映画評『素晴らしき哉、人生!』
こちらもAmazonプライムで視聴した映画です。
1946年公開『素晴らしき哉、人生!』
アメリカではクリスマス・イブの日にはテレビ放映される映画としてなじみ深い映画のようです。
監督はフランク・キャプラ。
正直言って、公開時はそれほど興行収入が振るわなかったとか。
しかしその後、数十年が経ってテレビ放映されるようになりました(現在はパブリックドメイン)。
若い世代にフランク・キャプラの名を浸透させた映画らしい。
脚本術の本でもよく登場するので、ぜひ一度観てみたいと思っていました。
物語はざっくり言うと、すごく良い人の話である。
主人公のジョージ・ベイリーは小さな町を出て行って世界で活躍したいという夢があるが、父親が急死したことで住宅金融の会社を引き継がなければならなくなり、その夢を諦める。
ポッターという町を牛耳ろうとしている大富豪から町を守り、人々のために安い金利で住宅ローンを組んであげたりと、町の人たちのために自分の夢を犠牲にして尽くしてきたジョージ。
しかしある日、会社の金が無くなってしまったことで破産の危機に。
絶望に打ちひしがれるジョージのもとに現れたのは第二級天使のクラレンス。
彼は自殺を図ろうとしていたジョージに、もし彼がいなかったら町はどうなっていたかを見せて、生きる希望を取り戻させようとするのだった。
あらすじとしてはこんな感じ。
けど、かなり丁寧に物語を追っている。
何と言ってもジョージの幼い頃から始まり、大人になり、結婚して子供を得ていくまでを、映画全体の半分以上を使って描いているのだ。
この辺り、テンポを重視する現代映画とは違って、40年代の白黒映画らしい感じはする。
それがまた味わい深く、今の世代(僕も含めて)の人たちにはとても新鮮に楽しめるんじゃないだろうか。
これはいわばヒーロー(ジョージ・ベイリー)の物語だ。
彼が自分を犠牲にして町の人の為に働く姿はとても胸に刺さる。
そして何より、その行為は、たった一人の行動、たった一人の存在とはいえ、もし彼がいなかったなら……と考えると、町のあり様を変えてしまうほどなのだ。
たった一人のちっぽけな人間であっても、ジョージのような男には世界を変え、人々を変え、皆に希望を与えてくれる力がある。
そんな、人間という存在に対する考え方をも、変えてくれる映画だった。
ネット社会である現代ではテンポも大事である。
けど、こういう映画を観ると、ゆっくり丁寧に人生を追っていく映画もまた良いものだと思い返させる。
アメリカではないが、僕の胸にもフランク・キャプラの名は刻まれたことだろう。