[聴覚心理]院試備忘録8.まとめ-「聞こえる」とは何か-

8-1.音と音声

聴覚において音の必要な情報はスペクトルと言えるでしょう。
スペクトルとはどの周波数がどの強さで混ざっているかを表すものです。
スペクトルを表現するときに必要なのは周波数と音圧パワーレベルです。
横軸に周波数、縦軸にdBSPLを置くことが多いですが、縦軸は様々な量をとる場合があります。
基準で割って、対数をとる表現をレベル表現と言いますが、dBと出てきたらレベル表現です。
見るべき点は基準が何か、対数の中身の物理量が何かの2点です。

次に音声を表現する上で必要な概念がフォルマントです。
音声のスペクトルを見るとピークがいくつかあります。
ピークをとる周波数を低い順に第1、第2...,第nフォルマントと表現します。

8-2.伝音機構

音を認知するまでには大きく二つに分けられます。
最初に気圧変化という物理量を電気に伝えるまでの伝音機構に関して俯瞰してみます。
外耳から内耳に音を伝える際には、電気信号に変換して情報を得るために様々な役割があります。
外耳では耳介の形状からHRTFの特性を付加することで、後の神経機構で音源定位を行うことができます。
鼓膜に伝えられた音は耳小骨で気圧変化から機械振動に変換されます。
ここで内耳のリンパ液に振動を伝えるために振動を増幅します。
テコと面積比で空気より振動が伝えにくい液体に振動を伝えます。
内耳では蝸牛の中が二つの膜で仕切られています。
入ってきた振動によって液体の圧力差が生じて基底板を揺らします。
基底板の近傍にあるコルチ器の有毛細胞によって振動が電気信号のパルスに変換されます。

8-3.感音機構

中継核で情報処理されながら大脳へと送られます。
処理される内容は音源の位置、視覚などとの統合などです。
大脳では聴覚に関する部分として、一次聴覚野、ブローカ野、ウェルニッケ野が主たる部分です。
一次聴覚野は周波数、強さ、音の方向に関して鋭い選択制を有しています。

ここで実験によって確かめられた事実として、次のようなものがあります。
麻酔下で聴覚野のニューロンを調べると、そうでない時と比較して異なる反応が得られました。
しかし、聴覚野の周波数に対する反応は関係性が見出せず、トノトピックに見ると複雑です。

8-4.聴覚心理導入

以上の内容は聴覚生理に当たる内容です。
生理的反応の結果、聞こえに関する様々な現象が生じます。
導入としては聴覚閾値です。
聴覚閾値が意味するところは人間が聞こえる最小の音の大きさです。
閾値には二つの種類があります。
一つが絶対閾(absolute threshold)と二つ目が弁別閾(difference threshold)です。
例として、音が聞こえる最小のdBSPLの値が絶対閾、ある音の大きさにおいて音の高さを聞き分けられる周波数の値が弁別閾です。
閾値と表現される時は絶対閾であることが多いようです。
ここで人間の聴覚閾値の図を掲載します。

画像1

このような形状になるのは外耳、中耳、内耳そして内耳以降の神経核などの影響の結果です。
例えば外耳の形状による4kHz付近の鋭敏さへの寄与などがあります。
聴覚閾値は被験者に対して聞こえるか否かを統計的に処理して求められたものです。
聞こえるか否か、という部分で聴覚心理の領域に包含される事象と言えるでしょう。

7-5.furthermore

コア-ベルト-パラベルト理論

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