先生の自作教材と市販教材の違い
今回は,先生の自作教材と市販教材の違いについて考えていきます。
先生の自作教材と市販教材で大きく異なるのは,対象となる生徒です。先生の自作教材を使うのは,ふつう先生の授業を受講している生徒だけで,先生の自作教材はその先生の授業の理解度を高めるためにカスタマイズされたものです。ふだんから先生の授業を受講している生徒にとっては,わかりやすい内容かもしれません。
しかし,その先生の授業を受講していない生徒にしてみれば,先生独特の説明の進め方や表現などに慣れていなくて,理解しづらい可能性があります。かつて現役高校生専門の予備校の本社で働いていたころ,「自分のやり方がいちばん」と思っている先生どうしが,他の先生の指導方法を批判しあうのをたびたび見かけました。先生ごとに教え方には個性が出ます。
それに,教材で扱っている内容が偏っている可能性もあります。予備校では,例えば「中村の物理」のように講座名に先生の名前が入った授業のことを冠講座と呼ぶのですが,ベテランの先生からは,
「生徒には冠講座は絶対に勧めない。第三者のチェックが入っていない先生オリジナルのテキストを使う講座は,好みや偏りが大きく出る」
と言われたものです。
一方,市販教材は日本全国の生徒を対象としています。内容の一般性とわかりやすさが求められますし,紙面のミスに対して細心の注意を払う必要があります。そのため,第三者による内容チェックが入ります。
授業を受講している生徒だけを対象にした先生の自作教材と異なり,市販教材は不特定多数を対象としたマスメディアとしての側面があります。これが先生の自作教材との最も大きな違いと言えます。
ところで,先生が「あの参考書(問題集)はダメだ」などと批判することがあります。もちろん,本当にダメな参考書や問題集もありますが,多くは先生の指導方針に合わないからのようです。参考書や問題集への批判は,前述のように他の先生の指導方針を批判するのとあまり変わらないようです。