第六回リーディング公演『熱帯樹』公演後インタビュー:鶴坂奈央(律子役)

①今公演を終えて。
―2019年は健康面で受難の年でした。
この年齢になって、喘息デビューするとは思ってなかったんです。
終演後のフリートークの際、「声がすごいですね!!」というお誉めの言葉をたくさん頂いたのですが、まさにこの「声」がですね、喘息により出せなくなっていたんですよね。
一時期もう本当にダメなんじゃないかなと思っていたので、「声すごいね!!」「声楽家の人みたいですね!!」とお客様に声をかけて頂いてる時の、恥ずかしいけどまんざらじゃない顔を、当時の自分に見せてあげたいです(笑)
お客様からの有難いお言葉が、声への不安を払拭してくれたんですよ。本当にありがとうございます。
かくして、受難な1年の最後に、コンディションが戻った状態でパフォーマンスが出来たこと自体がとても奇跡のようで、喜びを感じています!

②熱帯樹を初めて読んだ時の感想
―率直な感想ですと、
長いな…笑
ってか律子さん、めっちゃ喋らはるやん。
ですね(笑)

③熱帯樹で好きな役は?
―信子です。
唯一、この一家から距離を置いて物事を見ることの出来る人物なので、とっても美味しい役柄だと思っています。
チャーハンに添えられている紅しょうがみたいな(笑)
なくても成立するように見せかけて、ないとなんか味気ない、やっぱあった方が美味しいよねっていう、縁の下の力持ちな役回りもとても魅力的です。
ちなみに私は、チャーハンの紅しょうが好きです。

2019.12.06 20時_200121_0023

④役作りの中で、自分がこだわった部分
―うーん…役作り…笑
強いて言うのであれば、「役作りをしすぎない」というのがこだわりなのかも知れません。
「役の履歴書に捕らわれがちな面がある」といった内容のご指摘を頂いた事がありまして。
自分自身も、こんなに演技ってやりにくかったっけ?と困っていた時期だったので、このご指摘に目から鱗が止まらなかったんですね(笑)
それ以降、自分の頭の中の理屈は程よい所で手放して、相手役とのやり取りなど、舞台だからこそのライブ感を以前よりも大切にするようになりました。
会場の大きさや、お客様のテンションや温度も、結構ダイレクトに影響してくるものでして。
そういう目には見えない雰囲気やオーラで、役が「役の履歴書」を越えていく瞬間は往々にあります。
なので、私個人が役作りをしたというよりかは、台本の言葉、共演者、演出家、空間、お客様など、様々なことが複合的に絡み合って、今回の律子が出来上がったと思っています。

⑤熱帯樹を演じてみて、新しく自分に備わったものとは?(役者としてでも、人間としてでも)
―備わったものと言いますか、得たものは、指導への探求心という答えになるのかな。
実は、狂天動智。
大々的に、台本を持たずして動いて演技をするってのは初めてなんですよね。
以前にも、「一部台本を持たずに演技をしている役がいる」っていうものはありましたけど、「全員台本持ちませんから!」ってのは本当に初めて。
なので、熱帯樹の休憩後のシーンを作っていく際は毎回戦いでしたね(笑)
演出の山本の指導が届かないと言いますか。
俳優も、狂天動智の作風で動くことに慣れていないので、指導の根本部分が理解できていなかったり…。
演出、プロデューサーと色々話し合った結果、一部指導には鶴坂も参戦しよう、と(笑)
そうなってからは、毎晩頭を悩ませましたね。
今の自分は当たり前に出来る事だけれど、昔の自分は当たり前に出来なかった。その事を、どうやって先輩方に教えて頂いたのか、叱って頂いたのか。いざ、自分がやってみると、なかなかに難しいものです。
キツい言葉をわざと選んでみたり。
些細な事も誉めてみたり。
稽古中に、微妙に動きの間合いを変えてみて、反応があるか試してみたり。
色々やってみました。
私もまだまだ修行中の身なので、偉そうなことは言えないのですが、そんな中での、杉本、山岸の成長を間近に見れた影響はとても大きかったです。
ただ、やはり。
伝えたいことが伝わりきらなかったなーという申し訳なさもあります。
やっぱり、指導のボキャブラリーが少ないんですよ。
手を変え品を変えとかよく言うけれど、変えられる手すらない(笑)
だけど、自分より年齢や経験の若い俳優さんへのアプローチの仕方を探すのは、決して稽古場だけとは限らなくて、日常の色んな所にヒントがあると思うんです。
なので、以前とはまた違った形で模索しながら、プライベートの時間を過ごすようになりました。
そんな気持ちが、プライベートでのチャレンジの後押しになったこともありましたし。
きっと以前は、自分の芸の肥やしの事しか考えられなかったんでしょう。それが年齢や経験で見えるものも変わってきた。興味を持つことも変化してきた。この自分の変化も備わった事と言えるかも知れませんね。

⑥2020年の抱負
―健康第一!
もう、これしかないです。はい。
体が資本ですからね。はい。
病院の先生に「もう若くないんやからね!」と全力でお叱りを受けましたので、その反省を生かしたいと思います。
オススメの健康法とかあったら、是非教えてください(笑)
後、前厄にも突入しましたし、オススメの厄払い方法やスポットも知りたいですね!
荒業ではない限り、前向きにチャレンジして厄を落としたいと思います。
皆様も、健康には十分にお気をつけ下さいませ。

⑦ご来場頂いたお客様、インタビューを見て頂いている皆様に一言
―改めまして、今回お越し頂いた皆様にお礼申し上げます。
当日はお越し頂けなかったにも関わらずインタビューを読んで下さってる方も、興味を持っていただき誠にありがとうございます。
私事ではありますが、30歳に突入しました。
過去の自分は、30歳になった頃には役者を辞めているだろうと信じていたのですが、こうして有難いことに皆様の前にいます。
ですので、30歳以降の「俳優 鶴坂奈央」のイメージなんてこれっぽっちも抱いていなかった為、逆に今とても真っ白な状態でいるような気がするんです。
これから先、皆様との出会いで真っ白な鶴坂に色んな色が加えられていきますように。
どうぞ、応援よろしくお願い致します。
皆様に劇場でお会いできる日を、心待ちにしておりますね!
ありがとうございました。

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鶴坂奈央△Nao TSURUSAKA
奈良県出身。1989年12月25日生まれ。
2011年、文学座附属演劇研究所卒業。
2014年、大学の卒業を機に、フリーの俳優として舞台を中心に活動を開始する。
山本善之演出の作品に多く出演している。
その他の出演作品に、『繻子の靴』(2016年、2018年/渡邊守章演出)等がある。

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