家宝になったベルマーク
父が63歳になった。
両親へのプレゼント選びが年々難しくなると感じるのは私だけだろうか。
退職後、家を片付けているという母の話を聞くと“残る物はなぁ”とためらうし、健康を気にかけている様子を見れば“甘い物はなぁ”となる。結局方向は定まらないまま、血糖値サプリメントを検索している自分に「アレ?目的は何だったんだ?」となる。とんだ迷走っぷりだ。
うってかわって、小2の娘はジィジへのプレゼントを即決した。「私はもう準備してあるの。」と得意気に言う。そう話す娘の目は輝いていて、心なしか頬がいつもより、ほんのり赤くなっていた。
「特別に見せてあげるから待ってて。」と、自分の部屋から戻った娘の手には小箱が握られていた。「これをジィジにあげるの。」その手に握られていた物こそがタイトルのベルマークである。しかし、ただのベルマークではない。40点のベルマークなのだ。
私はあまり相場に詳しくないので調べてみると、ノートや調味料・お菓子など、よく目にするベルマークの多くは0.5~5点の幅の物が多い。せっせとベルマーク集めをしている娘いわく、2桁はなかなか珍しいそうで本人も初めて出合ったとのことだった。以前購入したバッグに付いてきた物らしい。
63歳のジィジに、高得点ベルマークの使い道があるかは別として、娘にとっては紛れもない宝物だ。
私はふと、娘が1年生の国語で学習した「かいがら」という話を思い出した。そこに出てくるクマ君は、海で拾った1番お気に入りのシマ模様の貝殻を友達のウサギちゃんにあげるのだ。“だいすきなおともだちには、いちばんいいものをあげようときめた”と……。きっと娘も同じ気持ちなのだろう。
誕生日会当日、娘の小さな手にのったベルマークを受け取り「ありがとう、家宝にするね。」と言う父のセリフは、娘の頬を一段と赤く染めたのだった。
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