デジタルな天国が実装された世界、ドラマ『UPLOAD』にガンガン死生観を揺さぶられてしまった話
『ブレイキング・バッド』も『ウォーキング・デッド』も『ゲーム・オブ・スローンズ』も、ありとあらゆる海外ドラマを途中で脱落してきた自分が、まさか一気見してしまう作品と出会うなんて!
Amazon の prime video で配信されている『UPLOAD』、あまりにおもしろく、さらにはいろいろな人と語り合いたくなる内容で、誰彼かまわず「ねぇ、『UPLOAD』観た? まだなら観て!!」と布教してしまいました。
第1話の内容を中心に、ここ note でもその布教に全力を尽くしたい所存です。
天国が実装された近未来
フードプリンターで食べたい食事が一瞬で出てきて、自動運転車に乗ってゲームをピコピコしてる間に目的地に着く。『UPLOAD』はテクノロジーが発達し日常に溶け込んでいる、近未来を舞台とした物語です。
何よりも目を引くのが、作品名にもなっている「アップロード」サービス。この世界では、テクノロジーによって死が克服されているのです。
死ぬ直前や、それこそ元気な健康体の時でさえ、「アップロード」サービスを使えばその人の情報をすべてスキャンし、仮想空間に転送させてしまう。
「残された体はどうなるの? 同じ人間がふたりできてしまうということ?」という哲学的な問いも一瞬頭をよぎるのですが、話はかんたん、アップロードが完了するともとの肉体の頭がパーン!と弾けるので、無問題です。(このあたりの乱暴なコメディ感も、いい塩梅です)
第1話では、若き主人公ネイサンが不慮の事故によって予期せぬアップロードをすることになり、はじめての死後の世界に戸惑いながら足を踏み出すまでが描かれています。
仮想世界は複数存在するのだけど、サービスによって料金が違います。まさに、地獄(天国?)の沙汰も金次第。
運よくネイサンの恋人がお金持ちの娘だったこともり、彼女の資金によって最高級のアップロード世界「レイクビュー」に転送されます。
ちなみに、主人公は事故でボロボロの状態で病院へ担ぎ込まれ、そこでアップロードを迫られます。彼女に「アップロードしましょう! これで永遠に一緒ね!」「永遠はちょっと長いな……」というやりとりの果てに、「私と一緒にいるより普通に死にたいってこと?」とキレられるのが、いい具合にこの世界の常識感覚を表しています。
天国はまさにユートピア!
理想の世界としてプログラミングされた死後の世界は、まさに天国!僕みたいな庶民が出張先のビジネスホテルで密やかな楽しみにしているビュッフェが、ここでは最上級のクオリティで毎日食べられます。
周りには豊かな自然が広がり、トレッキングだって楽しめる。自分と同じようにアップロードされた死者と交流を深め、おしゃべりやゲームに興じることも。
さらには、現実世界に「取り残された」人たちとも、気軽にオンライン通話だってできちゃいます。
お菓子を食べたり、好きな洋服を買ったりするには課金が必要だけど、まぁ、それを差っ引いたって実に過ごしやすい世界です。
なんてったって、もう死ぬこともない!
ああ、ここは本当にユートピア……なのでしょうか?
揺らぐ死生観
『UPLOAD』に心ひかれるのは、物語自体のおもしろさもあるけれど、自分自身の死生観がグラグラと揺り動かされてしまうところ。
死ぬって、どういうことだっけ?
自分がこの世界にいたら、アップロードを選ぶのか?
物語に見入りながら、そんな疑問がぐるぐると頭の中をかけめぐる。
この世界では、「死」という本来は絶対的な別れが、とても希薄なことに変わっています。
ホームパーティー中、「自分の祖母は天国にいるんです」という発言に、僕たちであれば一瞬気まずくなってしまいそうだけれど、ここでは間髪入れずに「そう どこの?」と返される。
この世界で死ぬということは、人知の及ばない遠い場所に旅立つことではなく、海外に引っ越してしまったぐらいの、そんな気軽なお出かけなのです。
会話もできるし、VRを使えば現実の住人も遊びに行ける。セックススーツを使えば、夜の営みだって可能です。
ただ、そんな世界でも、「アップロード」を望まない人はいて。
娘がいくら説得しても、自分がアップロードされることに反対するお父さん。
「ママが待ってる」
「私にはママがいるところが天国だ」
死別した妻がいる"本当の天国"に召されることを望み、アップロードを拒みます。
そう、アップロードが発明された未来とは、「天国がデジタル化した」というよりも、「もうひとつの天国が生まれた」世界なのです。
このお父さんの感覚は、まだアップロードが実装されていない僕らには、なんだか近しいものに感じられます。
でも、娘が語る「(アップロードすれば)私と一緒にいられる」という説得も、死別の悲しみをよく知る僕たちだからこそ、とてもよく分かる感情で。
はじめは人工的な作りものの天国にギョッとし、薄気味悪さを覚えていた自分も、だんだんとその世界が「死の悲しみを乗り越えようとする人間がつくったもの」として、いじらしく、愛しくも思えてきてしまって。
果たして自分は「死ぬこと」をどう捉えているのか。
みんなはどう感じながら生きているのか。
それを話し合いたくて、自分の思いを吐露したくて、多くの人に観てもらいたくなったんです。
『UPLOAD』でゲラゲラ笑おう!
ともすれば、「命とは、死とは」と重たいテーマに傾きそうな内容だけど、本作はコメディ色がいい塩梅で練りこまれてるのが小気味よくて。
小便が絶対に便器からはずれないことに気がつき、アクロバティックな体勢で放尿に挑戦する主人公。
アップロードされた世界で Youtuber 的な配信にがんばるおっさん。
個人的な1話のゲラゲラポイントは、時間に間に合わず朝食を食い損ねた主人公がシステムのバグを突き、冷蔵庫らしきボックスをガンガン開け閉めしてパンを出現させる場面。
不便なのか便利なのか分からんぞ!
主人公の死の真相とは?
アップロードされた世界での主人公の生活と並行して描かれるのが、そもそもどうして彼は死んでしまったのか?という謎。
交通事故で亡くなってしまった彼だけど、本来であれば自動運転車が事故を起こすことはない。
次第に明らかになっていく、大きな存在による陰謀。自分が殺されてしまった理由を、彼は天国にいながらして追い求めていきます。
未来の死後の世界に考えさせられ、コメディに笑わされ、サスペンスにハラハラさせられる。
寝る時間も忘れ、一気にシーズン1を駆け抜けてしまいました!
(シーズン2も制作中とのこと。待ちきれない!)
ああ、お願いだからみんなにも観て欲しい!
あなたは死んだら、どこに行きたいですか?