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劇場版若おかみは小学生!が素晴らしかった

先日、どこかの映画・アニメ好き達がSNSを通して「若おかみが傑作、今年イチ!」やら「終始涙が止まらなかった」とか「実質ダークナイト(!?)」とか話題がよく回ってくるようになってきた。若おかみってアニメが朝番組でやってるらしいのはつぶやいてる人が何人かいたから名前だけは知ってたけど放送もしてなかったし別段興味もなかったので配信とかも見てなかった。でも映画の方は最初から説明してくれる新作みたいなものとも書いてあったので「どうせまあまあ面白いくらいやろなあ。マッドハウスだから作画はいいかも」くらいに思っていた。時間あれば行くかなーくらいの。でも流れてきたつぶやきの中「これは生と死、喪に服す話、どうし別を乗り越えて生きていくかを書いた傑作だ」という内容が流れてきて「えっ?そんな話なの(このキャラデザで?児童文学でしょ?)」と、今思えば大変失礼なこと思ってた気がするが監督さんがアンダルシアの夏シリーズの人ということもあり(この前2作ネトフリでみて面白かった)これは早々に見とかなくちゃいけないと感じ、時間見つけてみてきました。(今年のアニメ映画が未来のミ○イとかフリ○リオル○ナと、個人的に残念なものにあたっていたのでなにかいいものに会えないかとどこかで思っていたのかもしれない。)

で、見たのですが…素晴らしいものを見れた。特に終盤は泣きっぱなしだった。泣きそうになることはそれなりにあるがポタポタと涙を流してしまったのはいつぶりだろうか(細田版時かけみた時以来かなあ…細田監督…)。何が良かったは正直ツイッターないし各ブログで見てもらったほうがしっかり書いてあると思いますが、自分の心の整理のために書く。

作画・美術が本当すごい
マッドハウス自体が背景や美術といったものに評価が高いはありますし、監督の高坂氏(アンダルシアの夏監督。千と千尋等ジブリ作画監督多数)を始め、作画監督廣田氏(コクリコ坂・君の名はの作画監督)、美術監督の渡辺氏(ポニョ・おおかみこども背景担当)等、日本アニメ界のエース達が集った作品だったのです。なのでと言っても絵がないとよくわからないと思うので、公式が上げてくれてる予告PV見てください。
卵焼きに包丁を入れるときに刃の方に卵の切り口が写ってたり、洗面台あら時に蛇口に人物が写り込んでいたり神社周りや鯉のぼりと重なる森や海の映像、改めて見直しましたが本当良くできてます(そして内容知ってるからいちいちセリフが突き刺さってなきそうになるおっさん)。こういった美術にこれでもかといった書き込みをすることで、デフォルメされた幽霊や鬼とかもいるキャラクター達でもまるで違和感なく存在しているんだと観客に感じさせます。力が入った背景美術はそれだけで物語に現実味を高めていく効果があると思います。(そういう意味ではけものフレンズも美術が優秀だったから3D描写のサーバルやかばんちゃん達も生き生きと見えたものと思います。)

この作品に悪者はいない しかし試練は訪れる
主人公おっこ(関 織子)が両親とお祭りの神楽を見る場面から物語は始まります。お母さんもまた踊りたいわあなんて言いながら、微笑ましいごくありふれた家族のあり方です。しかしあることが起こりおっこは両親と離れ祖母が営んでいる旅館「花の湯」に引き取られ、いろいろあって若おかみを目指すようになります。そのあることの描写は人によっては子供向けでそこまで直接書かないほうがいいのではないかと思ったりもするでしょうが、監督も語ってましたがこの映画を作る上で非常に大事な場面になります。だからきちんと書いておきたかったと述べておりました。そのショッキングなシーンのあとに出てくるガランとしたおっこのマンション、一人電車にのるおっこの表情が強張ったような、何かに耐えているような我慢しているような顔、そして向かい側に家族旅行にでも来ている3人家族を見ると微笑みを浮かべるおっこ。胸が痛いです。
しかしそのあとは旅館にいる女将おばあちゃんや仲居さん板前さんに迎えられ、そして変な幽霊の男の子とも出会います。地縛霊かなにかかこの小僧は?と最初出てきたときは思いましたが5分後くらいには君は何者なのかとかそういうことがあったのねと説明がしっかり丁寧に入るので君はいいやつなんだなとすぐ安心できました。ここらへん変に含まないのはお子様向けってのもあるのかもしれません。その後も不貞腐れてる顔色悪そうなショタ(CVみかこし)とか若おかみじゃなくてバカ女将ねと突っ掛かるタカビーなピンクのフリフリ衣装ばっか着る通称ピンフリこと真月のお嬢ちゃんとか、おっこの顔に落書きとかしちゃうロリユーレイとか、鬼だけどCVジバニャンな食いしん坊とかいろんなメンツが出てきます。でもすぐ説明や描写が入るので悩み抱えてるんだなあとか根はいいやつなんだねとすぐわかります。中でも途中で現れるグローリーおば…お姉さんは温泉でシャンパン飲んだりポルシェを乗り回したりと自由気ままで最初は何考えてるかわからないとっつきにくそうなお姉さんが出てくるのですが、彼女との出会いがおっこの物語のターニング・ポイントの一つでもあると感じました。おっことのドライブ中に訪れるフラッシュバック、その後にファッションショーと展開のテンションの落差が大きいのですが嫌味もなくごく自然に描写が変わっていきます。立ち直ったグローリーお姉さん強い。おっこよく立ち直してくれた、偉い。そして最後に黄瀬家族が現れるのですが…ここまで書くとネタバレになるのでやめときます。お父さん役が山ちゃんなので飯食う様が本当に美味しそうに食べるのと、山ちゃんだったせいで境遇とかがラスアスのジョエルを思い出してしまって(勝手に)より感情移入してしまいました。(ラスアス2まだかなあ)

人は大切な人を失った時どう乗り越えていくべきか
おっこを始め、旅館に訪れてくるお客さん達もみんな何かしら別れを経験して、それを癒やすためにやってきます。おっこが最初に旅館花の湯に訪れた頃おばあちゃんに「花の湯は誰も拒まない。すべてを受け入れて癒やしてくれるんだ。」と教わります。そしてその言葉は最後おっこの口から語られるのですが、最初聞いたニュアンスとはまた違った意味合いをもたせる言葉になります。ラストまでに何人ものお客さまをおもてなししてきたおっこの口から出て、ある試練に対して大人でもそんな答えはだせない答えを出します。(おっこ、いや関織子さんは女神様か?)ココらへん監督や脚本の吉田玲子氏のメッセージが伝わってきて(冒頭の神楽とともにオリジナル展開らしい。の割に原作読んでたって人や作者からも好評)熱いシーンです。吉田玲子氏だと聲の形の編集の仕方も愛と理解ある脚本にしてもらったので原作ファンのおっさんもすごく楽しめました。昨今の漫画・アニメはタイムスリップだとか異世界転生だとか何もかもリセットする流れが多いですが(そういう流行りは流行りでいいし名作も多々あります)、現実はなにか起こったら治るものもあればどうしようもないもの、一生取り戻せないこともたくさんあります。ラストもどうしようもなかったとはいえおっこも山ちゃんお父さんにも決して埋めることのできない関係性ができてしまっています、それに直面して一度は泣き崩れるおっこですが今までの経験や友達・家族の力を借りて立ち直り、ほんとうの意味でのおもてなしの心で自分も山ちゃんお父さんも救った、救えたんだと思います。ここらへんおっさんめっちゃ泣いてました。泣くよこんなもん。

他、音楽担当もmotherの鈴木慶一氏だったりおっこが「私が若おかみ!?」とびっくりするポージングや、眼鏡の描写が屈折とか細かすぎるとか、真月ちゃんの素直じゃないところが可愛いとかグローリーお姉さんの入浴シーンだとかまだまだ書きたいところはあるのですがキリがないのでこのへんで。ただ一つ感じたのは大切な人を失ったときに死者は見守る事はできても、本当に元気づけてくれるのは生身の人間とのふれあいなんだなとは強く感じました。見終わったあと(いい意味で)説法を聞いていたような気分にもなりました。

若おかみは小学生!、とてもいい映画です。個人的にはDEVILMANCry Babyが今年1アニメだと思ってたのですが若おかみが抜き去ってしまいました。なんだかんだでやっぱ悲劇より幸せな物語の方が力もらえるんだなって。
初週の人の入りが悪かったらしく、映画館によっては朝だけの上映だったり日に1回だけの上映になっているとろこも多いみたいです。SNSの盛り上がりを受けて客入りがのび、上映回数増やす映画館も出てきたみたいですがいつ打ち切られるかわかりません。少しでも興味ある方はどうにかして時間捻出してもらって見に行ったほうがいいです。損はしないと思います。是非劇場でおっこ達の活躍をお楽しみください。

(余談ですがおっこパパの容姿が風立ちぬの主人公よりだったり、ママンの方はヤマトの森雪に似ている気がするのは関わったスタッフがいたりおばあちゃんの人が中の人だったりするのかなw)

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