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なぜあなたに書籍化の相談が届かないのか

 今回「なぜあなたに書籍化の相談が届かないのか」について、現役編集者の立場から考えてみたい。

 もちろん、多様なコミュニケーションやマネタイズの手段がある今、誰もが書籍化を目的に表現をしていないことはよく分かっている。なので「自らのコンテンツが出版という形で世に出ること」に関心がない方は、今回の記事はぜひ読み飛ばして欲しい。

 なぜ声がかからないのか? それを編集者の立場から言い直すのならば「どんな相手に声をかけるのか」となるだろう。

 こう書けば、大柄でなんだか嫌な感じである。しかしそれを承知で続けていくと、おそらく「すぐに声をかける相手」であり「コンテンツ」は以下だ。一読すればおそらくわかっていただけるが、実はそれ、ごく一般の方が想像するイメージとほとんど変わらない。

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1、「その本があれば買う」と思えるもの

 そこそこ本を読んだり、書店に足を運ぶ機会がある方なら、著者にせよ内容にせよ、「今、あの人の本が出ていれば買うのに」「ああいう内容のものがあれば欲しい」というイメージが、一つくらい浮かぶのではないだろうか。

 はっきり言えばそれだ。

 18年の今、テーマで言うのなら、「起業家」「働き方」「食べ方」「前澤社長」「スポーツの暗部」「パワハラセクハラ」「国粋」「これからのお金」などだろうか(自分が出したいかどうかは別として)。

 そのイメージに近いものを、過去その人が書いた記事や話した内容、もしくは論文などを通じて見出しつつ、執筆してもらえる(もしくは第三者でまとめられる)見込みと、売れる見込みが見えたなら、結構な割合で編集者は著者へと声をかける。

 つまり書き手からすれば「執筆する見込み」と「売れる見込み」の2つを示すことができればいい、ということになる。とてもシンプルだ。

 実際、書店に並んでいる新刊を見ていると、もしくは新聞広告を見ていると、おおよそ2、3割程度の新刊はおそらくそのようにして形になり、書店に並んでいるように感じる。

2、「”自分だけ”は買う」ではダメ

 ここでさっそく1について、注意点がある。

 「その本があれば買う」というイメージについて「その本があれば”自分だけは”買う」ではほとんどの場合ダメ、ということである。

 もちろん、幾多のコンテンツからあなたがいち早く見出した「これからくる」もしくは「知っている人だけは知っている」というものには大変な価値がある。ただし、それが実際に本になってヒットするか、というと話は別だ。 

 なぜなら単純に、本が出たときの対象読者がかなり絞られてしまうからである。加えて言えば、そうした企画が社内会議を通過するのは難しい。

 ここで注意していただきたいのは、だからといって、それが「コンテンツ」として価値がない、という意味ではないこと。言いたいのは、あくまで「本」という商品、もしくはパッケージにフィットしない、ということである。

 完成形によるが、現状の会社組織や編集体制、印刷・製本技術、そして流通過程を考えるに、紙で作られて一般流通する「本」は2000部以上は作らないと割に合わないことが多い(電子版やオンデマンドなどの例外はあるとしても)。

 そして現実として、初版のうち半分以上は売れないと、大体の場合、出版社はまったく儲からない。つまり、紙の本を出す以上は1000人くらいの購入者が見込めなければ、そもそも採算が合わないのである。

 もちろん採算度外視で作る本もある。しかしそのようにして出せる数はどうしても数が限られるし、年間のラインナップからすれば、それは例外だ。

 また、それまでこの世にないような本を出す、ということは、書店に置かれる棚が用意されていない、ということを意味する。今回の話題からは少し離れるが、出版を考えるのならば「出した本を書店のどこに置いてもらうか?」という視点はぜひ持っておいて欲しい。

 ともあれ、電子版やイベントなどとのミックスでなく、「本」単体で利益を出すことを考えるなら、利益が見込めない限り、出版は難しい。特に「初著書」であればなおさら。つまり、上記条件を満たせなければ、残念ながら相談をすることはない、ということになる。

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3、「本」として出来上がった姿が想像できない

 意外と見落としがちだけど重要な視点だと思う。

 つまりこれは、そのコンテンツの全体像を見た時、文量や内容として、本にまとめられるものになっているか、という視点だ。最終的に物理的な「本」にまとめられるかどうか、という意味では2と近しいものかもしれない。 

 わかりやすい例がエッセイや日記。編集者の立場からすれば、持ち込まれることが多い素材の一つでもある。

 しかし多くのそれは、時系列などに沿っていても、特に一貫したテーマがないまま、思いついたままに書き進められているものも少なくない。そうなれば、そのコンテンツの「ウリ」がなんなのかが掴めないし、その「全体像」も掴みにくい。結果として、本にまとめるのはかなり難しくなる。

 逆にテーマがきちんと絞られているものほど、そして全体像がみえているものほど、物理的な限界がある「本」にまとめやすいことは、ここで言うまでもないだろう。

 ざっと思いついたことを記せば以上である。

 最後に整理をすれば「書ける見込み」と「1000部売れる見込み」が揃い、それでいて物理的な「本」にまとめられる可能性を提示できていれば声をかけられる確率は高い、ということになるだろう。

 そのほか、細かいことを言えばいくらでもある。ただ「初めての本」であることを考えれば、どんな場合であっても上記が前提になるのではないだろうか。

 もしここまで読み進められた方の中に「一つの通過点として書籍化を果たしたい」と認識されている方がいれば、ぜひ上記を頭の片隅に置き、その活動を進めていただきたい。それだけで、その可能性は飛躍的に上がるはずである。

※ちなみに私が思いついたままにダラダラ書いているこの一連のnoteこそ「声がかからないコンテンツ」の見本のようなものであります。残念ながら……

#出版 #編集 #本 #書籍化  

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