炎症とその修復過程について 〜統合的神経認知運動療法®︎〜
こんにちは、理学療法士の大塚です。今回は炎症の修復過程について生理学的な視点とリハビリでの活かし方について解説していきます。
1. 炎症と修復過程の概要
a) 炎症期(急性期:1-3日)
細胞内シグナリング:
NF-κB経路の活性化:炎症性サイトカイン(IL-1β、TNF-α、IL-6)の産生促進
MAPK経路の活性化:細胞の生存、増殖、炎症反応の調節
臨床所見:
5大徴候(発赤、腫脹、熱感、疼痛、機能障害)が顕著
アルブミン値の低下(炎症性サイトカインによる合成抑制と血管外漏出)
作業療法・理学療法の介入:
ADLの制限評価と代償方法指導(OT):片手動作訓練、自助具の導入
RICE処置と関節可動域維持(PT):他動運動中心の関節可動域訓練
心理的サポート(OT/PT):ストレス管理技法の指導、回復への意欲維持
b) 修復初期(亜急性期:4-14日)
細胞内シグナリング:
STAT3経路の活性化:抗炎症性サイトカイン(IL-10)の産生促進
Smad経路の活性化:線維芽細胞の増殖・分化促進
臨床所見:
炎症徴候の緩和、組織修復の開始
アルブミン値の緩やかな回復
作業療法・理学療法の介入:
ADL範囲の拡大(OT):入浴動作、調理動作の一部導入
段階的な運動負荷増加(PT):自動介助運動、軽度の筋力トレーニング
作業耐久性の評価と改善(OT):活動と休息のバランス指導
徒手療法(PT):瘢痕組織のモビライゼーション、軟部組織マッサージ
c) リモデリング期(慢性期:15日以降)
細胞内シグナリング:
PI3K/AKT経路の活性化:細胞生存促進、タンパク質合成促進
ERK/MAPK経路の活性化:細胞増殖、分化の促進
臨床所見:
組織の強度回復、機能改善
アルブミン値の正常化
作業療法・理学療法の介入:
職業関連動作訓練(OT):キーボード操作、工具使用など
趣味活動の再開支援(OT):園芸、手芸、楽器演奏の方法修正
筋力・持久力トレーニング(PT):段階的な負荷増加、スポーツ特異的動作練習
コミュニティモビリティ向上(OT/PT):公共交通機関利用訓練、買い物訓練
2. 適切なタイミングでの介入のポイント
a) 多面的評価の重要性
炎症マーカー:CRP(急性期評価)、アルブミン(慢性期・栄養評価)
臨床所見:5大徴候の変化、関節可動域、筋力
作業遂行評価:COPM(カナダ作業遂行測定)による重要作業の特定と満足度評価
ADL評価:Barthel IndexやFIMによる自立度評価
心理社会的評価:HADS(Hospital Anxiety and Depression Scale)等によるメンタルヘルス評価
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