京屋のはじまり物語 2巻 ~始まりのはじまり~
修行の日々
やがて、主人の紹介で、近くの橋詰友禅工場に勤めるようになった松寿。昔から染色技術は門外不出のもので、雇われと言えども工場で働くことはなかなか許されませんでしたが、人柄を信用されたのか、松寿は念願の技術習得の場で働けることになりました。
そうはいっても、階級意識の強い世界だったので、意地の悪い先輩や仲間から嫌がらせを受けたり、わずかの給料で食事もろくにありつけなかったり、それはそれは辛い日々を過ごしたのでありました。しかし、むしろそれは松寿の闘志に火をつけ、「ねばりの岩手県人」の精神で普通なら10 年もかかる修行をわずか4 年半でものにしてしまったのでした。
京屋染物店の誕生
そして、京都での修行生活を終え地元一関へ帰ってきた松寿。大正7年、22 歳で念願の独立。人生を大きく変えた京都での出会いやご縁に感謝して「丸京」を名乗り、「京屋染物店」の歴史の幕が開けたということであります。そこから「感謝・人との縁を大切にする」という精神が代々受け継がれ、時代の流れに合わせながらも、京屋染物店は今日まで100 年もの月日を刻んでこれたのであります。次の100 年もきっと。めでたしめでたし。
つづく…