上腕二頭筋の解剖と機能を徹底解説! 〜学生・新人理学療法士、作業療法士のためのスキルアップガイド〜
こんにちは、内川です。皆さんは上腕二頭筋についてどのくらい知っていますか?
上腕二頭筋は主に肘関節の屈曲と前腕の回外に関与します。日常生活において肘の屈曲伸展の動きは多く、包丁やフライパン等の利用、食器洗い、洗濯物を取り出す、干す等、まだまだあげたらきりがありません。
野球や水泳等の上肢を主に使うスポーツのニュースで、肩の関節唇損傷という言葉を聞いたことがありませんか?
関節唇と上腕二頭筋には解剖学的なつながりがあり、こういったスポーツにおける怪我にも大きくかかわってきます。
日常生活にもスポーツにおいても様々な役割を持つ上腕二頭筋のことは知っていて損はありません!
上腕二頭筋の解剖や評価、アプローチの方法について詳しく見ていきましょう!
1. 上腕二頭筋の解剖と作用
起始:
短頭:烏口突起
長頭:肩甲骨関節上結節
停止:
橈骨粗面、上腕二頭筋腱膜
支配神経:
筋皮神経(C5~C6)
作用:
肘関節の屈曲
前腕の回外
肩関節の屈曲(特に長頭)
上腕二頭筋の長頭は結節間溝に走行し、横靭帯内を滑走します。
肩関節外旋位で長頭腱の緊張は高まり、内旋位では緊張は低下します。
長頭腱による骨頭の安定化は外旋位で効果的に作用し、肩甲上腕関節の安定化を担います。また、骨頭の上方移動も抑制します。
2. 上腕二頭筋の評価
触診:
上腕の前面で上腕二頭筋の筋腹を触診し、筋緊張や圧痛、硬さを確認します。
ヤーガソンテスト:
これは上腕二頭筋の炎症と損傷をみるテストです。
肘関節90°屈曲、前腕回外位をとらせる
被検者に回外方向で保持させた状態で、検者は回内方向に抵抗をかける
判定:結節間溝部上腕二頭筋長頭肩部に痛みがある場合陽性
注意:上腕二頭筋完全断裂の場合、筋腹(力こぶ)が上腕遠位に落ち込みます
MMT:肘関節屈曲
段階5、4、3の手順:
上腕二頭筋:回外位
腕橈骨筋:中間位
上腕筋:回内位で評価
座位で上肢を体側に置き検者は肘を支持
抵抗無しで全可動域動かせれば、検者のもう一方の手で手関節の近位、前腕の掌側に抵抗
判断基準:
5:最大の抵抗に対して保持できる
4:中等度の抵抗に対して保持できる
3:抵抗がなければ可動域をすべて動かせる
段階2、1、0の手順:
座位で肩90°屈曲、内旋位をとり検者は肘、手関節部を下から支持する
肘を屈曲させる
触知部位:
上腕二頭筋:肘窩
腕橈骨筋:前腕の外側
上腕筋:上腕遠位部
判断基準:
2:重力が最小化されれば全可動域を動かす
1:側臥位で段階2と同じ肩の肢位で3つの筋どれかに収縮を触知できる
0:動きも収縮もない
3. 上腕二頭筋のアプローチ
ストレッチ:
上腕二頭筋のストレッチには、肘関節と肩関節を伸展させ、前腕を回内する動作が有効です。壁や机を利用して、肩を引き後方に伸ばすストレッチを行うと、効果的に筋を伸ばすことができます。
筋力強化:
セラバンドを使用した肘関節の屈曲運動が、上腕二頭筋の筋力強化に有効です。また、前腕の回外を伴う屈曲運動を取り入れると効果的です。
4. 機能低下と影響
上腕二頭筋は2関節筋であり、機能低下が生じると肩関節の動きに制限が生じることがあります。
上腕二頭筋長頭の機能障害がある場合、肩関節の屈曲や外旋時に痛みが出やすいです。
上腕二頭筋長頭は関節上結節につき、上方関節唇に接続があり、過緊張や損傷により疼痛が引き起こされることがあります。
5. 臨床ちょこっとメモ
上腕二頭筋の炎症や腱損傷は、肩関節や肘関節の痛みの原因となることが多く、特に長頭腱の損傷が肩の前方痛を引き起こします。
オーバーヘッドスポーツなどによる上腕二頭筋長頭へ反復する負荷で、関節唇を牽引し損傷させることがあります。これをスラップ損傷といいます。
肘の屈曲はMMTで行った通り、前腕回外位では上腕二頭筋が、中間位では腕橈骨筋、回内位では上腕筋が優位に働きます。
6. まとめ
1. 上腕二頭筋の解剖と機能:
上腕二頭筋は短頭と長頭から成り、主に肘関節の屈曲と前腕の回外に関与します。また、長頭は肩関節の安定化にも重要な役割を果たします。日常生活やスポーツ活動において、この筋肉は非常に重要で多機能な役割を担っています。
2. 評価方法と臨床的意義:
上腕二頭筋の評価には、触診、ヤーガソンテスト、MMTなどが用いられます。これらの評価は、筋の状態や機能を確認するだけでなく、関連する肩や肘の問題を診断する上でも重要です。特に、長頭腱の損傷は肩の前方痛の原因となることがあり、注意が必要です。
3. アプローチと臨床での注意点:
上腕二頭筋のケアには、適切なストレッチや筋力強化が効果的です。ストレッチでは肘関節と肩関節の伸展と前腕の回内を、筋力強化ではセラバンドを用いた運動が推奨されます。臨床では、上腕二頭筋の問題が肩関節や肘関節の痛みに関連していることを理解し、総合的な評価とアプローチが重要です。
今回記載したものはあくまでも筋単体のことです。実際の治療においては周囲にいくつもの筋肉が存在しており、深さも考えなければなりません。周囲に何があるかイメージできていますか?不安な方はぜひ一緒に勉強しませんか?
【解剖が苦手な方限定】 実践!! 身体で学ぶ解剖学(筋肉編)
7. 参考文献
症例動画から学ぶ 臨床整形外科的テスト
新・徒手筋力検査法 原著第10版
プロメテウス解剖学アトラス 解剖学総論運動器系 第3版
肩関節痛・頸部痛のリハビリテーション
機能解剖学的触診技術 上肢 改訂第2版