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富山小記

これは2017年1月に富山へ行ったときの記録です。写真をはさみながら当時の文章を手記風に纏めてみました。

20170122

人生初のヒッチハイクで富山県富山市に来ている。辿り着いたのだ!今、富山市内のホテルでこれを書いている。

朝の出来事から綴る。12時頃に大泉ICに着く。晴れている。OK。ここがスタート地点。ICに入る手前の交差点で、信号が赤になった時に止まった車へ行先を書いたスケッチブックを掲げてアピールをする作戦。想像はしていたが、最初にスケッチブックを出す時は足が震えた。頭の中の大半では能天気に考えていたが、それを裏切る形で全く止まってくれない。無視、せせら笑い、も共に。でも中には反応してくれたり、応援してくれる人もいる。いいね。書いた内容によって反応が変わってくる。反応を見て内容を変えていく。はじめて3時間経過、だんだん反応は良くなったが、なかなか載せてくれる車はない。ジェットコースターのような自分のマインド。適当な理由をつけて折れかけ、道端で休憩するが結果を出さなければと自身にハッパをかけ、いざ休憩場所から出陣。するとすぐ一台の車が反応してくれた。三芳までなら乗っけてくれるそう!。完全に無理だと思っていたが、記念すべき一台目に乗れた。乗っけてくれた人はお坊さん(!)で、川越に向かう途中らしい。日本海側へ行くといったら自殺か?と聞かれる。いやいや。東尋坊について教えてもらう。自殺のホットスポットでもある。お坊さんは実家もお寺なのだが、今は違うお寺につとめているらしい。説法のレベルを保つために日々勉強だそう。かっこいいね。直ぐに三芳に着き、別れる。ありがとうございました。

さて、引き返すことも出来なくなり、ここからが本番だ。三芳に着いたのは16時ちょい前で、日没の時間も考えると、今日中に日本海側へ辿り着くのは絶望的だった。日が落ちるとヒッチハイクは成功率が下がるから。まあPAで泊まっていけば暖は最低限とれるだろうし、死にはしない。久々のPAに興奮するが、早くこの場所から出ないといけないので直ぐスケッチブックを掲げる。行き先は上里SA。

すると開始3分で一台の車が止まってくれた!おお!乗り込む。そして行き先はなんと、目的地の富山だった。なんたる偶然。上里からはるかに越えて富山に行けてしまうことになった。乗せてくれた方々はカップルで、コンサルタントをやっている男性と、看護師の2人。面白い2人で男性は大学生の時、カラオケで三徹したらしい。それにずっとカラオケにいるのは自分だけ、遊ぶ友達は日ごとによって違う。おかしい。趣味も釣り、スキーにスケボー、ゴルフ、バーベキュー、アニメ鑑賞、そのどれもやり込んでいるみたいだ。一気にぶっ飛んだ。なんじゃそりゃ。女性の方はレイヤーでコミケとか同人イベントによく参加されてるらしい。車内ではアニソンが流れ、仕事の話や趣味の話に花が咲く。もしまた富山に来ることがあったら、連絡してくれとのこと。仕事をバリバリして、それと同じくらい遊んでいるから知り合いが多く、なんでも紹介できる。感謝しかない。釣りを一緒にやる約束をする。

富山に近づき、高速を降りるときには雪が降り始め、車内では坂本真綾の「おかえりなさい」が流れていた。女性が車内で「雪の流れを見ると風の流れも全てわかるんだよ」と教えてくれた。感銘を受ける。当たり前だけど忘れてしまいがちな大事なことを言葉にしていきたい。もう頭が吹っ飛びすぎてテンションがおかしい。高速を降りてからの富山市街の風景は行ったことの無い外国のように見えた。空間への感覚がフルに働く。これが旅の中でたまらないことの一つ。雪がさんさんと降り、路面電車が走っている。夢の景色。富山駅に着いて彼、彼女とお別れをする。再会を約束し握手。

富山に着いた、着いたのだ。興奮しているので訳が分からない。今ここに僕がいるのは奇跡だ。街を歩いてみるけど浮いてるようだった。生まれてきて一番の寒さを体感して、逃げるように店に入った。気づいたら目の前にブリやホタルイカが並べられ、その次にいたところはベッドの上だった。

眠れなくて、思索にふける。
ここは個人経営の古本屋も無さそうだし、美術館も少ない。人の行き来も人口の密度も同じく。恐らく街の移り変わりのスピードも東京に比べて緩やかなのだろう。中心街を路面電車が走っている。夢か?ここは。東京の感覚からしたら変なところに空き地があるし。

写真を撮りたい。撮りたくて来た。着いた時は何を撮っていいかわからなかったが、ちょっと休んで、撮るべき富山の姿が少しだけ見えてきた。

ここには自然がある。風と雪。ちょっといったら海も山もあるんだろう。それらは恐らく撮るべきものなのだろう。僕にとって。色々試してみよう。など考える。その後、就寝。

20170123

朝起きて大浴場へ。外は相変わらず雪。
ここの大浴場は一角に付けて足したような狭い露天風呂スペースがあるのだが、狭いスペースに雪がしんしんと降り注いでいて見入ってしまう。絶景。富山駅前アパホテルの男性大浴場、凄いよ。準備して外出。


いやはや、一面の雪!駅前のそば屋でメシを食う。昨日、ヒッチハイクで乗せてくれた人が、富山の出汁には西と東のどちらの要素も含まれていると言っていた。

駅前のデパートで装備を揃える。さあ出陣。まずは富山なら薬、ということで廣貫堂資料館へ路面電車で。区間距離はとても短いのだが、これだけ雪が降っているとありがたみがある。富山の天気は変わりやすく、自然の表情が良く分かる。山に囲まれているからだ。廣貫堂資料館は本社敷地内にあり、設立の背景や扱う薬の歴史、商売の特徴などについて展示している。反魂丹に興味が湧く。江戸時代の生活を想像する。

その後、富山近代美術館へ。長期休館でやってないけど。道中に路地裏で猫の性交を目撃。なんじゃこりゃ。メス猫は僕が近くにいることに気付き、オス猫をたしなめようとするが、雄は気づかない。性別の性だろうか。こんな寒いのに野生はやるね。富山は動物と人間の距離が近い。鳥も多い。色々な種類の鳥が見れて満足。富山近代美術館は開いてる時にまた行きたい。

散歩をしていると、街中のいたるところにスプリンクラーが張り巡らされている。雪を溶かすためで路面電車の軌条から車道、歩道まで何処でも。スプリンクラーの素材や形状にも種類があって面白い。二本の軌条に水があたるように位置関係まできちんと計算されている。これぞブリコラージュ。興奮。もはやぼくにとっての富山は巨大な箱のような要塞都市に感じられた。自然の脅威への対策が生んだ要塞。凄く脳が刺激される。目の前の風景はまんま地方都市なのにね。

地元の中学校も見てみる。このような素晴らしい環境で学生生活ができることは幸福だ。ドラマもたくさん生まれるだろう。街を散策している途中、路線の乗り換えを間違えて南富山駅に何回も着いてしまう。イリュージョンの中にいるのだ。たまにさしてくる太陽が気持ち良い。なにこれ。与えられてる。富山の女性はみな肌が綺麗に見えた。色々な理由があるが、今は理由が無いことにしておこう。

南富山駅から富山駅へ戻る。そこから富山ライトレールに乗って岩瀬浜へ。日本海を初めて見るために。富山ライトレールが素晴らしい。海へ向かう電車は何故こんなにも良いのか?


岩瀬浜については、他言できないほどのものをもらう。これはいつか形となって現れるはず。


近くの観光案内所で休憩し、岩瀬浜からのインスピレーションでムズムズして制作したくなる。夜行バスで帰る予定だったが新幹線で帰ることにする。急ぎたい。これも岩瀬浜効果だろう。いつもはこんなことをしない。

富山駅に戻ってケータイを充電しながら、今後の指針について考える。岩瀬浜のインスピレーションが続く。これはおそらく霊感だろう。オバケの意味とは違う霊感。直感とはまた違う。最後に富山駅の近くにある居酒屋へ。

ここでも素敵なことが。ビールを飲んでいると、隣席の方から声をかけられる。今まであった出来事を説明すると、食え食えということで、富山の幸がどんどん出てくる。なんなんだこれは。今回の旅は考えるのではなく感じることが多い。私も感じさせてあげられる人になりたい。人の縁に泣く。富山の地酒である立山を飲みまくる。隣席の方は車屋さんで、面白い話がいっぱい。優しさが溢れている。価値についても感じるところが今回の旅は多い。

名残惜しくも新幹線の時間が来たのでお別れ。感謝の気持ちを置いて新幹線に飛び乗る。

たらふく呑んだからか、新幹線の中の記憶はほぼゼロ。酔っ払い状態で駆け抜けるように帰宅。


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