君はタローマンを見たか!?
ばくはつだ! ばくはつだ! ばくはつだ! げいじゅつだ!
君は70年代に放送されていた、カルト的人気を持ち、いま令和の世に再び舞い戻った伝説の巨人(正義の味方ではない)、タローマンを知っているか!でたらめでべらぼうな姿をしている彼は、その姿からも見れるようにあの岡本太郎の作品、そして哲学を持っており、同じく岡本太郎作品からでてきた奇獣(作中ではもっぱら怪獣呼び)達と闘うぞ!あのサカナクション山口一郎氏も再放送だが幼少時から見ており、今なおファンであることを公言、今回の放送時に当時の思い出と岡本太郎作品についての持論を語ってくれているぞ。
という体で作られている、令和の今現在に作られた新作特撮作品ですw
でも、円谷プロが取材協力していたり、タローマンの中の人もパントマイムをされている岡村渉さんという方で、170万再生されてるマイムの動画もあったりしました。なるほどタローマンが無口であり表情も変わらないのに、一つ一つの動きから表情や言葉が見えるような気持ちになったのは、マイムの力もあったのかと納得しました。逆に今見ると岡村さんの動きも、タローマンのでたらめで奇妙な動きを思い出して面白いです。
タローマン、平たく言えば岡本太郎でウルトラマンのパロディをするという、適当にやればガチの岡本太郎ファンや特撮ファンから怒られかねないものなのですが、制作陣が真剣に命をぶつけてくれたからか、多くの人になんだこれは!と思わせる事ができました。自分みたいな悪いオタクだけが内輪だけで喜んでるだけではなく、昔から特撮が好きな人、岡本太郎作品を昔から好いていた人、夏休みだからかお子さんないしそのご家族でハマったなんて人も(少なくともツイッターで検索してみた限りは)多くいました。制作業界の方にも好意的に受け止めている人もいて、メタルギアシリーズで有名な小島秀夫監督がタローマンの写真を上げて、何も知らない海外ファンが「What The F××k(なんだこれは)」ってリプしてたり、「これは太陽の神、ラーですね(^o^)」とかコメントしてて笑いました。でも、それでいいのかもしれない、美ってものは見方次第なんだよ、ありのままの自分で受け入れればいい、そう岡本太郎も言っていた。(言ってないかもしれない)
今現在タローマンはNHK+はもちろん、You Tubeやニコニコ動画で全編無料開放されているし、1話5分程度で終わるので全10話もそこまで時間をかけずに見ることができます(タローマンのべらぼうな活躍を連続で見て咀嚼できるかは別かなと思いますがw)。岡本太郎作品入門としては、裏口入学というか闇ルートな感じもする作品ですが、自分も太陽の塔を作った人くらいの認識だった太郎氏に興味を持つことができましたし、放送後の今も太郎氏の記事を読んだり、公演されている動画を聞いたりしているので、そういう意味では作品に興味を持たせてもらってありがとうございますという気持ちです。太郎氏の本も今度読んでみようと思います。
タローマン、それぞれの話がどれも楽しいです。その中でも特に一つ上げるなら「好かれるやつほど駄目になる」の回が好きですね。ある程度タローマンという存在が世間に認知されてきたのか、奇獣から人類を守ってくれるヒーローとして認識されていくタローマン。しかし彼はパターンや型にはまるということを嫌がる巨人である。気力がわかないのか、敵の赤い手青い手に蹂躙され、自分の形すら歪なものに変えられていきます。そんなヒーローとは到底思えない姿や活躍に、手のひらを返して「嫌な感じだなあ」とか「あんなのヒーローじゃないやい!」と横断幕や人形をゴミ箱に入れていく住民たち。でも、それでいいのかもしれない。タローマンは別に正義のヒーローとして褒め称えられたいわけではないのだから。下手に同じことの繰り返し、積み重ねるだけの人生では知らず知らずに身動きが取られない、窮屈な人生になっていく。時には自ら積み減らしをして、自由な発想にならないといけない。そう、岡本太郎も言っていた(これは言ってる)。いつもはタローマンに自分のビルを壊されて嘆いている社長も、わしも不自由さを知らず知らずに集めていたのだなと、逃げ出す際に集めた札束のトランクを捨てて、自由な姿になって(奇獣と合体して!?)、夕日に向かって飛び立っていくタローマンにわしも連れて行ってくれと追いかける社長に、自分もどこかシンパシーを感じてしまった。自分もこのまま変化のない人生でいいのか、安心という檻を破り捨てて未来に、マイナスに飛び込まないといけないのかもしれない。年齢的にそういう事を考える病気みたいらしいというのも聞いたことあるけど、只々生きているだけの人生でいいのか、仕事でも趣味でもいいからなにか本腰を入れて闘う姿勢が大事なんじゃないか。半分眠気を抱えながら放送を見ていた時、そんな事を考えさせられました。ありがとうタローマン、ありがとう岡本太郎。
そんな感じで追いかけていった社長達も、その後全然出てこなかったのに最終回でしれっと出てきてわしのビルがー!って怒っていたので結局戻ってきていたけども。でも、それも人間ということなんだろうな。皆が皆岡本太郎にはなれないのだから。でも一瞬でも、おなじパッションを持つことを持てたことが大事なんだろうな。そう思うことにしました。
タローマンは別にヒーローではないし、結果的には奇獣を撃退しているけども、それで味方や敵やとかを区別する二分割思考では判断できない。自分は自分として自分を謳歌しているのだ。他人の視線を気にしたり、損得勘定だったり、マジョリティマイノリティーで区別してはいけないのだ。苦手なことだって個性だったり、敢えて飛び込んで見ることで本当の自分や自由を見るけることができるのかもしれない。タローマンを通じて、岡本太郎からメッセージと言うか気合を入れられた気がします。長い物には巻かれろといいますし、世渡りとしては間違いではないのかもしれませんが、それで自分を曲げるくらいなら、時には闘うことも大事だと思いました。そして自分と違う考えを持っていたり、嫌だなーという気持ちになる人もいるけど、それもまたその人なんだなと受け入れることも大事かとも思いました。色んな人がいていろんな人生がある。人生は芸術だ、そう岡本太郎も言っていた(講演で言ってました)。
素っ頓狂な姿と展開に最初は文字通り「なんだこれは!?」な作品でしたが、毎日見るたびに気を抜いたら仕事中「なんだこれは!なんだこれは!」と劇中のBGMや「ばくはつだ!げいじゅつだ!」とOPを歌ってしまうくらいは中毒になりました。シュールさとアヴァンギャルドな行動に笑い、ときに役割や民衆からの期待と自分の思いの相違に悩める姿に切なくなったり、真面目に今年を代表する作品になりそうです。紅白でサカナクションと一緒にいきなり出てきて笑わせてくれないかな、でも同じことの繰り返しは嫌う彼だからもう出てこないかもしれない、でもそれもまた彼らしくていいと思う。
でたらめでべらぼうなタローマンが大好きです。
皆も見よう、TAROMAN!
今日と明日(2022,7/30.31)の深夜1時前後ではEテレで一挙放送もあります。こちらは山口一郎氏のコーナーもあるので貴重ですね。自分も見れてない回あるので頑張って見たいなと思います。
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