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旧三井家下鴨別邸

下鴨神社のすぐ近くに、もともと三井家の別邸だったお屋敷がある。前を通ると、高い壁と広い庭に囲まれたお屋敷の3階部分だけがチラリと見える。

建物の1階とお庭は数年前から一般公開が始まり、2階と3階は年に数回だけ、期間限定で特別公開されている。

台風21号が猛威をふるった直後に行ってみると、お庭の大木が無残にも根こそぎやられていた。倒れた電柱より、割れた窓ガラスより、木が倒れているのを見ると本当に悲しい。修理して直せるものじゃないから、やるせない気持ちになる。

下鴨別邸は、江戸時代に作られたらしいお茶室、大正時代に作られた主屋、昭和になって増築された玄関棟という3つの時代の建築物がくっついた変わった形のお屋敷だ。主屋はもともと、木屋町の鴨川沿いに建てられていたものをわざわざ下鴨まで移動させたというから、三井家の財力恐るべしである。(しかもこのお屋敷は、三井家の御霊を祭る神社にお参りするためだけに作られたらしい。三井家、すごすぎる。)

庭に面したお座敷の窓ガラスは、今はもう作り手がいないという貴重な大正ガラス。向こう側が波打って見えるロマンチックなガラスだ。

揺れたガラス越しに庭を眺めると、緑の苔は雨に濡れたみたい青々して見えた。庭の中心にある池に百日紅の赤い花が浮かんでいた。

“大正”って、なんでこんなに惹かれるんだろう。和と洋の交ざり具合にグッとくる。2階へ続く急な階段は、大正生まれだったおばあちゃんが住んでいた町家の匂いがした。

一緒に来た友達と「三井家に生まれたかったなあ」と言い合いながら、細部まで観察して回る。

これはお風呂場横の洗面所にあった窓の細工。外の緑が見える。

細かい意匠もいちいち凝っていて、こだわりが詰まっている。

このランプ、大好き。窓の模様もいい感じ。

4畳ほどしかない3階部分は、全面が窓ガラスで、戸袋を窓の下側につけたことで死角をなくしたというこだわりっぷり。木屋町に建っていた頃には、京都の中心部と鴨川の流れと東山を見渡せたんだろう。夜には優雅に月や星を眺めながら晩酌したりしたのかな。

下鴨に移ってからは、大文字を見るための特等席だ。今年も10名限定でここから送り火を見るという贅沢な会が開かれたらしい。最高…。でも1人3万円(下鴨茶寮のお食事付き)。

大文字は諦めて特別公開の時に上ってみたいと思った。今度はお茶室にも入ってみたいな。

三井さんちを出て、ついでに下鴨神社へ行く。

糺の森に入ると、入り口で大木が倒れている。「えっ、えっ、まさか…」と思って進んでいくと、至る所で大木が何本も、ばたばたと倒されている。ポッキリ折れている木も、歪んでしまった木もある。あんなにうっそうと茂っていた糺の森の緑の色が薄くなってしまった気がした。微力ながら募金をして帰る。

何百年も生きてきた堂々たる木々が、数時間の台風で倒されてしまうなんて。

人間がどんなに頑張って守ろうしても、自然の力には到底かなわない。せめて、今残されてる遺産を大切にしたいな。

#日記 #コラム #京都人の京都観光 #旧三井家下鴨別邸 #下鴨神社 #糺の森 #ある日のこと



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