外腹斜筋の解剖と機能を徹底解説! 〜学生・新人理学療法士、作業療法士のためのスキルアップガイド〜
こんにちは、理学療法士の内川です。
外腹斜筋について、みなさんはどのくらいご存じでしょうか?
腹部の一番表面に位置する外腹斜筋は、体幹を回旋させる運動に関与する重要な筋肉です。さらに、体幹の安定性にも関与し、上下肢の安定した運動を助ける役割も担っています。 しかし、外腹斜筋が硬くなったり、筋力が低下したりすると、様々な影響が出ることがあります。 例えば、腰痛や肩関節の痛みの原因になることも。 対象者の機能低下を知るための評価の段階や代償動作などを正しく判断できているでしょうか?
私は学生時代、外腹斜筋のイメージは内腹斜筋と混ざって、本当の意味で理解できていませんでした。そのため、作用も「反対側回旋?同側回旋?」とあやふやになり、暗記でなんとか乗り切っていました。 (正直ここ1年でやっとイメージを得られました。泣)
解剖を改めて確認することで、評価やアプローチ、機能低下による影響のイメージがつきやすくなります。 早速一緒に確認していきましょう!
目次
1.外腹斜筋の解剖と作用
外腹斜筋は、肋骨から骨盤まで伸びる、腹直筋の外側に位置する筋肉です。
起始
第5から第12肋骨の外側面
停止
腸骨稜
鼠径靭帯
腹直筋鞘
神経支配
肋間神経(T7-T11)
腸骨下腹神経(L1)
作用
片側の収縮で体幹の対側回旋と体幹の同側側屈
両側の収縮で腹圧を増加させ、内臓の保護や排便、分娩を補助
2.外腹斜筋の評価
MMT(徒手筋力テスト)
段階5、4、3の方法
背臥位で膝、股関節を伸展位にしてもらいます。対象者の腰レベルに立ちます。
頭部、肩を持ち上げて体幹を屈曲し、一側に回旋させます。
外腹斜筋MMT5
外腹斜筋MMT4
外腹斜筋MMT
判定
5:両手を頭部の側面に触れた状態で、外腹斜筋収縮側の肩甲帯が検査台から離れる
4:両腕を胸の前で交差させた状態で、収縮側の肩甲帯が検査台から離れる
3:両上肢を下肢に向かい伸ばした状態で、収縮側の肩甲帯が検査台から離れる
ポイント!
肩が挙上内転していないかを確認しつつ行いましょう!(大胸筋の代償)
段階2の方法
背臥位で膝、股関節を伸展した状態で両上肢を下肢に向かい伸ばします。
頭部、肩を持ち上げて体幹を屈曲し、一側に回旋させます。
収縮させた方、他方の外腹斜筋を触れる(胸郭の下方腹壁から走行にそって上前腸骨棘まで)
もう一方の手で体側の内腹斜筋を触れます。
外腹斜筋MMT2
判定
2:肩甲骨下角が検査台から離れることはできないが、実施時に胸郭がくぼむ
段階1、0の方法
背臥位で股関節は屈曲位、両上肢は体の横に置きます。
セラピストが頭部を支え、体幹を屈曲し、一側に回旋させます。
腹斜筋、外腹斜筋の触知をします。
外腹斜筋MMT1
判定
1:内・外腹斜筋の収縮を見る、触知することができる
0:筋の活動無し
3.外腹斜筋の筋力練習
基本的にMMTに準じて行うことも多いですが、安定性の向上のために側臥位での運動も有効です。
運動したい方を下にした側臥位をとります。
肋骨と骨盤を近づけるように腹斜筋を収縮させます。
4.筋力低下と影響
外腹斜筋は他の腹部筋とともに腹圧をあげることに働き、腹部前面を支持し内臓を正しい位置に保ちます。肋骨から骨盤まで付着し、胸郭を内方に位置させることで姿勢の維持にも重要な役割を果たしています。
外腹斜筋の筋力低下により、以下の問題が生じる可能性があります:
肋骨が開いた状態になりやすい
腰痛のリスク増加
姿勢不良
体幹の不安定性
これらの問題を予防するためには、定期的な外腹斜筋のトレーニングと、姿勢の意識が重要です。
5.臨床ちょこっとメモ
肋骨が開いている状態では、他の腹部の筋の収縮安定が得られにくくなり、腰椎が過剰に前弯する原因にもなります。
外腹斜筋は肩関節屈曲時の運動側で、屈曲30°と比較し90°以上で有意に働くことが報告されています。 これは、肩関節運動時の体幹の回旋運動を抑制する役割を果たしていることを示しています。
外腹斜筋は前鋸筋、広背筋と解剖学的なつながりがあります。 体幹の安定に寄与するだけでなく、肩甲帯から上肢まで広く影響を与えます。
6.まとめ
外腹斜筋の解剖と機能:外腹斜筋は腹部の一番表面に位置し、肋骨から骨盤まで伸びています。 片側の収縮によって体幹の対側回旋と同側側屈を行い、両側の収縮で腹圧を向上させます。 この筋肉は体幹の安定性に寄与し、上下肢の安定した運動を助けます。
外腹斜筋の評価と治療:徒手筋力テスト(MMT)による評価方法は、背臥位で体幹を屈曲・回旋させ、肩甲帯の離れ具合や胸郭のくぼみ具合で段階を判定します。 評価の際には大胸筋の代償動作に注意が必要です。 段階ごとに適切な方法で筋力を測定し、筋の収縮や活動を確認します。
外腹斜筋の筋力低下により肋骨の開きが発生し、腰椎の過剰前弯や腰痛を引き起こす可能性があります。 また、肩関節屈曲時の体幹回旋運動を抑制し、前鋸筋や広背筋とも連携して体幹と肩甲帯の安定に貢献します。
今回記載したものはあくまでも筋単体のことです。 実際の治療においては腹横筋の周囲にいくつもの筋肉が存在しており、深さも考えなければなりません。 周囲に何があるかイメージできていますか? 不安な方はぜひ一緒に勉強しませんか?
7.参考文献
基礎運動学第6版補訂
脊柱理学療法マネジメント
筋骨格系のキネシオロジー
新徒手筋力検査法 原著第10版