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ありえない仕事術 読書記録12

その成功の先に幸福は用意されているか

深く考えずにいれば、学校を卒業し、どこかの会社に入り、何らかの競走に巻き込まれているのが既定路線なのです。もちろん「深く考えずにいれば既定路線に乗って生きていける」という状況がいかに恵まれているか、ということに関しては議論の余地もありませんが、今回はその先の話をしようと思っているのです。

私は今、完全にとは言わないまでも、競走の原理から距離をとって生きることができています。依頼されたら本を書き、雑誌の連載をし、企業のランディングの相談を受け、洋服を作り、映像を作っている。誰と競うこともなく、やりたいことをやりたいようにやっている。忙しくて嫌になる時もあるけれど、やりたくないことが一つもないからストレスがない。やりたいことが多すぎててんやわんやになっている子どもと同じ状態です。なので、学校を出て、会社に入って、といういわゆる既定路線にいた私が、どのようにして今の状況を手にすることができたのか、ということが本書の核になっています。つまり、「どうすれば仕事がうまくいくか」ということよりも「どうすれば善く生きることができるか」に主眼を置いているということです。そのためには、生存権を会社から自分の手に取り戻すということも必要になってくる。すなわち、自分であることを捨てずにこの世界で生きていくための力をどうやって手に入れるか、その方法を示すのが本書の目的です。

無駄なものなど存在しない

今あなたに与えられている役割が「自分でなくてもいいのに」と思えてしまうようなものであればあるほど、つまりその作業が無駄であると感じられれば感じられるほど、あなたは幸運な状況にあると言えます。なぜならそれは、それこそ最高に割りの良い修行だからです。私は自分の経験則から、これを確信しています。

会社員として艱難辛苦に耐え抜いて、それなりにスキルを身につけ、信頼を得られるようになってくれば、いつかチャンスが訪れる。そのチャンスをあなたは絶対にものにしなければならない。これまでの知識も人脈もフルに活用してフィールドに立つでしょう。そこで最後の最後、あなたを救うものは何か。それは「忍耐力」です。馬鹿みたいな話ですが、ありとあらゆる仕事において、成否を分けるのは結局のところ忍耐力なのです。どんな技術を持っていても、締め切りのギリギリまでそのクオリティを上げる忍耐力を持てるかどうか。踏ん張り切れるかどうか。それまで培ってきたものを生かすも殺すも、その培ってきたものをどれだけ駆動し続けることができるかに、最後はかかってくる。さらに言えば、幸運なことに1つ目のチャンスで成果を上げたとします。するとすぐに二度目が来る。なんとか踏ん張って二度目でもうまくいく。すると三度目、そして四度目。何かを達成すればするほどやってくるチャンスは増え、そのスピードは増し、要求されるレベルも上がってくる。それをものにし続ける必要がある。想像を絶する忍耐が求められます。そして忍耐が切れた時点で、成功の連鎖は止まる。一度落ちた「没落者」が這い上がるのは至難の業。これもまた、社会の残酷な一面です。「終わった人」という烙印は皮膚の奥深くまで焼き付けられてしまう。隠すこともできない。だからなるべく早いうちにあなたの望む成功を掴む前に、心を鍛えておかなければなりません。あなたが今向き合っている「雑魚作業」こそ、あなたが今後絶対に必要とする力を授けてくれるのです。

あまり知られていませんが、心は筋肉でできています。半分嘘で、半分本当です。スポーツばかりやってきて頭を使わない(そんなわけない)人が「脳筋(脳まで筋肉)」と揶揄されるらしいですが、脳がガッチリ鍛えられた状況は実際かなり強い、良くも悪くもこの資本主義社会では有能か戦力となるでしょう。さて、重量なのは「心は鍛えられる」という点です。反復運動で負荷をかけ、筋繊維を太くしていくように、心も太く強くすることができます。そして同時に、過剰なトレーニングが筋肉を損傷させてしまうように、精神的な負荷が上限を超えれば心を壊してしまうことにもなりかねない。その見極めは非常に困難です。

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