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詩作習作

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2024年3月の記事一覧

地元の子

名前も知らない花が咲く
いつもの角の植え込みで
いつか浮浪者のおじさんが眠っていた場所

赤ん坊のぼくの
泣き声を吸った小さな路地裏
埃っぽい花壇
取り込まれない股引き
油の固まった換気扇

斜向かいのうちの
新しい赤ん坊は
僕が通り過ぎた
たくさんの辛いことを
まだ知らないままに泣いている

余所者が通るたびに
違う声で泣く砂利道を
僕は四畳半の部屋で聞いて大きくなった

四畳半から僕がはみ出し

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生まれてこの方

稲刈りの終わった
秋の畦道に
祝福の満ちた
その畦道を
紺色のセーラー服の
深く涙を染み込ませた影
とぼとぼと歩いて行く

深く暴力的な
夏の緑が
暗く焼き付く
夏の緑が
あらゆる歓声を吸い込んで
うるさいほどの沈黙で応える
天まで届くその青に
おしまいだけがこだましている

全ての生命が
終わりを始める春
全ての生命が喚呼して
終わりを始める春に
山門をくぐる母と娘、その幻
祭囃子から逃げ回って

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サヨナラを先に

私が口を開くと
もうずっと止まらないから
サヨナラを先に伝えて
夕暮れまで座っている

私がボールを持つと
周りをみんな跳ね除けてしまうから
サヨナラを先に伝えて
一人毬をついている

私が鉛筆を持つと
全部真っ黒になるまで塗りつぶしてしまうから
サヨナラを先に伝えて
君と違うノートに向かっている

私が靴を履くと
夕日のその袂まで歩いていってしまうから
サヨナラを先に伝えて
お友達になんかならな

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望郷

もし、許されるなら。
もう一度だけ、あの海岸沿いを君と歩きたい。
なんのしがらみもなく。
なんの恐れもなく。
なんの屈託もなく。
ただ、あの穏やかな海岸線を、君と歩いてみたいと思うのだ。

砂に引いた一本のお芝居の線、その向こう側
すべての来し方が霧散し
すべてのつじつまが溶けてなくなり
私と、私の夢とが現れる

夢だから
夢だからこそ

なんのしがらみもなく。
なんの恐れもなく。
なんの屈託もな

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