私的デジタル教材開発史(4) 牧野日本植物図鑑[PDF版]
37mm✕55mmに描かれた美の世界
37mm✕55mmに植物を描ききる、そして、一点々々すべてが美しい。
多くの方々にこの世界を共有していただきたい、そんな思いからフリーウェアの電子書籍化に取り組んだ。
牧野日本植物図鑑の概要
牧野日本植物図鑑は携帯性を重んじたA5判サイズの本である。そこに3206図とその解説文を、1ページに3点ずつ同じ大きさに収録してあり、本文だけで1,070ページに及ぶ。
植物図は精細に描かれている。解説文の長さは植物によって異なり長文は小さな活字を使って詰め込んである。
初版発行は物資が乏しくなり始めた昭和15年、精細な図版は凸版印刷のためにインク詰まりが見受けられる。(原図を保管している北隆館には今の印刷技術で再編集して発行してもらいたい)
電子書籍の種類と主なリーダー
テキストが選択できる。
現在はWebブラウザーがPDFに対応しているために特別のリーダーを必要としない。
ePUB3
電子書籍の主要フォーマットの1つであるePUBは2011年にePUB3になった。これまでのリフローレイアウトに固定レイアウトが加わり、縦書き、ルビなどの日本語特有の規格も定められた。
ePUBリフローレイアウトは、テキストの拡大縮小、モノクロ反転、ルビの付加、リンク情報の埋め込みなどができる。
ePUB固定レイアウトは本テキストの選択ができて、インタラクティブな操作(webへのリンク、動画の埋め込みなど)が可能です。しかし、漫画のように紙面を画像にすることの方が多い現状です。
Kindle
2012年に、アマゾンが日本でKindleストアを開設した。
Kindle本はePUB3の規格による電子書籍です。
Apple Books
Apple Booksは2010年にiBooksとして発表され、Authorが提供された。iBooks対応の「教科書」の編集、制作、登録が可能でした。Authorは現在は有償化されている。
Apple Booksには、ePUB、PDFの登録が可能です。
Lentrance
現在は検定教科書向けに特化しているePUB3リーダー。リフローと固定のハイブリッド型といわれている。標準のePUB固定レイアウトのリーダーとして利用できる。
電子化のための紙面づくり
プリンター複合機で600DPIでスキャンすると、紙面は日焼けと裏抜けでご覧のとおりの状態
この状態からフォトショップで紙面の墨色のみを抜き出す作業にとりかかり、試行錯誤の結果、色選択→選択範囲反転→墨色以外を削除することにより綺麗な紙面をつくることができた。
Adobeインデザインによる電子化
書籍制作のためのDTPソフトとして圧倒的なシェアをもつAdobeインデザインは印刷用のPDFを出力するためのアプリケーションですが、ePUB出力にも対応しています。
牧野日本植物図鑑は、当初、ePUB版をつくるためにインデザインで組み立てを始めた。(インタラクティブPDFを出力できるとは知らなかった)
インタラクティブ機能を活かすための柱、脚注
テキスト検索が可能となるように、図鑑で使われている旧仮名遣いの植物名を柱にし、新仮名遣いの植物名を脚注につけた。
新仮名遣いの植物名は、高知県立牧野植物園の「牧野日本植物図鑑インターネット版」を参考にさせていただいた。
さくいんの作り変え
植物名3,206個で構成される原本のさくいんページは21ページになる。
検索可能になるように新たにさくいんをつくるとなると、従来の製作作業・・・用語とページ数をエクセルに書き込んでソートする・・・では気が遠くなる。
インデザインは便利な機能を提供している。
対象用語(植物名)をさくいん対象として個々に指定していくだけで、索引データを書き出してくれる。
そのうえ、インタラクティブで出力すると、さくいんのページ番号をクリックすると該当ページに移動することができる。
Apple Booksに登録
2007年9月に当時のiBooksに登録した。無料です。
一般的な書籍と異なり、1070ページの図鑑は重たくて読み込みにも時間がかかり、テキスト検索をするとアプリが落ちました。(最近は試していない)
Wndows版ePUBビューワSAIBOKUの開発と登録
2015年に、Windows版ePUBビューワSAIBOKUをKANAEプロジェクトと共同開発をして、牧野日本植物図鑑をフリーウェアとして登録しました。
検索をしても、iBooksのようにアプリが落ちることはありません。
メモ、マーカー機能があります。
PDF版の公開
ePUB版は専用のビューワが必要で、ビューワによっては使い勝手が悪い。一般的に利用していただくにはWebブラウザで閲覧可能なPDFにするしかない。
インデザインでインタラクティブPDFを出力して、イーテキスト研究所のサイトでPDF版の公開をした。多くの方にダウンロードしていただき広く活用されることを願っています。
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