中島みゆきANNのハガキ「世界一のブス」から思ったこと
ご無沙汰してます。
直接会って話したことのある人はわかるだろうが、俺は音楽には詳しくない。
追っかけてる歌手とか、全曲ダウンロードしてるとか、ライブ通ってるとか、そういうのが無い。
そんな中で「好きな歌手です」と言えるのは中島みゆきぐらいである。
いろいろ好きな部分はあるのだが、一言で言うと「だいたいの曲が、だいたいの人が『自分にも当てはまる』と思える歌詞がある」点かな、と思う。
ヒット曲の『時代』にも、『ファイト!』にも、『悪女』にも、『空と君のあいだに』にもある。そんな有名でなくても、『時は流れて』にも、『南三条』にも、『この世に二人だけ』にも、『MERRY-GO-ROUND』にも当てはまる歌詞は入っている。
何でかな、と考えてみるに、感性が飛び抜けているのは前提として、歌詞を一般化するのがうますぎるということではないだろうか。
もちろん歌詞を書くときにだけ現れるものではなく、日常というか、言葉を届ける時には意識してかせずか、そうなってしまっているのだと思う。
歌ではなく彼女がやっていたラジオに具体的な例がある。
『中島みゆきのオールナイトニッポン』。
中島みゆきはご案内のあのオールナイトニッポン(以下、ANN)のパーソナリティを1979年4月から、1987年3月まで務めていた。
俺は生まれていないのでリアルタイムで聞いたことはないが、ちょくちょく録音をネット上で見つけて聞いたりしたことはある。最初は喋り方が歌っている時と余りに違っているので面食らった。(最初はみんな面食らうらしい、通過儀礼みたいなもの)
1984年2月7日の放送にて。
中島みゆきのANNでは、番組の最後に「最後のはがき」というコーナーがあって、聴取者からのはがきを読んでそれに中島みゆきが回答し、曲が流れて終わる、という流れになっていた。
その日の「最後のはがき」では、「私は世界一のブスです」という書き出しの、女子中学生からの悩みのお便りが届けられた。
その女性は容姿でからかわれたり、いじめられたりしている様子で、中学時代いじめていた奴がその高校に進学しているので、志望校への受験勉強が手に付かない。といった悩みを抱えていた。
それでもはがきの最後に、
ーーーみゆきさん、こんな私でも、生きてて良かったって思うこと、ありますよね。
堂々と人前歩けるようになれる日、来ますよね。
その日を夢見て頑張ります。
そして、そして、みゆきさんのコンサートの日には、今の私でない私になってみようと思います。ーーー
と前向きに記している。
これに対し、中島みゆきは
ーーー日本中でこの今の番組を聴いてる人。
誰が一番醜く見えるかわかると思います。
このハガキをくれたあなた。
そのくらいのことわかる人が、日本中にいっぱいいると思います。ーーー
と切り出した。そして容姿に関する自身の考え方も述べながら、最後にこう言った。
ーーーコンサートの日は、アンタのままのアンタで、おいでよね。ーーー
この最後の言葉。
俺にとって重要なのは、ここで「容姿」に関する言葉が出てきていないところである。
そこまで容姿に関する考えも述べていたからここで再び言う必要はない、とも取れるだろう。
ただ、これこそが、この「一般化」こそが魅力だなぁと俺は思ってしまった。
「世界一の“ブス“」を何か自分のコンプレックスに置き換えてみてほしい。
アホ、無能、慌て者、癖毛、マイナス思考、貧乏、酒乱…何でもいい。それぞれにコンプレックスはあるはずである。
「アンタのままのアンタでおいでよね」という言葉には、それらコンプレックスを認めてくれるような、「あってもいいから」という意味合いも感じ取ってしまった。俺はね。
もちろん、テーマは「ブス」であったし、ブスで悩んでいる人へのアンサーであることは間違いない。それなのに、他の人へのアンサーにもなりうる言葉を選び取り、瞬時に過不足なく発出する能力。
この話を知った時、俺は「だから(自分も含めて)多くの人が『当てはまる』と思える歌詞を書けるのか」と思った。
後年、中島みゆきはインタビューで自身の歌の詞に対して、「それぞれがそれぞれに、自分に当てはめて思うところがあるなら、何かをを想像することがあるのなら、それでいいんじゃないかと思います。」と答えている。
というわけで、俺はこれからもその「一般化」された(「自分にも当てはまる」、と思える)歌を聞き続けたいと思うし、それだけの幅の広さに自身を投影して甘えさせてもらおう、と思っている。
「1分間の深イイ話」みたいな内容になったな。面白みがあまりなくてごめんなさい。
何度も焼き直しされたエピソードで、ちょっと調べりゃいろんな考察も感想も出てくると思うけど、自分も思うところがあったから書いてみた次第。
以上、またお目にかかれますよう。さいなら。
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