[聴覚心理]院試備忘録6.聴覚中枢系と神経伝導路
5-1.キーワード
求心性(上行性)伝導路,遠心性(下行性)伝導路
蝸牛神経核,オリーブ核群(上オリーブ複合体),外側毛帯,下丘,内側膝状体,聴覚皮質,機能地図(トノトピー)
5-2.全体の構造
まずは図を見ていただきたいです。
[山下敏夫, et al. (1998), 聴覚系における神経伝達]より
蝸牛から(1次)聴神経を通ってきた電気信号はこのように脳まで送られます。
大脳聴覚野までの器官を神経核といい、末端から蝸牛神経核、オリーブ核群(上オリーブ複合体),外側毛帯,下丘,内側膝状体があります。
それぞれの機能は次のようになっています。
ⅰ蝸牛神経核(CN, cochlear nucleus)
聴覚中枢系の第一中継核は蝸牛神経核です。
ニューロンの種類の違いから3つに分類でき、次のようになっています。
前服側核(AVCN:anteroventral CN),後腹側核(PVCN:posterorvental CN),背側核(DCN:dorsal CN)があります。
それぞれの領域で細胞の形状や音刺激に対する応答パターンも異なる。
特にDCNでは2章で述べた音源定位の上下方向の処理が行われます。
つまり頭部伝達関数(HRTF)のスペクトル情報が蝸牛神経核背側核(DCN)で処理されます。
水平方向のITDとILDは次のオリーブ核群で処理されます。
ⅱオリーブ核群(上オリーブ複合体)(SOC, superior olivary complex)
蝸牛神経核の次にあるのがオリーブ核群です。
オリーブ核群は外側核、内側核、台形体内側核などからなります。
働きとしては特に両耳間時間差(ITD)と両耳間レベル差(ILD)が処理されます
ⅲ外側毛帯(NLL, nucleus of lateral lemniscus)
音の検出や音響驚愕反応などに関係していると考えられています。
しかし特にヒトにおいては神経核自体が明確ではありません。
補足としてイルカやコウモリといったエコー音を使って周りの認識をする動物ではよく発達しています。
ⅳ下丘(IC, inferior colliculus)
機能によって3つの領域に分けられています。
機能としては1つめに、両耳から入ってきた情報がここで初めて統合されます。
2つめに聴覚以外の感覚との情報が処理されます。
ⅴ内側膝状体(MGB, medial geniculate body)
主として大脳の聴覚皮質との中継をしています。
ここで中継の意味とは末端から来る情報と、大脳から来る情報を両方適切な部分に送っています。
この、末端から来る情報を求心性の情報といい、大脳から来る情報を遠心性といいます。
5-3.整理
だいぶ込み入った話になってしまいました。
ここで重要なのは
1.多段・並列処理
末端⇔中枢で順番に処理されていく(多段)処理と、一つの器官で末端から来る情報と中枢から来る情報両方(並列)処理するということ
2.周波数局在
それぞれの器官を分割すると、周波数に対して反応する部分が異なること
3.遠心性・求心性経路
末端から来る情報の流れと、大脳から来る情報の流れがあるということ
4.音源定位、周波数分析、他の知覚(視覚など)と聴覚情報が統合されるという機能があるということ
以上の4つです。
このエリアに関してはフロンティアな部分も多く、聴覚の生理を考えるときには聴覚中枢系の機能を明らかにする必要がありそうです。
5-4.まとめ
いわゆる耳と呼ばれる部分と、いわゆる頭と呼ばれる大脳の間の脳幹と呼ばれる部分には様々な機能があります。
脳幹の中には機能と仕組みによって様々な部分に分類されます。
共通しているのは1つ目に受け取った情報の何らかの処理をしていることです。
2つめには末端からの情報と中枢からの情報の両方の伝達をしていることです。
この2つめが次の章の内容です。
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