月の遺書
月を見ていた。
愛する人へ向けた愛を込めた遺書に思えた。
月を見ると時々思う。
何百年何千年も昔の人も月を見ながら誰かを想っただろう。
その想いを静かに受け止め続ける。
月は聞き上手。
時代を越えて距離を越えて月を見ている。
月を見ていた。
遺書に思えたのは過去形だから。
月を見ていた
幸せだったんだ
あなただった
月を通して誰かに伝える。
そこら中に礫も枝もある中でたった1つの礫、たった1つの枝。
偶然にも必然が用意されている世界。
冷たい地の下にあるマグマのような想い。
自分ではない、その人の想いを曲にする。
自分の感情であって、自分の感情ではない。
憑かれた感情が苦しいくらいに流れ込んでくる。