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十分間電撃文明—大脳の梅おにぎり—

出産後、微妙な母乳量を増やすために頻回授乳、長時間授乳になりました。

何時間も膝に抱えて授乳して自分のトイレも行けない。
暖かいご飯も、チンが終わると泣き声に呼ばれていつもお預け。わんわん。ウキキ。

お猿の親子で結構。ずっとくっついている。冷たい食べ物で結構。お猿だから。食べられるものを口に物を入れて。休む。

猿の親子になりきって、幸せです。
今必要なのは、穏やかでいることなんだよー。掃除洗濯気にしすぎてイライラするのが赤ちゃんにとって一番良くないって色んな研究でも言ってるよー。

しかしそこへ、ニンゲンがやってきました。

料理という人間活動をしています。食べ物を持ってきました。でも授乳で両手が離せません。

「食べさせてあげよっか?」

(実になるものならまだしも、この冬の最中冷たい豆腐サラダです。)

猿はみじめでみじめで泣きました。ボロボロと、赤子に声を聞かせないように泣きました。

確かに最初の方は、手が離せないから食べさせて、と食べさせてもらったこともあります。
猿になりきって育児をすることで、色々できないストレスを抑えるのに成功していました。

しかし、ニンゲンとの乖離を見せつけられたり、ニンゲンらしい姿を求められることで、猿の中で惨めさが積もっていたのです。

「本当は料理したいのは私だよ」
「暖かい好きなものを自分の手で食べたい」


それができる立場にあるニンゲンの様子を見るだけでも、辛くて涙がでました。

顔を見るなり泣かれるようになったニンゲンは言いました。「俺だって疲れてるんだよ…」

ある夜、猿は色々なことが耐えきれず子猿と旦那を置いて遁走しました。


「もう今夜戻らないからね!」


向かった先は、20m先のコンビニです。

びっくりしました。
沢山の商品の中から、好きなものを選んで良いのです。
猿は、梅のおにぎりを取りました。
びっくりしました。
お店のニンゲンが、猿に値段を言って商品をレジ打ちして、商品をビニールに入れました。お釣りを渡して挨拶しました。

すごい。人間の文面の光、夜中のコンビニを背に、梅おにぎりの包装を剥き、食べました。

すごい。食べたくて買ったものをすぐに食べている。
すごい。食べ始めてから食べ終わるまで、邪魔されることがない。

1ヶ月半ぶりのコンビニは、人間の文明でした。そして、人間らしさ、人間の尊厳というものが良くわかりました。


衝撃の十分間に目を輝かせ、子猿とニンゲン雄の元に戻りました。

ここでわかるのは、コンビニで買い物をする際の、大脳を使う高度な活動が、電撃のように気持ち良かったということです。

人間ゆえの高度な活動を、自分の脳はこんなにも求めていた。
ある程度は想像していましたが、予想以上でした。

コンビニに行くこと、後々カフェに行けたことも文明の電撃が走りましたし、ウェブ仕事の作業、義父に頼まれた年賀状のデジタル作業も大脳の喜びにあふれていました。

疲れているはずの育児ママが、働きに出たいとか、職場は天国と言う意味を実感しました。

人間は、持っていて動くなら大脳を使いたいんです。
赤子も同じです。自分で片付けたいし、色々自分でやりたい。

封印していた大脳活動、赤ちゃんを連れて一緒にお店でお買い物する、隣の駅まで行く、どれも嬉しかった。

私の大脳活動でまだ再開していないのは、お洒落バーでのお酒。

これは封印が長いので、すごい電撃が走りますぞ…。




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