日本強化書:その価格設定正しいですか?(2)
そう問いかけられると、ほとんどの人がこう答えます。
「え? うーん、ウチのこの製品は市場に出回っている他社の製品に比べてもそんなに高くないですよ。むしろ安いくらい。ウチは従業員全員が頑張ってこの価格で提供できています。」
価格設定が正しいか?と聞いただけであって「その価格、高すぎませんか?」と訊いた訳ではありません。なのに「なぜ、もっと安くできるんじゃない?」と思い込んでしまうのでしょうね(苦笑)
しかし、ここに大きな落とし穴があるのです。「市場に出回っている他社の製品に比べても」です。
商品の競争力はとても大事です。
しかし「商品の競争力🟰商品の価格競争力」ではありません。
「商品の競争力🟰商品の魅力や訴求力」です。
商品の魅力・訴求力の中には、場合によっては価格競争力が含まれる場合があるかもしれません。しかし、それは数ある要素の中の一つにしかすぎません。
同じ程度の需要で、同じ品質や質感やデザインで、同じ機能で、使い勝手も同じで製造元への信頼度も同じであれば。そんなクローンのような製品が出回っていれば確かにより安い製品を買うという合理的な選択を消費者は取るでしょう。しかし、そんな奇跡のような選択機会などありません。
Amazonのように同一の商品を複数の販売者が市場で競りにかけていれば別ですが。しかし、この場合でも新品を販売している事業者から購入しない場合もあります。例えば、購入してから配達されるまで1週間以上かかかる場合は、少し高くても翌日配送の事業者を選んだりします。
もうひとつは「買う気になっている顧客」かどうかです。
「いつでもいいや!」「欲しいと思った時もあったけれど、今はそうでもない。」そんな商品もたくさんあります。「過去に買ったことがあるので、メールが毎日のように来るけれど、今はただウザいだけ。」そんな場合もあります。
Amazonや楽天で購入すると、ネットで読んでいる記事にその関心を持ったことのある製品に関連した広告が頻繁に登場します。「買った時はその会社に好意を持っていたけれど、今逆にその邪魔な広告がきっかけで反感を持ってしまう。」こんなこともあります。
しかし、また何か別のものを買おうと思った時に「好意をもった店員さんがいる店や対応が素晴らしく感動した会社からまた買いたい。」と思えることもあります。
つまり「市場に出回っている他社の製品に比べて」というのはほとんど意味がないのです。
人口減少で国民総生産のGDPが減少するから「外国人労働者を増やせ」と考える以前に「人材派遣会社を廃止して全員を正社員」とすべきですし、また「外国人労働者を入れても中国やインドの人口には達しないし、総額のGDPは世界一にならない」訳です。
それであれば「世界でも最も安全で裕福な国を目指すために、一人当たりGDPを倍増する計画」を考えた方が現実的です。
一人当たりGDPを比較すると、一人当たり時間当たり付加価値生産額が低いことに気づきます。(これは動画でも解説しています)
さらには付加価値生産性の低さは製品コストに対する価格転嫁力の低さに原因があることが分かります。実質労働生産性は確かに減少気味ですが決定的な問題の原因ではありません。したがって労働力を増やしても意味がありません。
すなわち、製品コストに対してちょっとしか利益を載せずに売価設定しているのが問題なのですね。全産業平均ではマークアップ率はわずか9%という統計もあります。マークアップ率とは製品原価を1.0として何倍の売価設定をしているかという指標です。たったの9%では利益も出ませんし、何をやっているのか訳わかりません。
米国の軍産複合体ネオコン企業のように、数万円の製品原価に対してペンタゴンが数千万円で買い取るような世界(マークアップ率はなんと1000倍)や、有名革製品ブランド(マークアップ率は数十倍以上)とまでは言いませんが、日本の全産業がマークアップ率1.65倍を目指すだけで、付加価値生産性は50%上昇します。それだけで日本の一人当たりGDPは5万ドルを超えて、世界15位以内には入ってくるでしょう。
大企業や中小企業とかの区別は関係なく、みな「市場に出回っている他社の製品に比べて」をやってしまっています。そうではなくて、
「その価格設定正しいですか?」
「はい。ウチは当社にあった顧客層を知り尽くしています。その顧客層の満足に応えるために、当社の商品哲学のポリシーを崩さず、製品の材質や機能、デザイン、使用感の経年劣化に至るまで徹底的に追求しています。その結果、この価格設定でお客様にご満足いただいています。」
そう答える企業がどんどん増えていってもらいたいものです。
詳しくはYouTubeの動画をご覧ください。