4「冷たい花火」(GIF小説集『雨具と日傘』)
GIF小説
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火曜日 21時
あの花火を見た時、ある情景が浮かんだ。ぼくが生前だったときの記憶であり、雨が怖い理由だ。
ぼくが暮らしていた町は、知らない人たちにぼろぼろにされた。
大人は文字が読めて当たり前だから、ぼくは子どものまま死んで、そのまま幽霊になったのかもしれない。
色鮮やかに頭に浮かぶ記憶はチューリップ畑と風車が映る草原で、ぼくははしゃいでいた。だけどその日の天気は雨で、ぼくはレインコートを着て外に出た。
灰色の空を見ていると、不気味にも数の多い飛行機が東の空からやってきて、大量の爆弾を落としていった。
その爆弾が、雨みたいに見えたのかもしれない。だからぼくは雨がこんなに怖いのかもしれない。
だけど、花火は怖くなかった。肌に当たっても冷たくて気持ちがよかった。
火の玉をあられのように冷たく変えるのだから、あの女は神様の力を使えるのかもしれない。
最近、晴れが続いてるけど、今度雨が降ったら指の先っちょで触ってみようかな。
なんて考えられうようになった。