かすがい


新年の夫側の集まりは毎年のお決まり行事だった。
コロナ流行以来、数年ぶりの集まり。前回の写真を見ると驚くほど子供たちが大きくなった。

暮れに急遽夫の祖母が入院して今年は祖母が来られなくなった。
席が1つ空いていた。
勝ち気で丈夫で元気なおばあちゃん。
深い話をしたことは無いけれど尊敬してる。

祖母は一人っ子で育ち、結婚後、三人の娘を授かった。
三女さんが産まれて1年も経たない内に、若くしておじいちゃんは旅立った。
おじいちゃんが亡くなり、数日後肺炎を拗らせて三女さんも亡くなった。
その頃、三女さんを抱っこしたおじいちゃんが夢に現れたそうだ。

おばあちゃんは当時の事を深くは語らないけど、私はその話を思い出す度じんわり涙が出てくる。
今を心から感謝する。

「一人っ子だったから人との縁が薄い」と言っていたけれど、娘が孫を産み、孫が曾孫を産み、おばあちゃんの小さな二葉は賑やかな大きな木になった。

孫の中で唯一の男の子の夫。
子供の頃の寝癖ではねた髪を逆立ちして直すエピソードは笑いをこらえきれない様子で何度も私に話してくれた。
おばあちゃんが心から可愛がった孫を夫にできたことを幸運だと思う。
深い話ができるほど近い関係では無いけれど、私も大きな木の枝の一部になれた。
「きれいだよ。おめでとうね」結婚式の時、初めて話しかけてくれた言葉を忘れない。

おばあちゃんの孫と曾孫を大切にしなきゃって思う。
娘も孫も誰1人おばあちゃんと同じ名字ではないけど、そんなことは関係ない。
誰かが誰かと誰かを繋ぎながら、まだまだおばあちゃんの木は広がっていく。

病院で面会したおばあちゃんは過去と現在を行ったり来たりしながら話す。
点滴に酸素マスク。
朝の事は忘れても夫を見る目はいつも通り優しく輝いていた。
これくらいでは仕事を休めないよって笑いながら話す。
きっとおばあちゃんは娘のためにがむしゃらに働いていた頃に返っていくのだろう。
泣き言を言わずに働いて、着物をほどいて子供服を作ったあの頃に。
おばあちゃんは「大変だった」と楽しそうに語っていた。
いい思い出も辛い思い出も柔らかくおばあちゃんを包みますように。

退院したら集まろう。
美味しいものをみんなで食べよう。
賑やかに笑って過ごそう。
薄い梅酒で乾杯しよう。


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