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「米中半導体戦争の勝者はマレーシア」(FT) — 投資を集める地域の3つの戦略

マレーシアで人々の話を聞いていると、経済が好調だという声を頻繁に耳にします。それを牽引しているのが北部のペナンだそうです。

英国の新聞「ファイナンシャル・タイムズ」は、2024年3月の記事で「マレーシアは米中半導体戦争の驚くべき勝者(Malaysia: the surprise winner from US-China chip warshttps://www.ft.com/content/4e0017e8-fb48-4d48-8410-968e3de687bf)」と報じ、中でペナンに触れています。

ペナンはマレーシア北部に位置する州で、工業と貿易のハブとなりつつあるようです。

ペナンの経済が好調な理由

ペナンの経済好調の主な理由は、半導体分野への工場の進出と海外からの投資が急増していることです。

地元紙マレーメールによれば、2023年にはペナンだけでRM60.1億(約128億米ドル)の外国直接投資があり、この投資額は2013年から2020年までに得た総額を超えています。

マレーシアは、地政学上の利益を守ろうとする企業にとって、中国を追い抜き、世界的な半導体産業の主要な目的地となりました。特にペナンには、米国のマイクロンやインテル、欧州のAMSオズラム、インフィニオン、そして中国のFengshi Metal Technologyなど、数十社が進出しています。

(Malay Mail)

ファイナンシャル・タイムズの記事によれば、ペナンは今や米国と中国の半導体技術の競争の中で中心的な位置を占めており、世界的な半導体市場での地位を高めています(Financial Times https://www.ft.com/content/4e0017e8-fb48-4d48-8410-968e3de687bf

特に、米中貿易摩擦の影響により、世界中の企業にとって魅力的な投資先となっており、米国のMicronやIntel、ドイツのInfineonといった大企業がペナンに工場を設立し、地域経済を支えています。

今日は私なりに、この理由を取材した中からまとめてみます。

理由1 全方位外交の成功


マレーシアの成功要因のひとつには、全方位外交政策があります。

マレーシアの外交政策は、中立的な立場を維持することで、世界中の企業からの投資を引き付けています。特に西側の企業は中国からの撤退を進め、マレーシアへの移転を検討している一方で、中国企業もマレーシアへの進出を加速させています。マレーシアはこのようにして、両国の間で非常に有利な立場を確立しているのです(Invest Penang)。

地元紙マレーメールによると、ザフルル・テンク大臣は、「マレーシアが米中貿易摩擦の中で中立的な立場を維持し、両国との関係をバランスよく保つことで、多国籍企業からの信頼を勝ち取っている」と述べています。

特に電気・電子(E&E)部門で、この外交政策が大きな効果を発揮しており、米国と中国の双方から多くの投資が流れ込んでいます。

ただし、米国に関しては懸念もあります。

「ペナンに進出する新たなプレーヤーの中には中国企業も含まれており、米国がマレーシアで製造された製品を規制対象に加える可能性がある」とマレーシア半導体産業協会のウォン・シュウ・ハイ会長は警鐘を鳴らしています。

Malay Mail

さらに、アンワル・イブラヒム首相は最近ロシアのプーチン大統領と会談し、両国間の協力関係を強化する意向を示しています。

理由2 ペナン港と物流の強み


ペナンの経済成長を支えているもう一つの大きな要因は、強力な物流です。ペナンにおいては、ペナン港の強力な物流インフラです。

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