
神経障害性疼痛に対するリハビリ戦略 〜科学的根拠に基づく痛みの基礎〜
こんにちは、理学療法士の赤羽です。本日は疼痛について解説するシリーズ第11回目として、神経障害性疼痛について深く掘り下げていきます。前回の「侵害受容性疼痛」に続き、今回は神経系の問題から生じる痛みにフォーカスします。
前回の内容はこちら>>>侵害受容性疼痛に対するリハビリ戦略 〜科学的根拠に基づく痛みの基礎〜
神経障害性疼痛とは?
神経障害性疼痛(しんけいしょうがいせいとうつう)は、「体性感覚神経系の病変や疾患によって引き起こされる疼痛」と定義されています。具体的には、末梢神経や中枢神経系の損傷や機能障害が原因となって発生する痛みのことを指します。
代表的な神経障害性疼痛の例
糖尿病性ニューロパチー
帯状疱疹後神経痛
坐骨神経痛
脊髄損傷後の痛み
神経の圧迫や損傷による痛み
神経障害性疼痛の特徴的な症状
刺すような痛み
焼けるような感覚
電撃が走るような痛み
しびれ
感覚過敏
異常感覚(アロディニア)
神経障害性疼痛は、侵害受容性疼痛と比較して治療が難しく、長期化しやすい特徴があります。そのため、患者のQOL(生活の質)に大きな影響を与えることが多いです。
神経障害性疼痛に対する効果的なリハビリテーションアプローチ
神経障害性疼痛の管理には、単に痛みを和らげるだけでなく、患者さんの機能改善とQOL向上を目指した総合的なアプローチが必要です。以下に、効果的なリハビリテーション方法をご紹介します。
1. 感覚リハビリテーション
神経障害性疼痛では、感覚が過敏になったり鈍化したりすることがあります。そこで、感覚刺激を用いた再教育が有効です。
触覚や振動感覚などの低刺激から開始
徐々に刺激の強度を上げていく
患者さんの反応を見ながら慎重に進める
2. 運動療法
適切な運動やストレッチは、神経への刺激を軽減し、血流改善により疼痛を和らげる可能性があります。
段階的な運動負荷を心がける
痛みを増悪させないよう注意する
有酸素運動とストレッチを組み合わせる
3. 電気刺激療法(TENS)
経皮的電気神経刺激(TENS)は、神経障害性疼痛の緩和に効果がある場合があります。
神経を刺激し、痛みの伝達を抑制
使用頻度や強度は個別に調整
家庭での自己管理にも活用可能
4. 心理的アプローチ
神経障害性疼痛は慢性化しやすく、患者さんに強い精神的負担をかけることが多いため、心理的なアプローチも重要です。
認知行動療法(CBT)
マインドフルネス
ストレス管理技法
まとめ
神経障害性疼痛の管理には、以下の3つのポイントが重要です
神経障害性疼痛は末梢神経や中枢神経系の損傷や機能障害によって引き起こされる痛みである
刺すような痛み、焼けるような感覚、電撃痛、しびれ、感覚過敏、アロディニアなどの多様な症状がある
感覚リハビリテーション、運動療法、TENS、心理的アプローチなど、多角的な介入が効果的である
神経障害性疼痛の管理は複雑ですが、適切なアプローチを組み合わせることで、患者さんのQOL向上につながります。皆さんも、これらのポイントを踏まえて、自分なりの効果的なアプローチ方法を考えてみてください。
確認問題
神経障害性疼痛の定義として正しいものは?
a 筋肉や関節の損傷によって引き起こされる疼痛
b.体性感覚神経系の病変や疾患によって引き起こされる疼痛
c.心理的ストレスによって引き起こされる疼痛神経障害性疼痛の症状として当てはまらないものは?
a.刺すような痛み
b.しびれ
c.関節の腫れ神経障害性疼痛に対する効果的なリハビリテーションアプローチとして適切でないものは?
a.感覚リハビリテーション
b.高強度の運動療法
c.経皮的電気神経刺激(TENS)
答え:1-b, 2-c, 3-b
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参考文献
Global Research on Neuropathic Pain Rehabilitation over the Last 20 Years. NCBI. (2021).
Tannins in the Treatment of Diabetic Neuropathic Pain: Research Progress and Future Challenges. NCBI. (2022).
神経障害性疼痛の治療戦略 (特集 痛みの診断と治療最前線). Semantic Scholar. (2020).
Physical therapy modalities and rehabilitation techniques in the management of neuropathic pain. PubMed. (2014).
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