうり君はフリーズした。一瞬でも「ありがとう」とか「迷惑かけるけど、よろしくね」と期待した自分がバカだった。戸田副主任は自分のお弁当を取り、利用者さんと食事をしていた。きゅうり君も、戸田副主任から離れたところで食事をした。
きゅうり君はゲイで子供がいる未来なんて想像もしていない。だからこそ、自分には叶えられない未来に向かっている人を応援したかった。決して去年の事を蒸し返すつもりなんてなかった。
でも、リーダー会議でイラつくライムさんと一緒に、「桜井さんが復帰予定は〇月、戸田副主任が今〇か月だから、妊娠は順番かぶってはいけない。とか言っておきながら、被っているね。」「人に言っておきながら自分が妊娠するのは良いんだ」と一緒に陰口を言って心を落ち着かせていた自分もいた。今思うと、きゅうり君の為に、陰口を言っていいんだよと教えてくれたのだと思う。ライムさんはことある事にきゅうり君の真面目さを心配してくれていたから。
嫌いな人に嫌われるより、今まで仲良しだと思っていた人に相手にされない方が悲しいbyきゅうり君
戸田副主任が産休に入るときに、僕はこのままの関係性では嫌だったので、自分の名前を付けてくれた神社の安産祈願のお守りを戸田副主任に渡すことにした。でも、最後の勇気が出なかったきゅうり君はライムさんとチュニックさんに「男の僕は渡してもセクハラにならないか」質問した。
ライムさんは「そんなんでなんか言われたら、そんな奴だったと次こそは思えばいいんじゃない」、チュニックさんは「セクハラにならないし、そもそも、こんだけやられてきゅうり君優しすぎる」と言われた。
産休に入る前日、ロッカーの前で無事に渡すことが出来た。木箱に入ったお守りを見て、「なんかすごい子生まれそう」と戸田副主任の笑顔が見れたのは嬉しかった。
もともと、僕の教育担当だった戸田副主任。嫌いな人に嫌われるよりも、今まで仲良しだと思っていた人に相手にされない方が悲しいと思った出来事でした。きゅうり君はその後、戸田副主任が産休開ける前に会社を辞めてしまった。
noteでは僕「きゅうり君」の17歳からの27歳までの恋愛と、
27歳から29歳までのリアルな恋愛は諦めて腐男子として生きている等身大の自分を日記を公開しようと思っております