HAPPY BIRTHDAY, YEONJUN!!
本日はヨンジュンの歌い出しが最高な件についてお話したい。
まず歌い出しの定義であるが、私はヴァース、J-POPで言うところのAメロだと考えている。サビのメロディから始まる楽曲なども存在するが、基本的にはAメロが起承転結であるところの「起」だと感じるので異論はあるだろうがそうさせていただく。私調べによるとTXT楽曲全60曲のうち、16曲の歌い出しがヨンジュンだ。1位は18曲のボムギュ、ヒュニンカイ10曲、スビン8曲、テヒョンが7曲という内訳になる。
この一覧を見ると、混沌の章以降で増えてきたことがわかる。興味深いことにValley of LiesとDo It Like That、そして(テヒョンと二人ではあるが)PS5、コラボ曲でTXTメンバーとして最初に歌うのはすべてヨンジュンである。先陣を切っていてかっこいい。最初を任せたくなる何かがあるのだろう。実際ヨンジュンの声質は魅力に溢れ、彼固有の雰囲気を瞬時につくりだすことができる。発音の歯切れがよく自然な弾力があって輪郭がはっきりしており、乾いた声は快晴のビーチと夏とタンクトップがよく似合うけれども、普段の話し声を聞いてもわかるように煌めく仄暗さが同居している。2021年からヨンジュンの歌の素晴らしさに着目していた私であるが(こんな記事を書いていた: ヨンジュンとテヒョンの歌声が良すぎる件)、昨年ご友人のともさんと「TXTのボーカルを語る会」を開いた際、20cmの良さに深い感銘を受けた。ちなみにともさんは各メンバーの歌声分析の記事を書かれているので、とにかくまず読んで震えてほしい。
スペース、20cmの話は4分30秒あたりからしています。我々の声のデカさに差があるのはご容赦ください。
この曲の雰囲気を活かすために、ヨンジュンはわざと本来の拍からずれて歌っている箇所がある。スペースで散々話した通り、私が一番感動したのは「나의 맘」というフレーズ。
杓子定規にリズムに合わせるでもなく、かといってわざとらしくもないこの絶妙な匙加減に気づき、彼が「伝説の練習生」と言われた理由の一端を垣間見たように感じた。
さて本題に戻ろう。
1. イントロなき歌い出し
Maze in the Mirror、What If I had been that PUMA。この2曲は正真正銘ヨンジュンの声から始まる。正確にはMaze in the Mirrorはヨンジュンの息継ぎから始まる。なんと冒頭の1秒間は息を吸う音である。
イントロのない曲はDo It Like Thatを含めて10曲あり、そのうち息を吸う音で始まるのはCat & Dog、Maze in the Mirror、Everlasting shine、ひとりの夜の4曲で、Maze in the Mirrorが最も長く息を吸う音を収録している。すみません。いきなりこんな話をして困惑されたと思うが、要するに息継ぎの音を聴かないのは非常にもったいないことであり、その音を入れるか入れないかはプロデューサーの裁量にかかっている。神は細部に宿る。GhostingやThursday’s Childにはなく、Cat & Dogにあるのは面白いと思った。
ところでACT:LOVESICKのMaze in the Mirrorの映像を見てみると、ソウルコンでも横浜公演でも息継ぎらしき音は目立たなかった。Frostからそのまま自然に移行している。一方SHINE X TOGETHERでは確認できた。SHINEの方はVCR明けの最初の曲なので「始まり」の印象が強い。つまりヨンジュンはそれほど大袈裟に息を吸わなくても歌えるが、その曲がどういう位置づけなのかによって息を吸うニュアンスまでも変えている可能性がある。
2. ライブ、それは瞬間芸術
私がいま部屋で「うわやべぇ~~~!!!」と叫んだのは何かというと、ACT:LOVESICKソウルコンのMagic Islandである。ここに動画を貼れないのが誠に残念だが、デジタルコードをお持ちの方は1:10:48に飛んでいただきたい。なお原曲はこちら。
寂しさを含んだ原曲の声色に比べて三連符のリズム感が活きた明るめの歌い方になっている。穏やかな微笑も素敵。フレーズの終わりが緩やかに遅れるのがとても良い。さらに最後のI miss youのところ、音源ではエフェクトがかかり引っ込められていて終わりの方などほとんど聞こえないくらいだが、ライブではそれが解放されている。ヨンジュンは声量があることに加えてマイクへの乗りがぶっちぎりでいいのだと思う。だからこそ音源には乗せきれない抑揚がコンサートでは惜しげもなく現れている(気がする)。
ソウルコンの43:48からは「What If I had been that PUMA」「LO$ER=LO♡ER」「Trust Fund Baby」と3曲ヨンジュン歌い出しが続く。What If I had been that PUMAは音源よりラジオボイスのようなエフェクトがかなりマイルドなのでメンバーの声がクリアに聴こえ、やっぱりテヒョンの歌声が大好きだと思った(突然の脱線)。続くルザラバも、ややラフな雰囲気を醸しつつ肩の力が抜けたような軽やかさで歌うのは実に見事だ。そしてやはりTrust Fund Babyのような曲こそヨンジュンの本領発揮ではないかと思う。
これは正直元音源からして素晴らしいので比較するまでもないのだが、スロウテンポの曲の方が歌い方の違いが出やすいように思う。こういう風に歌ったらどうだろう、というアイデアが彼の頭に満ち満ちているのかもしれない。gameoverの部分だけ集めた動画とか欲しい。
言うまでもなくヨンジュンはMake some noise力(ステージを盛り上げるセンス)に溢れている。特にこういったパンチの効いたメロディはライブにとてもハマる。私は땀が大変好きなのでイントロを耳にするとおとなしく座っていられない
3. 0X1=LOVESONG (I Know I Love you)について
言わずもがな私がヨンジュンの歌い出しの良さに目覚めたのはこの曲なので尺をとらせていただく。
私はこのフレーズがゼロバイの芯だと思っている。「I know I love you」が君に対する主張なら、それよりいくらか冷静な「이 제로의 세계 속 I know you're my 1 & only」は自身が生きる世界に対する主張と言っても差し支えない。この主張は少しずつ形を変えて何度も登場する。ゼロバイにおける大事な前提を歌うのがヨンジュンなのだ。私はそれぞれのメンバーの歌声を様々な理由で推しているが、この歌い出しはヨンジュン以外ありえないだろうと思う。この歌い出しに胸を掴まれたあなた、ゼロバイ沼へようこそ。
この歌い出しは、まさに天と地のような場面転換でもある。イントロで仲間たちと跳ねていたひとときはテヒョンの「I know I love you」が響き終わると同時に嘘みたいに消え、ゼロバイくんは膝をつきマンホールに落ちる。物理的にも音楽的にも高低差がある、印象的なシーンだ。ひとり(+金魚たち)で部屋にいるゼロバイくんはマンホールを模したように最小限の明かりを灯し、まるで暗いところが落ち着くからそうしているようでもある。切っても切れないゼロバイくんとマンホール。その歌い出しを務めているヨンジュン。頬にかかる黒髪が実に魅力的だ。
前項で「ライブ最高!」と申し上げたが、無論この歌い出しもライブ最高である。まずは原曲を聴こう。
無理やりカタカナで表記するなら、「(イ)ゼー(→)ロエセーッゲッソーガイノヨー(→)マイウォ~ネン⤴ノー(→→)ンレ....ッ」のようになる。歌詞カードにこそ「제로」と書かれているが実際にはジェロではなくゼロと発音される。「→」はなにを意味するかというと、あえて抑揚をつけずに平坦ぎみに歌っているところである。ヨンジュンは「あえて平坦」の使い手であり、おそらくラッパーという背景が大きいのだろうと思う。Happy Foolsの「マンヌンデー」「オンヌンデー」の「デー」が代表するように、感情を排したような「あえて平坦」は心地いいものだ。感情を排す。これが、ゼロバイの歌い出しには必要な要素だと思う。初めから感情的なのではリスナーは疲れてしまうだろう。音源ではコンプレッサー処理(音量を均すためにバランスを調整する処理)がかけられていることもあり、「あえて平坦」が際立っている。他にも、「속 I」を繋げて歌うことによりパッチムとIがリエゾンして「ガ」の音が生まれていてその連続が厭世的な響きをつくり出していたり、「セーッゲッソー」「ウォ~ネン⤴」にはむしろ躍動感があったり、とにかくこのワンフレーズだけでこんなに面白いのだ。朝と夜、夏と冬、白と黒を反復横跳びするようなamazing表現力だ。ちなみにレコーディングはこんな様子だった。
この素晴らしい原曲を踏まえてパフォーマンスを聴いてみる。YouTubeで見られるステージの中から厳選して11個選んでみた。
210603
「ゼ~~ロ」でぐっと前進するライブ感がいい。「セーゲッ」の勢いがよくて、(言い方はあまりよくないが)吐き捨てるような荒さがあるのもいい。21秒のあたりで右脚を少し後ろに引いてから前に出す動きが優雅で素敵。移動の関係だと思うがヨンジュンだけがやっている。
210606
マイクの反響が少なくて歌いづらそうだなと思うもののそれを物ともせず、「you're my 1」あたりにリズミカルな持ち味が出ている。最初の「イ」もよく聴こえる。そしてこの表情。贅沢なカメラワークだ。
210613
これは……! 11個中の1位かもしれない。「you're my 1」が徐々に大きくなって「1」で音が広がるの、絶品すぎる。鼻に響かせて歌いながら「ウォ~」をさらに押している感じ。前半を淡々と歌うからこそ効いてくる。oneが羨ましくもなる。
210618
「セー」のビブラートが耳心地よい。踊るステージよりも一層落ち着いた雰囲気で、10年後のステージをいま見ているような気さえする。このバージョンをライブで聴きたすぎるな。
210621
この日はある意味で原曲に近く、落ち着いたトーンに安心する。反響がいいのでテヒョンの「you」がいつになく増幅されていて好きだ。改めて見ると、膝をつく前のヨンジュンはかなり首を振るんだな。
210625
こんなにガン飛ばしてくる回は後にも先にもないと思うので選考。こんなゼロバイくんなら部屋でじっとしていられないだろう。バットでうりゃうりゃやっているところを見ると元気が出るし、カラカラ..と床に転がる音までがセット。
211112
日本語版から。「ly」の息の抜き具合が絶妙だ。「ly」も日によって全然違う部分で、しっかり歌っているときと消え入りそうなときがある。「世界で」の活舌のよさにも拍手。
211201
「ゼ~」の音色が今までにない質感で、まったく新しいゼロの世界が開けている。残念ながら隠れていて真偽不明だが、口を横ではなく縦に開けて喉に力を込めるとこういう声になる(気がする)。そのあとのパートも少し遅れぎみに歌っていて、そういう気分だったのか機材の関係かわからないがちょっとした特別感がある。
211217
いつにも増して力強い始まりに感じられる。表情も明るくて眉毛がキリっとしているのもいい。年末の空気(あるいはぴょいんぴょいんするマイク)がそうさせたのかもしれない。青いステージはやっぱり綺麗だし、32秒あたりで離れたところから映しているのもいい。火花も散ってるし。
230104
月日は流れた。彼らは一体、これまで何回ゼロバイを歌ってきたのだろうか。その積み重ねを表すかのような、抜群に安定した歌い出しだ。祭典らしく「you’re」が「よん⤴」と跳ねているのがいい。私は海外公演のゼロバイを見るのが好きだ。この曲が地球の至るところで愛されていることを目の当たりにできるから。合唱している映像なんて泣けてくる。
以上、ヨンジュンの歌い出しの良さについて5千字ほど語らせていただいた。唯一無二の声・表現力・臨機応変力が邂逅した類い稀なボーカリストであることが少しでも伝わったら幸甚である。ほとんどゼロバイの話になってしまったが、この大半を書いた日(9月12日)は私がゼロバイMVと出会った日なので大目に見ていただきたい。
ヨンジュン、誕生日おめでとう。弟たちが面白いことをするとうひゃうひゃと笑っている、時にはいたずらに加勢する、チャーミングなあなたが好きだ。眉毛の動きを眺めているだけで飽きない。「公演が終わるといつもやり残したような気持ちになる」という会報のインタビューを読んで驚いてしまった。ヨンジュンが全力で仕事ができるように、遠くから応援しているよ。
公開ラブレター(誕生日シリーズ)、とうとう2週してしまいました。あっという間の2年間、なぜだか感慨深いです。3周目に書くことはだいたい考えてあるので、まずはカムバを楽しみましょう。テヒョンが「이번 컨포 모아들 기절할듯..」とコメントしていたので気を確かに行こう。