見出し画像

眼球運動について 基礎メカニズムから臨床実践まで 〜統合的神経認知運動療法®︎〜

こんにちは、理学療法士の大塚です。今回は眼球運動について詳しくお伝えしていきます。

眼球運動は人体における最も精密な運動制御システムの一つです。本記事では、5つの主要な眼球運動メカニズムについて、その仕組みから臨床での活用方法まで、詳しく解説します。理学療法士・作業療法士の皆様の臨床実践に直接活用できる情報を提供します。

📚 目次


1. 前庭動眼反射(VOR)

基本的機能

前庭動眼反射は、頭部運動中でも網膜上の像を安定させ、クリアな視覚を維持する反射性眼球運動です。日常生活では、歩行中や運動中でも周囲の風景をはっきりと認識できるのは、このVORのおかげです。

神経生理学的機序

a) 神経回路(三シナプス性弧)

  • 一次ニューロン:前庭神経節(感覚情報)

  • 二次ニューロン:前庭神経核(情報統合)

  • 三次ニューロン:外眼筋運動ニューロン(運動出力)

b) 神経伝達物質システム

経路神経伝達物質前庭求心性グルタミン酸作動性前庭神経核GABA/グリシン作動性運動ニューロンコリン作動性

c) 適応メカニズム

  • 小脳片葉による可塑的制御

  • 長期抑圧(LTD)を介したシナプス修飾

  • 視覚フィードバックによる校正機能

評価方法

1) Head Impulse Test (HIT)

実施手順:

  • 患者の頭部を20度程度素早く回転

  • 固視標的を注視させる

  • 眼球運動を観察

判定基準:

  • 正常:スムーズな代償性眼球運動

  • 異常:補足性サッケードの出現

2) Video Head Impulse Test (vHIT)

  • VORゲインの定量的評価

  • 各半規管平面での機能評価

  • 潜在的異常の早期発見

アプローチ方法

1) 基礎訓練

a) ガズ安定化訓練

  • 段階1:座位での頭部回転(0-30度)

  • 段階2:立位での頭部回転

  • 段階3:歩行中の頭部回転

  • 実施頻度:1日3セット×10回

b) VOR適応訓練

  • 固定視標での頭部運動

  • 動的視標での頭部運動

  • 複雑背景での訓練

2) 応用訓練

  • 日常生活動作との統合

  • スポーツ特異的訓練

  • 職業特異的訓練

2. 視運動性反応(OKR)

視運動性反応は、大規模な視覚刺激の動きに対する眼球の追従反応です。この反応は、列車の車窓からの景色を見る際などに重要な役割を果たします。

神経生理学的機序

a) 視覚情報処理経路

  • 網膜→外側膝状体→視覚野→MT/MST野→前庭神経核

b) 二相性反応

  • 緩徐相:視覚対象物の追跡

  • 急速相:視線のリセット

c) 神経積分機構

  • 前庭神経核での速度-位置変換

  • 小脳による調節機能

3. 追跡眼球運動(Smooth Pursuit)

追跡眼球運動は、動く対象物を滑らかに追跡する能力です。読書やスポーツなど、日常生活の多くの場面で重要な役割を果たします。

神経生理学的機序

a) 大脳皮質制御回路

  • 前頭眼野(FEF):運動計画と開始

  • 補足眼野(SEF):運動系列の制御

  • 頭頂眼野(PEF):空間的注意

  • MT/MST野:動き知覚と速度予測

b) 皮質下経路

  • 橋被蓋網様体核(PPRF)

  • 内側縦束(MLF)

  • 前庭神経核複合体

c) 予測制御システム

  • 小脳による時間的予測

  • 基底核による運動選択

  • 前頭前野による行動計画

評価方法

1) 定性的評価

ペンライト追従検査

  • 距離:40cm

  • 速度:20-30°/秒

  • パターン:水平・垂直・円・8の字

2) 定量的評価

眼球運動計測装置による評価

  • 追跡利得(ゲイン)

  • 位相差

  • サッケード混入率

アプローチ方法

1) 基礎訓練

a) 視標追跡訓練

  • 単純な直線運動から開始

  • 徐々に複雑なパターンへ

  • 速度の段階的増加

  • 1セット5分×3セット/日

b) 予測性訓練

  • 規則的な運動パターン

  • リズミカルな視標追従

  • 視標消失時の予測運動

4. 衝動性眼球運動(サッケード)

サッケードは、視線を素早く移動させる眼球運動です。読書や視覚探索など、多くの日常活動に不可欠です。

ここから先は

1,159字

¥ 300

期間限定!Amazon Payで支払うと抽選で
Amazonギフトカード5,000円分が当たる

よろしければサポートお願いします! いただいたサポートはクリエイターとしての活動費に使わせていただきます!