逆起電力による速度測定
永久磁石を使用した直流電動機をPWM制御すると,電源からの電流を切っている時に電動機から電源に対して逆電流が流れます。永久磁石の傍をコイルが通過するので,コイルに誘導電流が流れるからですね。これを逆起電力 (Back electromotive force; Back EMF / Counter-electromotive force; CEMF) 又は誘導起電力と呼びます。
逆起電力は電動機の回転が速くなるほど大きくなりますから,逆起電力によって発生する電圧(誘起電圧)を測定すると電動機の回転数を知る事ができます。回転数と速度の関係を予め求めておけば,誘起電圧を測定する事で走行速度を求めることができますね。そこで,どのぐらいの誘起電圧が発生するのか実験してみました。
これはモータードライバーIC (LV8548MC) を使った時のPWM波形です。青線は制御信号,赤線が電動機の電源電圧波形です。ローサイドで測定しているので信号が 'H' の時に0V,信号が 'L' の時に12Vとなっています。そしてご覧の通り,きれいなパルスになっており誘起電圧が発生していません。モータードライバーICが逆起電力を吸収しているのですね。これでは測定が困難です。
次にトランジスタ (TPC8408) で実験してみました。今度はハイサイドの測定です。波形の前半部分は誘起電圧を測定しやすいよう,パルスを出さない時間を設けたものです。回転数に応じた誘起電圧が発生しています。ただ,アンダーシュートが大きいのが難点です。誘起電圧を吸収できていないのでアンダーシュートが発生するのは当然なのですが。
最後はMOSFET (BS170, ZVP2106A) です。誘起電圧が測定でき,アンダーシュートもそれほど大きくないですが,応答が遅いのが難点です。
誘起電圧測定の為の時間を設けると,その時間にもよりますが滑らかな回転ができなくなります。低速時は特に影響が大きいです。そして,オーバーシュート・アンダーシュートは回路に損傷を与える可能性があるのでできるだけ抑えたいところです。不要電磁放射も発生している可能性が高く,電波法に違反するかもしれません。モータードライバーICは,過昇温保護・過電流保護等の保護機能があるので安心です。保護回路が働くと電動機を止めてしまうのですが。
結局,モータードライバーICは使いたいので誘起電圧による速度計測は諦めることにして,磁石を使った速度計測を試してみます。