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珈琲ゼリーを珈琲で流し込むヘルタースケルターな土曜日

人生とはままならないものである。

実は今週木曜日から大分の温泉旅館に家族3人で一泊旅行をする予定だった。
その翌日は息子をサファリパークに連れていくワクワクプランとなっていた。

私達家族にとってそれは初めての家族旅行になるはずで、私と夫は1ヶ月前からその日を心待ちにしていた。

人生とは・・・ままならないものである。(噛みしめる)

息子が保育園からヒトメタニューモウイルスという、言わば風邪の酷い版を頂戴してきてワクワクプランはおじゃんとなった。

連日40度近い高熱、止まらない咳、滴り落ちる鼻水にぐったりする我らが息子、福太郎(仮名)。
何故だろう、熱を出した幼子は抱っこで身体が宙に浮いた状態でしか眠らない。

抱っこ。
すやすや。
そっと布団に下ろす。
ギャン泣き。

抱っこ。
すやすや。
念を入れて抱っこ。
深いすやすや。
そっと布団に下ろす。
ギャン泣き。

抱っこ。
すやすや。
抱っこしたままそっとソファーに座る。
ギャン泣き。

何故だ。
私は座ることすら許されないのか?


看病2日目にして私は息子からヒトメタニューモウイルスをうつされて発熱した。

ゼロ距離から顔面に飛沫を浴びまくっていたのだから当然といえば当然である。

頼みの綱である夫は4日目の明け方、身をよじり泣き止まない息子を抱え、虚ろな目をして私に言った。

「俺が死ぬのと福太郎が死ぬのどっちがいい?」(訳:もう俺は限界だ)
どっちも死ぬな。

気持ちは分かるが言い回しがもう最高に面倒くさい。
この非常事態に、何言っちゃってるのふざけんなオブ・ザ・イヤーである。

兎にも角にも発熱した子供というのは本能的に母親を求めるものらしい。

夫の抱っこではなかなか息子が泣き止まないため、発熱中も、私は度々夫に代わり抱っこに駆けつけていたのに、夫は子供の熱が下がらない不安と疲労、睡眠不足から、世界で俺だけが一人で頑張っている悲劇のヒロイン状態に陥っていた。

おい、この家でヒロインは私一人だ。
誰にも譲らんぞ。

この時点で既にお互いに軽く限界突破していたため、大喧嘩となり夫は怒りに任せて車でどこかに出かけてしまった。

物音を聞きつけた義母が
「なんかすごい勢いで出ていったけど大丈夫かな?自分が事故る分にはいいけど人を轢き殺しでもしたら…」
とあらぬ心配をしていたが、夫は15分足らずで戻ってきた。

「お義母さん、事故も轢き殺しもせずに戻ってきましたねw」
ついつい茶化してしまうのは私の悪い癖である。

夫は、自身のとんでも発言の翌日、タイミングを見計らったかのように発熱し、いそいそと戦いのリングから退場してしまった。
夫、有事の一歩手前ではちっとも輝かない男であった。

かくして私のワンオペ看病が幕を開けた。

抱っこ。すやすや。そっと布団に下ろす。
ギャン泣き。
抱っこ。すやすや。念を入れて抱っこ。深いすやすや。そっと布団に下ろす。
ギャン泣き。
抱っこ。すやすや。抱っこしたままそっとソファーに座る。
ギャン泣き。

試みる全ての工夫は水泡に帰し、結局のところギャン泣きという帰結に至る。

絶望だ。

ヒトの小賢しさなど圧倒的大自然(幼児)を前に無力というほかない。

虚無だ。

あの日私は、漫画版ナウシカが覗いたのと同じ深淵を覗いた。

うっすらと白んでいく明け方の空気を厚いカーテンの隙間から感じながら、ようやく布団の上で寝息をたて始めた福太郎を見下ろす。
何故熱を出した子供は明け方に寝付くのだろう。

この一週間で私の健康寿命は二週間ほど縮んだはずだ。

明け方4時、息子を抱っこしたままAmazonでリンツのチョコレートを買い、夫にバレないようにそれを受け取った。
一粒だってくれてやるものか。

福太郎は昨日初めて夜中2時から一度もギャン泣きで目覚めることなく眠ってくれた。

どうやら回復傾向にあるようだ。

久しぶりに深くお昼寝をしてくれた息子を眺めながら、私も本日1週間ぶりのブレイクタイム。

何故かアマプラでヘルタースケルターを見ながら珈琲ゼリーのお供に珈琲を嗜む。
色々とヘルタースケルター(しっちゃかめっちゃか)

子供がいる部屋で私は何故それを見ようと思ったのか。
この7日間息子に合わせて気が狂うほどトイ・ストーリーとモンスターズ・インクを見ていた反動か。
そういえば珈琲ゼリーのお供は何が正解なのか?

そんなこんなで今週まるっと自身の発熱及び子供の看護で有休を取得した。

先週、職場の同僚に対するもやもやを愚痴らせてもらったが、今週その同僚に業務フォローをしてもらっている。

偉そうに他人を批判などするものでない。ほんとに。

人は皆他人に少しずつ迷惑をかけながら生きているのだ。
最近少し傲慢になっていたかもなと反省。

明日もまた少し昨日より元気になった息子と会えますように。
とりあえず、お願い、今夜もぐっすり眠っておくれ。

じゃないと私、老けちゃうから!(切実)

夫の名誉のためにフォローしておくと、高熱を出しながらも息子を連れて毎日小児科通いは続けてくれました。
そして今もまだ寝込んでいます。
いい気なもんだな!

思いやりの心は、充分な睡眠や、心の余裕があって初めて発揮できるものなのだなぁ。

自分のキャパシティの狭さ、夫の平時のか弱さ、そして息子の大切さを痛感した試練の1週間。

今夜と明日がどうか平和でありますように。

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たいたい
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