「どちらかが死ぬディベートクラブは最悪です」ーー新しい教育が重視する「オープンマインド」「国際的視野」とはどんなもの?
海外で教育を取材していると年中出てくる言葉が「オープンマインド」です。日本語には対応する言葉がなく、文科省は「心を開く人」と訳していますが、どういうものでしょうか? またまた、国際バカロレアフェアビュー・インターナショナル・スクール・クアラルンプールの校長を務めるヴィンセント・チアン博士に聞きました。
根強い「正解は一つ問題(one right answer problem)」
ーー「オープンマインド」とはどういう概念でしょうか。
オープンマインドとは、他の人の意見を受け入れ、他の人も正しいかもしれないと考えることです。
第一に、「正解が1つ問題(one right answer problem)」があります。
普通の試験では、正解しないと点数がゼロです。「半点」なんてものはありません。「二分法」と呼ばれる問題を知っていますか? すべてを正しいか間違っているかで考えることです。
こういう教育で育った子どもたちは、「世界には常に正しいことと間違っていることがある」と学びます。グレーの世界を学びません。
ところが、人生のほとんどのものは白か黒かではない。その中間のどこかです。
ですから、私たちが試験で子どもたちを評価するとき、「正解は何ですか?」とは言いません。数学の問題では、正答があるかもしれませんが、通常は「正解は何?」ではなく、「あなたはどう思いますか?」と尋ねます。
これは非常に重要なステップです。
IBでの子どもたちは、正答を出す訓練をされていないので、意見を言うのを怖がりません。
多くの公立学校や英国式( IGCSE) の子どもたちは成長すると、正解を探します。彼らは常に正しい答えを探していますから、何も言えなくなってしまいます。正しい答えなんてないのですから。
これは、オープンマインドとは言えません。
ですから、テストで「あなたの意見は何ですか」を評価する。それが最初のステップです。
ディベートクラブは最悪だ。話し合いのポイントは「正しいか正しくないか」ではない
ーー正しい答えがない、とまず教えるわけですね。
第二に、クラスでは、たくさんの議論をします。
先生は基本的に「さて、これが問題だ。あなたはどう思う? グループで考えを共有せよ」と言います。ここでのポイントは良い議論をすることで、「正解」を探すことではありません。
話し合うことのポイントは、「正しいか正しくないか」ではない。もしあなたが話し方を学びたければ、あなたは自動的に「聞く」ことになるのです。
ポイントは、すべての意見をただ聞いて、吸収することです。
これは、「私とあなたのどちらが正しいか」を議論する他のインターナショナル・スクールや公立学校とはまったく異なります。
1つの正解のために互いに戦う「ディベートクラブ」は最悪です。正解はありません。私が正しいか、あなたが間違っているか、あなたが正しくて私が間違っているかのどちらかです。これはひどい勝ち負けのメンタリティにつながります。
「国際的な視野(International Mindedness)」を教える
――オープンマインドということですか?
第三のポイント。私たちのクラスには「International Mindedness(国際的な視野)」という概念があり、子どもたちに何度も何度も何度も教えています!
つまり、「あなたも正しいかもしれませんが、彼も正しいかもしれません」です。これがオープンマインドの基本です。私たちは5歳から18歳までのすべての子どもたちに教えています。
これは非常に難しく、実は多くの大人でも理解できません。
「いったいなぜ、私たちの両方が正しいなんてことがあるでしょう? どちらかが間違っているに違いない……」
教師は全員、毎週、クラスで「International Mindedness」について話さなくてはありません。あなたが何を教えているかーー数学、芸術、科学、英語ーーなんでもいいのです。ただし、必ず「International Mindedness」を教えてもらいます。
例えば、あなたは化学の教師で、喫煙について学んでいるとします。古典的な問題です。
「さて、『喫煙は悪いことです』という考えについて話しましょう。インドネシアには、収入のすべてがタバコ工場に依存している村があります... 。彼らはお金がなく、タバコがなくなると餓死するでしょう。一方で、人口の 90% が喫煙し、肺がんの発生率が非常に高い別の都市は、すべての子どもにとって大きな問題です。はい議論してください!! 」
私たちが教えたいのは、ここに正解はないことです。「あなたの考えを教えてください」です。そこには、シンプルに私たちの意見があるだけ!
ここが、子どもたちが理解する非常に強力な瞬間です。
どんなものだと思いますか?
「彼は正しくない」
「私は正しくない」
「私たちはみんな正しくない」
「でもみんな正しい」
彼らは他者の意見を受け入れ、自分の権利を選択し、それを他人に押し付けません。これがオープンマインドの大きな部分です。
ステップ 1 の「正解がない」が根本にあることがわかると思います。
そして、私たちは、白黒思考ではなく、オープンマインドを奨励します。
すべてのクラスに置いて、オープンマインドを促進する瞬間を組み込んだレッスンをデザインするのです。子どもたちをどうしたら、オープンマインドに保つことができるか、私たちは正確に言えます。
つまり、これ(子どもたちがオープンマインドであること)は、偶然ではないんです。
しかし多くの親にとっては、突然子どもたちが言い返してくるので、とても怖いでしょうね。ハッハッハ。
親の教育が最も困難である
——ご両親への教育は?
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